全国学力学習状況調査に寄せて
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前の記事で、全国学力学習状況調査が教師と子供の学習へのモチベーションを下げているかについて述べた。
そんな中、今年も全国学力学習状況調査は行われ、今年は英語が行われた。そして、またモチベーションを下げる事になった。
全国学力学習状況調査の問題点をまとめると概ね以下のようになると考える。
年度始めの多忙な時期に実施
準備が手間
事前対策が日常化
自治体が順位に固執
多額の税金がかかる
分析した事が活かされない
さて、今回全国調査ではコンピュータ端末が利用された。
それはなぜか?
PISA調査で、OECD平均より日本はICT端末の利用が低かったからだ。GIGAスクール構想は、そこから始まっている。奇しくも、コロナ禍で一気にGIGAスクール構想は加速し、端末の配備は済んだ。(ただし、どこまで活用がすすんでいるかや修理やアカウント管理などの事務作業が誰が行うかなどは自治体任せである)
つまり、全国調査は、本来の目的とは違ってPISA調査対策としての側面をもつ。そして、それを都道府県別に正答率を公表する事で、競争原理を働かせ、学力を上げようとしている。つまり、文科省はPISA調査における日本の順位の向上または保持のために、全国調査を行っている。
そして、教師もこの事に気づき始めている。
そして、国ねらいとは裏腹に、次第にPISA調査における順位は下がってきている事も教師は知っている。優秀な教師は、そういった調査結果の分析などにもよく触れる。
かつては、技術大国として、世界をリードする立場であった日本が、科学技術では中国やアメリカの後塵を排し、そして今後インドにも抜かれるかもしれない。そんな危機感が国にはあるのだろうが、PISA調査が科学技術の発展と関連しているわけではない。ただ単に、政治家や一部の官僚がかつてのプライドに固執しているだけに過ぎない。
そんな事と子供たちは無関係である。
もっと言えば、消費社会、資本主義の行き着く所は、新興国の経済発展の頭打ちによる発展途上国の隆盛である。戦後の日本がそうであったように、それが中国に世代交代をしただけに過ぎない。
学力においても同じである。消費社会の行き着く所は、発展の頭打ちである。人はどこかで「これ以上」を求めるだけのモチベーションを失うのである。
不登校の増加、引きこもりの大人の増加は止まる事を知らない。どこかで「これ以上」を求め続けられ、それに疲れてしまったのであろう。
競争原理は短期的にはプラスに働くが長期的にはマイナスに働く事はよく知られている。少なくとも毎年の全国学力学習状況調査は不要であるし、毎年の順位の公表は不要である。それ以上に毎年やる事で、教師と子供のモチベーションを下げるマイナスの側面が強くなる。
「勉強しなさい」と言われて、やる気が満ち溢れた経験はあるだろうか?私自身も含めて、それはないと断言できる。
「勉強しなさい」は、モチベーションを下げる事はあっても上げる事はない。
全国学力学習状況調査によって、そのモチベーションを下げる機会が無駄に増えている。教育とは、もっと学習者主体である。
文科省もその事に気づき、学習指導要領を改訂し、その事を伝えようとしているのだろうと思われる。しかし、言っている事とやっている事が矛盾している。残念ながら、学習指導要領には、ある種の強制力が意図せず入ってしまう。その強制力が働く要因の一つに全国学力学習状況調査が寄与している。それは悉皆調査であるからだ。
以上のことを踏まえて、文科省は全国学力学習状況調査は在り方を見直す事に加えて、そのマイナス要因に目を向けないと、日本の教育は衰退の一途になる。