今まで見たどのホームランよりも【8/28 対ベイスターズ戦●】
がっしりとした体格。
強烈な打球音。
鋭い弾道。
何度も、2軍戦の試合で見てきた。
打球がスタンドに届いたときの歓声の大きさだけが違っていた。
これまでと比べ物にならなかった。
井上広大が、再び1軍に戻ってきた。
味方の状態の兼ね合いもあるのだろうけど、いきなり中軸を任された。前の日は代打でセットアッパーのJ.B.ウェンデルケンと対戦。そしてこの日は安定感抜群の東克樹との対戦。せっかく上がってきたけれど、対峙しなければいけないピッチャーが手強い。1軍は今ペナントレースの佳境を迎えている。厳しい戦いの最中だ。井上が結果を残せる場を整える余裕はない。
6回の表。勝負は1球で決した。
東がストライクを取りにいったであろう初球を、ミスショットせずに完璧に捉えた。激しい打球音の後に、ものすごい歓声が響いた。テレビ越しに聞こえたタイガースファンの歓声が、今も耳に焼き付いている。
井上を見始めてからもっと2軍戦に注目するようになった。
まだ1軍で目立った結果は残せていなくても、これからが楽しみな選手がたくさんいる。それはあくまで表面的な見方で、実際は上手くいっていない選手も数多くいる。1軍と同じで、2軍の選手にも好不調がある。ただ2軍の選手はまだ不調から脱するための引き出しがそこまで多くない。だからみんな苦労してなんとか良い状態をキープしようと試行錯誤している。
井上もその例に漏れず模索していた。
なかなか1軍に上がれない井上を見ていて、もどかしい気持ちを抱いていたことは否定しない。けれども、なんとかしようとしている姿を見られたのは貴重だった。最近のタイガースの野手は2軍で鍛錬を積んだ経験のある選手が少ないから、なおさら新鮮に感じた。
思えば、井上のことを何度もnoteに書いた。いい活躍を見せてくれた選手を取り上げることをモットーにしていたけれど、井上だけは「もっと活躍できますように」という願いを勝手に込めていた気がする。当然すべての選手に活躍してほしい気持ちはある。けれども、2軍で鍛錬を積んできた井上が報われるプロ野球であってほしい。
彼を見るたびに、そんな気持ちが大きくなった。
履正社高から入団してプロ5年目。
ついに、ついに、1軍の舞台でホームランが出た。
おめでとう。今まで見たどのホームランよりもかっこよかった。