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肩こりの治し方

 数年前に五十肩になった時、強烈な肩凝りに襲われた。それ以前は肩なんて凝ったことが無かった(正しくは凝っている認識が無かった)のに、寝ていても痛い激痛に思わず鍼灸院を訪れていた。
 それ以来、あれほどの激痛ではないものの、しばしば肩が凝るように(正しくは凝っていることに気付くように)なった。

 要するに知らぬが仏だった訳だが、一度知ってしまうと忘れられないなんて不思議だ。肩が凝っては首回りを揉んでみたりストレッチしてみたりするのだが、大した効果もないものだから、定期的に整体のようなところを訪ねてはマッサージと骨盤矯正なるものを受けてきた。

 しかし、私なりにいろいろ調べて学ぶうちに最近になって分かりかけた事がある。それは、筋の凝りは必ずしも筋の問題では無いということと、凝っている箇所と原因箇所は一致しているとは限らないということ。そして、肩凝りが起こる真の原因には様々なパターンがあって、突き止めるのは簡単ではないということだ。
 肩が凝るのは、肩の周囲の筋肉に負担が掛かっているからだとこれまでは思っていた。それはそれで間違いではないのだが、負担が掛かった事によってその周囲の神経が影響を受けて痛みに至るのだ。逆に、神経のせいで筋に負担が掛かる事もある。

 神経が影響していることは、考えてみれば当たり前のことだ。痛いと感じるのは神経の働きだし、筋肉を動かすのも神経の働きだ。そして、神経とは脳の一部であるから、肩凝りの原因の一端は精神的なストレスにあることになる。肩凝りに限らず、腰の凝りや腰痛もそうだ。身体のあちこちの不調は全て神経系の阻害が関連していると考えて良いだろう。
 もちろん、最初のキッカケはストレスでは無く怪我や悪い姿勢、あるいは病気の影響のこともある。そうした身体的な阻害が神経系に影響し、それが精神的ストレスにもなる。ストレスは身体に影響し身体の障害となって出る。この悪循環だ。

 生活習慣や食事、人間関係や家庭環境など、あらゆることが精神的・身体的なストレス要因となる。肩凝りや腰痛は、そうしたストレスのサインなのだ。
 現代の生活はストレスに満ちていると言わる。皮肉にも、ストレス解消のための行動が別のストレスを生み出したりもする。
 ストレス反応は元々生物に備わった仕組みなのでそれ自体は悪い事ばかりではないものの、ストレスが多過ぎれば対処しきれなくなって身体の不調として現れる。

 身体を過度に動かすのも身体的ストレスになるし、過度に動かさないのも身体的ストレスになる。身体的ストレスは精神的(神経的)ストレスを生む。ストレスは適度が難しい。
 ストレス要因が多い社会の場合、日常的な行動から極力ストレスを遠ざけるのが大切だ。私たちの日常生活のほぼ全てがストレス要因になりうるから、何から手を付けるか迷うが、手軽で効果的で、最初にやった方が良いのは呼吸の改善だろうか。

 生きている人ならば、普段は特段の意識をせずに呼吸しているだろう。しかし、身体的な活動量が落ちたり、姿勢が悪かったり、精神的なストレスが多いと呼吸が浅くなってしまう。呼吸が浅いと様々な理由で身体的なストレスを生む。呼吸に意識を向けることによって、それが改善される。ゆっくりと深い呼吸が効果的だ。
 その他に、月並みではあるが少し息が上がるくらいの運動をするのが良いだろう。ただし、既に身体のどこかに痛みがある場合は無理は禁物だ。少しずつで良い。

 こうした対策は良く耳にすることだが、継続的に取り組むのはなかなか難しい。私たちはストレスフルな生活に馴染みすぎて、身体を動かさず、呼吸を浅くしていることが心地良く感じてすらいる。運動をするのは疲れるから、とにかく寝ることでストレスを解消したくなる。しかしいつまでたっても目覚めは良くないし、何なら寝つきも悪い。ストレスが怖いのは、受け続けるとそれに慣れてしまうということだ。ストレスを受けながらも、感じなくなることだ。私の肩凝りの様に。

 最後に、どうしても何をするのも億劫だという現代人にオススメの肩凝り解消法を取り上げよう。それは、身体を後ろに反ることだ。座ったままで良いので、首を反らし胸を開き、背中を反る。可能であれば床にうつ伏せになり、手をついて上体を反らして上を向く。
 手順としては、軽く息を吐いてから、首の前側と胸を伸ばし背を反らしていって、そこで止めた状態で10秒くらい掛けてゆっくり息を吸う。そして、息を吐きながら元の姿勢に戻る。
 背中を反る時のイメージは、腰の高さの背骨を反るのではなく胸の高さの背骨を反る意識でやると良い。
 ストレスで縮んだ身体を反ることで、姿勢がリセットされ、筋がストレッチされて神経系が活性化し、スッキリするはずだ。
 是非試してみて欲しい。

おわり

 


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