② 「学習指導要領」に示された指導事項
マガジン「小学校の国語科の授業 理論編⑨」において、国語科においては「『何を教えるか』は明確に決まっている」と述べ、それが書かれているのが学習指導要領であると述べてきました。
学習指導要領では、国語科で育むべき学力を、学校教育法30条で示された学力の定義のように「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「主体的に学習の取り組む態度」の3観点で分析的に捉え、さらに「思考力、判断力、表現力等」については「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域に分けて示しています。
説明文は「読むこと」領域の指導となります。この「読むこと」領域における「思考力、判断力、表現力等」に示されている指導事項は以下のようになります(構造面の指導を通した「論理的思考」力の育成に係るもののみを示しました)。
<第1学年及び第2学年>
ア 時間的な順序や事柄の順序などを考えながら、内容の大体を捉えること。
<第3学年及び第4学年>
ア 段落相互の関係に着目しながら、考えとそれを支える理由や事例との関係などについて,叙述を基に捉えること。
<第5学年及び第6学年>
ア 事実と感想、意見などとの関係を叙述を基に押さえ、文章全体の構成を捉えて要旨を把握すること。
この指導事項をキーワードで示せば、大きく「事柄の順序」(第1学年及び第2学年)「段落相互の関係」(第3学年及び第4学年)「文章全体の構成」(第5学年及び第6学年)の3つとなります。
これらのキーワードを、マガジン『論理的思考・表現の在り方(構造編)』で述べた構造と関連付けていくことが大切です(これが関連付けられないと先のマガジンで述べてきたことは全く意味のないものとなってしまいます)。
小学校で学習する説明文は、つなぎの段階(b構造)であり、市毛氏の提唱する「はじめ・なか・まとめ・むすび」の4構成で表現されたものであると述べてきました(以下に示します)。
<はじめ>(論証する対象について述べる部分)
<な か> 根拠となる具体的な事実
↓
<まとめ> 判断・考察(データ) *ここまでがa構造
↓
( ↓ ←←←← 判断・考察(理由づけ))
↓ *省略されている
<むすび> 主 張 *ここまでがB構造
まず、第3学年及び第4学年の指導事項「段落相互の関係」とは「考えとそれを支える理由や事例との関係」のことですので、「まとめ」と「なか」の帰納的関係となります。「むすび」で意識的に意見が言えるようになるのは、ピアジェの言う形式的操作期(11歳くらい)と述べてきましたように、4年生までは「まとめ」(考えや感想を述べる段階)(a構造)までをしっかしと指導していくことになります(教科書では「はじめ・なか・おわり」という文言で示されていることが多いです)。
第5学年及び第6学年の指導事項「文章全体の構成」とは「事実と感想、意見などとの関係」のことです。この中の「事実と感想」の関係とは、第3学年及び第4学年で指導する「考えとそれを支える理由や事例との関係」(=「まとめ」と「なか」の帰納的関係)のこととなります。そして、それらと「意見」との関係とは、「なか」から導かれた「まとめ」と「むすび」の演繹的な関係となります。形式的操作期となった第5学年から、「むすび」で意識的に意見が言えるように、4構成(b構造)をしっかしと指導していくことになるのです。
では、第1学年及び第2学年の指導事項「事柄の順序」とは何でしょうか。この年齢は具体的操作期にあたります。よって、帰納的思考を意識させた指導は行いません。具体的な事柄を「どのように配列させれば効果的か」という「順序」について指導していくことになります。市毛氏の提唱する「はじめ・なか・まとめ・むすび」の4構成で言えば、「なか」に示す複数の具体的な事実をどのように配列させればよいのかを考えるということになります。
「順序」につきましては、マガジン『論理的思考・表現の在り方③(「順序」とは何か 編)』で具体的に述べましたのでご参照ください。