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第17回 これだけ!極限2(微分積分)

前回は極限とは何か、不定形の簡単なパターンの極限の求め方を学びました。

今回はより複雑な関数の極限を学んでいきましょう。

1.前回の宿題の答え

本題に入るその前に…前回の宿題の答え合わせです。

(1)

$$
\lim\limits_{x→\infty}\frac{3^x-2^x}{5^x-4^x}
=\lim\limits_{x→\infty}\frac{1^x-(\frac{2}{3})^x}{(\frac{5}{3})^x-(\frac{4}{3})^x}
$$

$$
\\=\lim\limits_{x→\infty}\frac{1-(\frac{2}{3})^x}{(\frac{5}{3})^x(1-(\frac{4}{5})^x)}
=\lim\limits_{x→\infty}\frac{1-0}{\infty(1-0)}=0
$$

(2)

$$
\lim\limits_{x→1}\frac{x^n-1}{x-1}   (nは任意の整数)
$$

$$
\\=\lim\limits_{x→1}\frac{(x-1)(x^{n-1}+x^{n-2}+\cdots+1)}{x-1}
$$

$$
\\=\lim\limits_{x→1}(x^{n-1}+x^{n-2}+\cdots+1)
$$

$$
\\=\lim\limits_{x→1}(1^{n-1}+1^{n-2}+\cdots+1)=n
$$

どうですか?解けましたか?


2.不定形の応用

(1)はさみうちの原理と三角関数の極限公式

$$
\lim\limits_{x→0}\frac{\sin x}{x}
$$

式を変形してみて攻略の道筋が見えない時は、少し視点を広げてみましょう。

3つの関数$${f(x), g(x), h(x)}$$があったとして、常に$${f(x)\le g(x)\le h(x)}$$が成り立つとき、次の極限になるとします。

$$
\lim\limits_{x→a}f(x)=b, \lim\limits_{x→a}g(x)=?, \lim\limits_{x→a}h(x)=b
$$

さて、"?"に入る文字は何でしょうか?

bですよね。

このような関数と極限の関係性をはさみうちの原理と呼ぶわけです。
では本題にもどって、

$$
\lim\limits_{x→0}\frac{\sin x}{x}
$$

です。ここで、$${\sin x}$$に注目します。はさみうちができるような関係を探してみます。

上の図をご覧ください。
緑色の弧は単位円(半径が1の円)です。
そして青い直線は原点Eから伸びる、x軸に対してx度の直線です。
この緑と青の交点Aからx軸に垂直に線を引き、x軸との交点をDとすると、線分ADの長さは$${\sin x}$$になりますよね。

一方、単位円とx軸の交点をCとすると、弧ACは$${x}$$になり、
DEを半径とするオレンジの円を引き、青い線との交点をBとおくと、弧BDの長さは$${x\cos x}$$ですね。

ここで、

$$
x\cos x\le \sin x\le x
$$

であることは明らかですよね。各辺を$${x}$$で割ると、

$$
\cos x\le \frac{\sin x}{x}\le 1
$$

が($${x\gt 0}$$で)成り立つわけですね。(ちなみに$${x\lt 0}$$でも同様の関係が成り立ちます。)
さあ準備はできました。極限をとりましょう。

$$
\lim\limits_{x→0}\cos x\le \lim\limits_{x→0}\frac{\sin x}{x}\le \lim\limits_{x→0}1
$$

よって

$$
1\le \lim\limits_{x→0}\frac{\sin x}{x}\le 1
$$

$$
\lim\limits_{x→0}\frac{\sin x}{x}=1
$$

とはさみうちの原理により求めるわけです。この関数の極限は何かと出てきますので、導出の仕方を含めしっかり学んでおきましょう。

(2)三角関数の極限

$$
\lim\limits_{x→0}\frac{1-\cos x}{x^2}
$$

三角関数の極限がでてきたら、先ほど出てきた三角関数の極限公式が使えるかもしれません。どうすれば$${\frac{\sin x}{x}}$$の形を作り出せるかを意識しながら変形していきます。

$$
\lim\limits_{x→0}\frac{1-\cos x}{x^2}
$$

$$
=\lim\limits_{x→0}\frac{(1-\cos x)(1+\cos x)}{x^2(1+\cos x)}
$$

$$
=\lim\limits_{x→0}\frac{1-\cos^2 x}{x^2(1+\cos x)}
$$

$$
=\lim\limits_{x→0}\frac{\sin^2 x}{x^2}\frac{1}{(1+\cos x)}
$$

$$
=1\times\frac{1}{2}=\frac{1}{2}
$$

と求まります。

(3)$${\infty\times0}$$型

$$
\lim\limits_{x→\infty}x\tan(\frac{1}{x})
$$

このように、$${\infty\times0}$$という形になり、変形を試しても攻略できそうにないとき、変数を置き換えてみましょう。こうします。

$$
t=\frac{1}{x}
$$

すると、

$$
\lim\limits_{x→\infty}x\tan(\frac{1}{x})
=\lim\limits_{t→0}\frac{1}{t}\tan t
$$

となり、なーんか見覚えのある形になりましたよね?
そうなれば後は簡単。

$$
\lim\limits_{x→\infty}x\tan(\frac{1}{x})
=\lim\limits_{t→0}\frac{1}{t}\tan t
$$

$$
=\lim\limits_{t→0}\frac{1}{t}\frac{\sin t}{\cos t}
=\lim\limits_{t→0}\frac{\sin t}{t}\frac{1}{\cos t}=1\times\frac{1}{1}=1
$$

と求まります。

(4)$${1^\infty}$$型

$$
\lim\limits_{x→\infty}(1-\frac{1}{x})^x
$$

率直に言って訳が分からない形ですよね。この問題を解くために、ある数を紹介する必要があります。

皆さん、この関数は$${x→\infty}$$で収束すると思いますか?

$$
f(x)=(1+\frac{1}{x})^x
$$

実は収束します。

$$
\lim\limits_{x→\pm\infty}(1+\frac{1}{x})^x=2.71828\cdots=e
$$

という固有の数に収束することが知られており、$${e}$$、ネイピア数と呼びます。この定義は覚えておきましょう。

では本題に戻って、

$$
\lim\limits_{x→\infty}(1-\frac{1}{x})^x
$$

かっこの中がマイナスになっているところが違いますね。でもネイピア数の定義に非常に式が似ています。何とかしてネイピア数の式に近づくように変形したいところです。

変数を以下のように置き換えます。

$$
t=-x
$$

すると、

$$
\lim\limits_{x→\infty}(1-\frac{1}{x})^x
=\lim\limits_{t→-\infty}(1+\frac{1}{t})^{-t}
$$

$$
=\lim\limits_{t→-\infty}((1+\frac{1}{t})^{t})^{-1}=e^{-1}
$$

と求まります。


まとめ

今回は極限の不定形の残りの型について解説しました。この2回の内容がマスターできたなら、この先の導関数の部分を難なく理解できると思います。前回の内容もしっかり復習しましょうね。

次回はいよいよ微分法に入ります。高校までで習う内容はさっくり解説し、大学の学部課程で習う範囲を重点的に学んでいきます。

参考文献はこちら。ぜひ手に取って勉強してみてください。


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