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小清水志織
2021年12月10日 22:03
*第5話はこちらから自動車のクラクションが鳴っている。入り組んだ狭い四ツ辻を多数の自動車が行き来しようとするせいだ。事故を起こしたくない私は、潔く自転車を降りて、するすると横断歩道を通り抜けていく。その間にも、後方のドライバーが忙しなくクラクションを連打して先を急ごうとしていた。もう、ここは国内有数の茶屋街なのだから、もっとゆとりある運転をしてほしい。平日にも関わらず混雑するのは多くの観光
2021年9月26日 10:43
どちらかと言えば私は上がり症だ。二十三歳の現在でも、人前で話すことには未だに抵抗があるし、初対面の人と接する合間には、どうすれば相手を傷つけないで済むかと考えて気疲れしてしまう。親友と呼べる相手となら、一歩二歩の距離を縮めて話せるのだが…。そして、何かにつけて心拍数の高まる性格の私が、最も神経を使ってしまうことの一つが、自作の原稿を誰かに読んでもらうときである。小学校の頃から、誰かに自分の文章
2021年8月26日 20:49
雨が好き。なぜなのかは知らない。十五歳のころから好きだった。雨の降る音で目が覚める朝は心地よいのだ。パラパラと散る小雨はかわいいし、ジャージャー地面を叩く本降りは力強くて勇ましい。そんな日は、母のつくった食パンとスープの朝食をせわしなくかきこんで、歯磨きさえ忘れてカバンをひとつかみ玄関を出るやいなや、スキップを交えながら登校したものだった。当然のことながら、校門へ着くころには髪の毛はびしゃびし