絵本は髄。
書店員になって初めて担当したのは、児童書だった。なんというか、こう、書店員って華々しい文芸書のイメージだったから、子供相手に何をどう売ればいいのかわからず、最初はかなり苦戦した。売り場のどこを見回してもひらがなひらがなひらがな。ひらがなでゲシュタルト崩壊していた。「あ」の佇まいと収まり具合は芸術だよね。笑。習うより慣れろとはよく言ったもので、だんだんわかってきたことがあった。
売る相手は子供だが、目線は親であること。
買うのは親だ。親は、我が子にどういう本を読んでもらいたいのか、そのためにどういう本を探しているのかを売り手は知らなければならないから、子供の成長の仕方や親との関係を子育て本で勉強した。本を読ませたい親の気持ちは、書店員がお客さんに、本を読んでもらいたい気持ちとほぼ同じで、それを踏まえてお子さんが興味を持つかどうかが最終試験
という具合だった。
絵本は極限まで簡素化された髄が書かれてあること。
もう一つは、絵本てなんぞや?ということ。小売業は自社商品のことを全て頭に叩き込んでいる。一体どんなものか、どうやって作られたか、経緯や背景、思いを把握して、それをプレゼンする。私はなぜ絵本があんなに薄いのに単行本1冊ほどの価格なのか分かっていなかった。絵本てのは1ページ1ページが絵画で芸術。そして、子供に分かるように極限まで簡素化された髄しか描かれていないもの。しかも、大半が絵で。それがわかってからは仕事が楽しくて仕方なかった。
写真は大人向け、所謂「大人絵本」というジャンルの絵本。筒井康隆原作の駝鳥、白川静のサイのものがたり
前者は大御所筒井康隆の初期ショートショートを、後者は漢文学者による体系的な漢字の世界を絵本化したもの
あきらかに大人向け。少ない言葉と絵であえて語らないことで余白を作り、読み手に自由な思考を促す絶妙なバランスが素晴らしい。
たかが絵本、されど絵本。
ちなみにこの2冊とも大人の友人にプレゼントしたものである。