海外飲食企業における"組織の作り方(拡大期)"4つのステップ
カンボジアの日系飲食企業に就職し、2年と数ヶ月が経ちました。
自分の立場も、1店舗の店長から5店舗を運営する会社全体を観るCOOになり、店舗数も2店舗2業態から5店舗3業態になり、社員数は約30人から約90人にまで拡大しました。このような段階を先頭で経験させていただき、自分は本当に運がよかったと思います。感謝です。
そしてこの期間中、もちろん自分なりにたくさんの事にトライし、たくさんのことにつまずき、その度に軌道修正を繰り返してきました。自分でも非常に希有な経験をさせてもらったと思うので、その中で気づいた自分なりの仮説やうまくいった事例を何本かにわけて、少しずつ文章に残していきたいと思います。
-海外で事業をしていてスタッフとの向き合い方に悩んでいる方
-これから海外で就職 or 起業しようとされている方
-組織拡大期を先頭で走る経営層の方
このような方々にとって参考になれば幸いです。
さて、今回は拡大期の組織の作り方について書いていこうと思います。
(安定期と低迷期に関しては次回まとめようと思います。)
前提として、弊社はオーナー以外に日本人は私1人で、会社にいる他のスタッフたちはカンボジア人が9割、フィリピン人が1割で構成されています。第2言語同士でコミュニケーションを取る必要がある点や、大半のスタッフの受けてきた教育レベルが、日本で日本人と会社を運営されている方のそれとは少し違う可能性がありますので、その点はご了承くださいませ。
拡大期の組織の作り方4つのステップ
1.必要に応じてどの領域の仕事もどうにかする
飲食店を運営するには、たくさんの領域の業務をこなす必要があります。
真っ先に思いつくのは料理とサービスですが、それ以外にも採用活動やSNSマーケティング(投稿画像撮影や編集、投稿のターゲティング)、仕入れ管理や商品管理(原価管理やABC分析)、会計業務(PL,BSの作成やデイリーの支出の管理)などなど、あげるとたくさんあります。
1店舗のレストランを運営する場合は形だけ整えておけば問題ないこともありますが、ある程度の規模感(感覚的には3店舗を超えたあたり)になると、会社として業務を回すには、全てを体系的に網羅する必要性があります。
そして、日本で仕事をしているよりも、優秀な人間や会社の段階にあったスキルを持った人間の採用が難しい海外での仕事は、自分でなんでもどうにかすることが求められます。
それらの業務が発生するたびにこなして、自分の中で理解したタイミングで、重要度と緊急度で優先順位をつけ、2のステップに進んでいきます。
感覚的には100%理解してから型化するよりも70%ほどの理解度の状態で型化に向けて動いていくと、それをする段階で学びが生まれ、対処する速度とクオリティが上がることがあるので、70%ほど理解できたと思ったタイミングから型化をすると個人的には総合的にやりやすいです。
どんな領域の仕事も、1〜4のステップを回す事に慣れてくると、型化をする前提で新しい仕事と向き合うので、2のステップの速さとわかりやすさは上げていけると思います。このステップを最速で高いクオリティにまで持っていくことが重要なので、初めて対処する領域の仕事の場合は、まず、輪郭を捉えて自分なりに理解するために、初期段階に対象の領域の本を読んだり、noteを読むことをお勧めします。僕の場合は、まず我流でやるとうまくいかない事例が多いです。
初期段階で考えてどうにもならない場合は”探す”ステップに速やかに移ります。
2.業務を型化する
ここでの”型化”の定義は、自分がそれをしなくても、自分がやるのと同じクオリティーで、その担当者がその仕事を遂行することができる状態を指します。
自分が海鮮居酒屋の店長として就職した段階では、前任の日本人の職人さんが店長をされて、その後カンボジア人店長に引き継ぎをしていた後でした。レシピは紙で管理、原価は商品開発の時にだけ計算し、データとして残す文化はありませんでした。
そのため蓋を開けたら、仕入れ値が変わり原価率が80%超えていた商品、スタッフによって提供量ブレている商品、スタッフの好みによって仕上がりの味が違う商品などがありました。
レストランを企業はまず料理とサービスのクオリティが一番大切なので、まずそれを標準化しました。
説明書を作るときに個人的に気を付けていることは
-担当者が理解できる言語と表現で書く
-できるだけ理解しやすい状態で記す(言葉 or 図 or 写真 or 動画)
-とにかく細かく書く
カンボジア人のほとんどは英語ができると言っても、弊社で日常会話レベル以上の英語ができるスタッフは約15%ほどです。それ以外の85%のスタッフに確実に理解してもらうには、カンボジア語で書く必要があります。
PCで行う業務(spreadsheetやG-Form)を型化するときには、Google slide上にそのシートで使われている計算式や表の意味など、シート全体の構造を説明し、発生する業務の手順なども詳しく書きます。
Google formで何かを提出させる業務(例は小口現金使用後の報告フォーム)も、記入方法をとにかく詳しく書くことが重要です。
料理のレシピは写真と文字で手順をG-Documentにまとめて、それでも定量化しにくい表現に関しては動画で見せます。
サービスのマニュアルは顧客の来店から退店までに起こり得る仕事をシチュエーション順に書き記したものと、それを撮影した動画を作り、Youtubeのプライベートチャンネルにあげています。
その他の領域(人事や広報、会計など)の仕事も同様の方法で、標準化していきます。それぞれの仕事への会社としての”正解”を示すことで一人一人の社員が事象に対峙した際に考える量が減り、クオリティが標準化されやすくなります。
お互いが第二言語を使ってコミュニケーションをする場合、あの手この手を使って理解させたい対象が理解できる形にすることが重要です。とにかくいろんな業務が重要で緊急な拡大期には、つい細かく書くことを手間に思いがちですが、そこをグッと我慢して深く詳しく書くことで、ステップ4に進み、担当者に任せた後、上がってくるクオリティーが顕著に変わります。少しでも認識の違いがあれば、それが後に大事故になり、巻き返しに時間がかかることがあります。
担当者に仕事を渡す際に、週次や月次で発生する業務に関しては、Google Calenderでタスク名をイベントに書き、担当者をアサインし、自動でアラートがなるように設定し、関連資料をdescriptionに添付しておけば、忘れっぽいカンボジア人の人たちでもGoogle Calederさんが自動で教えてくれるので、人がリマインドする必要性が少し減るのでお勧めです。(こんな機能を作ってくださった本当にGoogleさんありがとうございます🙇♂️)
3.情報の一元化と整理をする
弊社はほぼすべてのデータをGoogle Driveの中に入れています。その整理方法に関しては、友人から勧められたnagabotさんのこの書籍を購入し参考にしています。カンボジアに住んでいてもこんな情報にリーチできる今の世の中に感謝です。
ちなみにこの書籍は管理につまづく全ての人にオススメで、下のnoteリンクから購入すればGoogle Documentのリンクを取得することができるので、そこから本文に進むことができます。
この方法でファイル整理をして、その領域ごとに共有する人間とその権限を決めれば、いっちょ上がりです。
4.根回しと権限委譲する(できれば評価も)
2が50%以上進んだところから、対象の仕事の担当者を決め(必要であれば採用し)て、4の準備に入ります。
リソースが少ない中拡大期を乗り切るには、任せた仕事に関しては2回目以降からは自走してもらいたいものです。ただ、第2言語同士でコミュニケーションする場合、何か伝える際には、お互いが相互理解できる表現を探しながら、相手の理解度を確認しながら進む必要があります。
一番大切なのがこのステップ。自分も新しい仕事がたんまりあって、疎かになりがちですが、1回目に引き継ぐときに丁寧にやることで、その後の理解度やアウトプットのクオリティが変わってきます。最初は必ず担当者に作成した資料を使って一度横で実際に自分が全ての工程をやりながら説明してあげてください。勘の良いスタッフなら、この後は自走してくれます。
そして、権限委譲したあと完全に自走できるようになったら評価に反映する(次回の昇給時に加点する)などすると、より担当者は引き受けやすくなります。※当然、会社の売り上げの水準や他のメンバーとの兼ね合いなどあるので一概には言えませんが。
この評価の文脈で言うと、半年後までに新しく1〜4のステップを完了させ、権限委譲する予定の業務とその委譲先(担当者)を事前に考えて決められると、人事評価のタイミングでまとめて絡められるので良いのかと思います。(ちなみに僕は1ヶ月先は想像できましたが、その先の解像度はあまり高くできていませんでした。それでも、常にちょっと先を見据えて今を走ることが必要だと捉えていました。)
このように、拡大期に管理側が1人で組織を大きくするには、とりあえず必要なことはなんでもどうにかして、この4つのステップを回していき、伸び代のあるスタッフにどんどん権限委譲していきます。
ただ、”つまずいたら、少し留まる”ことも本当に重要です。
基本は事前にどれだけ想像力を膨らませてもつまずくときはつまずくので、その後は一旦落ち着いて向き合う事が重要です。急がば回れ精神DAIJI!!
2回目以降は権限委譲して誰かに任せ、そのクオリティーチェックをすることで自分の時間を生み出し、会社を伸ばす。というスタンスで結局5回くらいは自分でやってから、やっと任せられる感じですが、その先では、自分にしかできないことに着手して、それをまた権限委譲し〜というのを繰り返していきます。
ここまでを読んでいただくとわかる通り、スタンスとして、拡大期にスタッフとの向き合い方はティーチングが約8割、コーチングが約2割になります。国籍と価値観が違うスタッフに対して、業務のHow to以外の価値観や考え方を短期間で教育をすることは相当難しいです。
担当者の能力を伸ばす意味で、まず最初に業務の型化をせずに先に担当者を決めて、一旦考えさせてみてやらせてみる方法もありますが、自分の場合はそれをして期待する成果が上がってきた事が本当に少なかったので、ここまでマイクロマネジメントをする必要があると判断しました。限られた時間の中で拡大させるにはこれが必要だったんです。
ですが、この調子で進み続けた後に拡大期が落ち着き、安定期、低迷期に入ったときに、組織内の色々なところで問題が起きてきました。
次回は安定期と低迷期にどのように組織と向き合うか。について気をつけていることを書いて見たいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊。
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