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私の思う至高の絵本条件

今絵本は熱いです。この世界にはたくさんの絵本で溢れていて、様々なきらめきやドキドキを僕に届けてくれています。
なぜ今熱いのかとといいますと、海外作家を中心とした大人向け(対象年齢が幼児向けの児童書では無い)絵本が流行っており、絵本の表現の可能性を押し広げているからです。今や絵本は教育目的で消費されるコンテンツではなく、小説や漫画、映像作品などに引けを取らないほど大人も熱中できる創作コンテンツに昇華していると言えます。このノートではその代表的な絵本を紹介すると共に、自分の好きな絵本を熱弁したい。ただの自己満文章です。これを機に絵本の魅力に気づいてくれる人が1人でも増えたらいいな。

一概に絵本と言っても、表現方法は様々で、その中から自分の好みの作品を本屋から探し出すことはとても骨の折れる作業です。絵本専門店などでは店員さんがおすすめのものを探してくれたり、教えてくれたりしますのでそのような場所を活用することもとても刺激的です。

本題ですが、先程述べたように絵本と言っても表現方法は様々です。色があるか、コマ割りがあるか、セリフがあるか。絵本ごとに技法は異なっており、作者の描く世界観にのめり込んでしまいます。
その中でも私が先ず紹介したいのは文字なし絵本です。当たり前の話ですが絵本の魅力の一つは絵と色があること。これは小説やほとんどの漫画には無い長所で、文字がないからこそ読者は細かい描写から物語やキャラクターの感情を読み取ろうとします。
なんでこんな所にこんなものがあるんだろう。とか考えることもとても面白いです。ポップな絵柄なのに陰鬱な色使いがされていたり、作品を読み返してみてこれはこういう意味だったんだ!って文字がないのにとても納得させられる作りを発見できると、読んでて気持ちがいいですし、まんまと作者の世界にのめり込んでしまいます。
ただ文字の説明に絵を当てているだけの絵本では、そのような好奇心は刺激されません。絵から何かを読み取ったり、想像の幅を持たせるものであることが、私の至高の絵本条件その1と言えます。
有名な中でとても素晴らしい文字なし絵本を紹介致します。


ショーンタンによって描かれる緻密で誰も見た事のない世界は、この作品の何よりの魅力。キャラクターの感情やセリフは映像をブツ切りにしたような表情のデッサンで全て読者に委ねられている。ストーリーは移民をテーマとしたもので、家族を残して新たな居住区に飛ばされる主人公の不安や、見たことの無い生物や道具に触れ合うことのワクワク、喜びなどとても鮮明に描かれており、本当に実在するのではないかと思うほど。文字がない絵本のはずなのに、私は読み終わるまでに1時間はかかりました。何回読み直してもショーンタンの世界には新しい発見があります。

私を絵本の沼に引きずり込んだ作品。思い入れのある作家でこの他の作品も全て読みましたが、お気に入りはこのアライバルとレッドツリー。どちらも文字なし絵本です。ここでは詳しく語りませんが、ショーンタンが絶賛している“旅する小舟”という文字なし絵本もとても素晴らしいものなので、一応紹介しておきます。

導入の数ページ、女の子は退屈していました。お母さんやお父さんは仕事で忙しく、兄弟も相手にしてくれません。女の子の目に映る世界はモノトーンで表され、ベットに座り込みます。しかし、女の子はそこで魔法のマーカーを見つけます。モノトーンの世界にただ1つ色味の着いたマーカーを手に取り、壁に扉を描くと、その扉はなんと壮大な幻想林に繋がっています。モノトーンから一気に多彩な景色に移るのはワクワクが止まりませんでしたし、女の子が退屈な世界を抜け出して大冒険に出かける描写は僕の心を踊り踊らせました。その後も女の子は魔法のマーカーでボートや気球を描いて、様々な世界を見て、人と出会います。映画デザイナーの経験があるアーロンベッカーの描写や画角は冒険をより魅力的に見せてくれますし、読み終わったあとに最初のページに戻ると発見がある仕掛けもとても優しくて大好き。ああ、すきだ、好きだよ。この作品は子供から大人まで対象年齢などない、世界に退屈している全員が想像の冒険に出かけられるお話です。

私がもし子供を持つとしたなら、この本は絶対に読ませたい。想像力を押し広げなさい、我が子。

文字なし絵本は他にも死ぬほど良い作品がありますが、今回はここまでにしておきます。文字という読者の理解に直結する要素をひとつ取り除くことで、足りないものを絵から読み取らせようとするこのジャンルは、読者の理解や想像に幅を持たせてくれます。

続いて文字あり作品を少しだけ紹介致します。これもまた紹介しきれないのですが、身を削ってこれだけは!という絵本を厳選しました。
好みの話になりますが、文字をそのまま情景描写して読者の想像をスキップしてしまうものより、比喩表現として絵を当てることで、想像に奥行きをもたらしてくれる作品が私の至高の絵本条件その2と言えます。

「天使にさよならと言われた日から、私の目は少しづつ見えなくなった。」という主人公のセリフから物語は始まります。盲目な主人公が地下鉄を歩き自分と向き合うお話。この作品は終始主人公のセリフのみで構成されており、盲目な主人公の想像上の地下鉄は、不安や喜びなどの感情によって姿形を変えて描写されます。大切なものが近くにあっても気づくことが出来ない、真っ暗な世界で生きる主人公の苦しみが、文章、絵の両面で強く知覚される。文字あり絵本の究極地とも言える作品です。
比較的有名どころを紹介しているつもりですが、この作品はその中でも知っている方が多いかもしれません。
完全なまん丸では無い主人公は、自分に足りない部品を探して旅をします。自分とは何か。この難解で迷いの中にあるテーマをシンプルかつキャッチーに描くシルヴァスタインのセンスが光っています。
この丸は旅の道中様々な部品に出会い、自分にはめ込んでみては、これは僕じゃないと新しい部品を求めます。ついにはなんの隙間もない完璧な部品を見つけることが出来るのですが、その受け取り方もエンディングもなんとも秀逸な仕上がりになっています。周りと自分を比べてしまって、自分の中の足りないものを探す時、この絵本が役に立つと思います。


長くなりすぎるので今回はここまでにしておきます。(本当におすすめしたい本まだまだあるから本当はもっと語りたいけどゴニョゴニョ)

あくまで私の中の至高の絵本というていでお話しましたが、今回紹介した作品はどれも高い評価を得ている有名作であるので、誰が手に取っても楽しめる、、と思います。
このノートを見てくださった誰かがどこかの書店で絵本を探してくれたなら、僕はとっても幸せです。ここまで読んでくださりありがとうございました。

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