22、【10年以上続く事業】となるための事業計画作成法⑬~事業構想をもとに試作を構築し事業を実現するために重要なポイント(最終回)
「私の住んでいる地域を元気にしたい!」そんなあなたの想いをサポートしたい!Мの行政書士・上杉哲哉です。(福島県会津若松市と栃木県日光市に在住しています)
前回は、事業の具体的な姿を描く方法「UXブループリント」の作成法について考えました。
今回は、事業の青写真から、具体的な試作を構築する際に事業を具体化させるための注意点について考えます。
事業の具体化につながらない試作を構築してしまうと、何度も試作を作らなければならなくなり、事業開始前に予算オーバーとなってしまう可能性があります。試作構築のために注意すべき点を意識するだけで、試作構築の失敗は減少し、事業の成功率は格段に上昇します!
今回は、事業計画の中の事業構想の最終段階である試作における注意点を考えつつ、事業計画の作成のまとめをしていきます。
【具体的な収益構造の描き方や費用構造の描き方等は、ネットで検索すると良質な記事が多数でてくるので、試作前にネット検索で、収益構造、費用構造の描き方を学んでおくことをお勧めいたします】
(1)UXブループリントから試作を作成する手順の概要
①ペーパープロトを作成する
試作しようとしているものを、できる限り詳細に紙に描いたものをペーパープロトといいます。青写真はあくまでも、文章やデータが中心となっているので、具体的な姿になっていないことが多くなります。
そこで、まず青写真をもとに、より具体的な姿を紙上で描いてから、実際の試作品をつくります。
ペーパープロトを描いたら、事業に参加する多くの人に意見を聞いていきましょう。青写真よりも具体的な姿が描かれていくので、今まで気づかなかった問題点が明らかになり、最終的な調整が可能となります。
近年は、実際の使い勝手まで再現できたり、必要な内容をすべてレイアウトした姿を描くことができるアプリもあるので、デジタル機器を利用して、ペーパープロトをより具体化しておくことをお勧めします。
ペーパープロトで試作の姿をより具体的に描ければ描けるほど、実際の試作の完成度は上がり事業の成功率も高くなります。
②ツールプロトを作る
次にペーパープロトをもとに、実際の試作品を作成します。ペーパープロトをもとに作った試作のことをツールプロトといいます。
ツールプロトを作るときの注意点は、ツールプロトが完成したら、できる限り多くの人にそれを利用してもらい、フィードバックをもらうことです。
「試作品だから、そんなことは当たり前じゃないですか!」という方も多いと思います…しかし、実際は試作品を作ったにも関わらず、試作を利用してもらうこともなく、フィードバックももらわず、すぐに事業を始めてしまう方が多いというデータがあります(大企業であってもそれを行っていることも…)。
なぜ、試作品のフィードバックをもらわずに、すぐに事業を始めてしまうことが多いのでしょうか?
それは、ここまで手塩にかけて育ててきた構想を否定されることに無意識に恐れがでてくるからです。
もし否定されれば、「また試作を作り直さなければならない」、「見直すための手間がかかる」…そのような恐れの中で、試作を完成させたらすぐに事業に取り組んでしまう人が多いといわれています。
その事例として、Googleが手掛けている、Googleグラスというメガネ型のウェアラブルウェア(スマホの補完品)があげられます。メガネ型のスマホの補完商品として、Apple社のAppleウォッチと同時期に販売されたのですが…現在はその事業が縮小しています。
その理由は、Googleの技術者が技術力を否定されることを恐れてしまい、市場の声をほぼ聴かずにプロジェクトを進め、試作品ができても実証実験をほぼせずに製品化してしまったことにあるといわれています。
Googleグラスは、メガネ型であることにより、ファッション性の問題が発生しました。さらに、一般の眼鏡と見分けがつかないことにより、カメラ機能などを使った肖像権やプライバシー侵害問題が起こってしまい、多くの場所での使用制限がかかってしまったのです。結果として、売り上げは当初の予測を大幅に下回ってしまい、現在は事業を縮小せざるを得なくなりました。
(現在、事業は縮小していますが、可能性のある商品であることは、販売後のフィードバックから見えてきているので、市場の声を聴きながら、格段に使いやすくなったGoogleグラスの開発は進んでいます。より便利なツールとなることが期待されています。顧客の声がいかに重要か、Googleグラスの失敗やリカバリーからも学べます)
試作を作る段階においても、常に顧客の課題を意識する姿勢で取り組むことが大切です。
(2)プロトを作成する際の注意点
①複数作ってみる
ペーパープロトの段階で納得がいなかければ、せっかく製品化しても、納得できないものができてしまう可能性があります。ですから、納得いくまで複数作ってみることが大切です。
アイデアを狭めず、思いつく限り、ペーパープロトを作成することが大切なポイントです。
②スピード感と精度のバランスを意識する
ペーパープロトなので手軽に作れるとはいえ、今までの過程をより正確に盛り込む必要があります。
スピード感も重要ですが、それとともにしっかりと今までの過程を注意深くチェックしながら、作成を進めていく必要があります。
③事業の参加メンバー全員と共有しながら作る
これが最も重要なポイントです。育ってきた環境や生活環境など異なる背景を持つメンバー同士が積極的に意見を出し合う中で、今までリサーチ・考察してきたポイントを多角的に反映することが可能となるからです。
また、前提条件や言葉の意味の食い違いを是正することでチームワークを高め、事業の成功率をアップすることが可能となります。
特に、意見を出し合う中で、意見が分かれることがあれば、無理矢理に一つにせずに、ペーパープロトの第二案として形に残しておくことも大切です。
ペーパープロトとして形になったものを、それぞれ比較検討しながら、今までリサーチし考察してきたポイントを踏まえた、より顧客のニーズに寄り添う精度の高いソリューション(商品・サービス)の試作品を作ることが可能になります。
特に、パソコンのアプリでペーパープロトを作成する時には、この点を意識しておくことが大切です。アプリを利用すれば、簡単に作成できてしまうので多くの意見を踏まえることをせずに進めてしまいがちです。
事業のスタートアップにおいては、スピードも大切ですが、多くの人の意見を取り入れていかなければ事業の成功率は大幅にダウンしてしまいます。
よって、多くの人の意見を聞きながら、ペーパープロトを作成する意識をもつことが大切です。
④なぜ、この事業に取り組むのかを常に意識する
試作品を作る段階では、やることが多く、煩雑な作業も増えてきます。その中で最も基本となる「なぜ、この事業に取り組むのか?」を忘れてしまいがです。
せっかく、ここまで丁寧に事業構想を練ってきたのに、「なぜ、この事業に取り組むのか?」この視点を忘れてしまい、事業の実現だけに意識がいってしまうと、今までリサーチ・考察してきたポイントが抜け落ちてしまう…そんな事例も多いです。大切なポイントを欠いたものは、結果としてリサーチ結果からズレたものになり、事業の成功率はダウンしていきます。
これでは本末転倒です。ですから、常に「なぜ、この事業に取り組むのか?」を忙しい時ほど、常に思い出しておけるようにしておきましょう。特に、顧客の課題を解決するために事業を起こすので、常に事業に参加するメンバー全員が徹底的に顧客の視点に寄り添い、「なぜこの事業に取り組むのか?」を意識できるようにしておきましょう。
(3)事業実現のために最後に常に意識しておくこと
最後となりますが、事業実現に向けて、常に意識しておくことについて考えていきます。
今までしてきたことを思い出してみれば見えてきます。
①「なぜ、この事業に取り組むのか?」
②「誰の、何を解決する事業なのか?」
この2つの問いかけへの答えをいつも意識しておくことが大切です。
この2つを常に意識している事例として、電設資材メーカーの未来工業があげられます。岐阜県にある800人規模の中小企業です。残業ゼロ、一日の勤務時間も7時間15分、年間休日140日と…日本で一番休む会社として有名です。
しかし、松下電工(現パナソニック)などの大手の競合もひしめく中で、同規模の事業者の倍近い利益率を誇る脅威の会社と呼ばれています。
なぜ、これだけの驚異的な実績を上げ続けているのでしょうか?
未来工業のスイッチボックスや電線管は、法律で寸法も原料も決まっています。よって、製品の差別化がしにくいのです。宣伝・広告にかける資金が大きいことや価格競争に勝利することが、売り上げを上げる条件とも言われることが多いので、大手事業者が勝利しやすい環境にあります。
差別化が困難な状況にありながらも、未来工業はどうにか差別化しようと、顧客のために「常に考える」というモットーを掲げたのでした。
顧客のために「常に考える」という意識づけのために、社内のいたるところに「常に考える」というポスターが貼ってあります(10メートルごとに貼ってあるそうです)。
また、顧客のために「常に考える」ことを意識的に行えるように、何か提案するたびごとに500円もらえます。
事業のアイデアだけでなく、社内環境の整備、配置など、どんなに小さな提案であっても、提案するごとに500円もらえるそうです。
例えば「応接間が寒いから、床にカーペットを敷くのはどうだろうか?」と事業に直接関係ない提案でも500円もらえます。
そのような提案の積み重ねにより、顧客目線で「常に考える」姿勢が会社全体に浸透し、スイッチボックスのねじ穴を他社製品が2つであったところ、4つにして柱にとめやすくするなどのアイデアがヒット商品になったり。他社にまねされれば、付属のねじを通常より5ミリ長くする…など創意工夫を生み出しています。
また、常にお客さんにも「何か困ったことはありませんか?製品でもなんでもよいので、気が付いたらすぐに教えてください。すぐに改良します」と声かけをしています。
このように、顧客目線で「常に考える」という意識に立っているので、次々と顧客のための新たな改良が起こり続けているのです。
最初の事業構想の段階から、試作の作成、そして事業開始、さらに事業を進めていく段階においても常に…
①「なぜ、この事業に取り組むのか?」
②「誰の、何を解決する事業なのか」
この2点への回答を意識しておくように心がけておくことが重要です。
ーまとめー
今回は試作の作成の注意点と、事業を進めるにあたって常に意識しておくことについて考えてきました。
試作作成においては、特に今までリサーチ・考察してきたことを踏まえていく意識をもつことが重要です。
そして、事業構想から、事業実現にいたるまでに常に意識しておくこととして…
①「なぜ、この事業に取り組むのか?」
②「誰の、何を解決する事業なのか」
この2点の問いかけにいつも答えられるようにしておく必要があります。
常に顧客の声に寄り添う姿勢をもち、顧客の課題を解決する事業であり続けることが、長く事業を続ける秘訣です。今回までの学びを通じて、このことを皆さんが意識できるようになれれば幸いと思います!
皆さんの事業が長く続くものであることを願いつつ…このシリーズを完結いたします。最後までお読みくださりありがとうございました。
最後に
今回まで事業計画の作成に関して、特に、事業構想の仕方を中心に今回のマガジンを作成してきました。事業計画は、あなたが本来取り組みたい事業を実現するため、そして、実現するための資金調達、人材育成においてとても大切な計画です。
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Mの行政書士・上杉哲哉【私の住んでいる地域を元気にしたい!】そんなあなたの想いをサポートしたい!
改めて最後までお読みくださりありがとうございました。
行政書士上杉燈歩事務所
上杉哲哉
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