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犬神佐清という男。

私は、強く美しい女が好きだと書いたが
『犬神家の一族』でいつも思うのが佐清の存在。

あおい輝彦 (1976年)

私は1976年 市川崑監督の『犬神家の一族』が好きなので
ここでは、あおい輝彦ver.で考えていく。

母親の犬神松子。
私は、この松子夫人は憎めない。
愛情深い母親で‥そう、愛が深いが故に過ちをいくつも犯してきた。
すべては息子のため。

そして、この息子の佐清がまた優しい奴で‥
だから静馬の言いなりになるんだよ!と言いたいが静馬も気の毒ではある。
「偶然です!恐ろしい偶然が重なっただけなんです!」と
罪を認め涙を流す母に佐清は言う。
本当、お前‥犬神家の男と思えぬほどに優しいなぁ‥。

と書いたが、いつも思う。

犬神一族とは思えぬ優しいまともな好青年。


松子夫人にとっては自慢の息子だったろう。
妹の竹子、梅子の息子の
佐武と佐智がまぁ絵に描いたようなボンクラクズなので
むしろこの二人の方が犬神の血を強く感じる。

妾の菊乃の息子の静馬も
あの狡猾で悍ましいほどに凶悪なところは
母の復讐心もあるが犬神佐兵衛の血を濃く感じる。

もし静馬が犬神製薬を継いだら、
もっと大きくなったかもしれない。
血も涙もない経営者となるだろう。

佐清は‥優しすぎる。
優しすぎる‥!
だが犬神佐兵衛は、恐らく佐清の優しさと誠実さを見抜いた上で
珠代と結婚して欲しかったのかもしれない。

自分の禍々しい業からうまれたとは思えぬ優しい孫の、佐清と珠代。
病床から珠代と佐清が仲良く話している姿を見て
美しいと思ったのではないか。

だが、自分のせいだけど
娘たちがなぁ〜〜色々言いそうだしなぁ〜
静馬にも悪いことしたしな〜(一応長男だし。)

佐清は優しいが故に、
ビルマで自分の部隊が皆死んでしまったことを
罪悪感でいっぱいとなり
実家へ帰るに帰れない。
あそこで帰っていたら‥!!
帰っていたら、あそこまで骨肉の争いにはならなかったかもしれない。
多分普通に帰っても珠代と結婚するが
遺産は分け合い、自分の部隊の遺族にも分けるのではないか。
そして静馬の方が頭が切れるということで経営権も渡しそう。
しかし、これには松子母上も竹子梅子叔母は許さないだろう。
多分、結局静馬は殺されるか松子達が返り討ちにあう。

結局どうすることもできない。
やはり犬神家は平和には終わらないだろう。


犬神佐兵衛は恐ろしいほどに商才もあっただろうけど
色々と歪んでしまったのは
野々宮大弐さんが元凶なのだろうか。

いや、佐清の言うとおり
「偶然です!恐ろしい偶然が重なっただけなんです!」なのかな。

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