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「北欧、暮らしの道具店」の広告事業が辿ってきた5年間を振り返る

初めまして。「北欧、暮らしの道具店」を運営する(株)クラシコムで広告事業の責任者をしている高山と申します。弊社は7月が期末でして、ちょうど先日会社の14期が終わりました。事業を立ち上げてから5年が立つのでこの機会にこれまでのことを振り返ってみたいと思います。

広告事業について

クラシコムの広告事業では、「北欧、暮らしの道具店」の世界観やお客さまインサイトをクライアントのブランドと掛け合わせたブランデッドコンテンツの企画制作配信によって課題解決を行うことが主な事業内容になります。

現在、僕を含めて4人のプランナーが案件の最初から最後まで(セールス・プランニング・ディレクション)を担っており、これまで計103ブランドとお取り組みしてきました。「え、北欧、暮らしの道具店にそんなに広告出てるっけ?」とよく聞かれるのですが、月に6案件ほど出てます笑

メディアの広告ビジネスにおいては「希少性」が重要な要素だと思っており、事業立ち上げ当初から掲載枠数を抑えながらも、受注単価をあげていくことで事業を伸ばしてきました。(2020年7月期では1案件あたりの受注単価が518万円でした)

僕自身、前職はWEBサイト・コンテンツ制作会社のプランナーだったので、メディアの広告ビジネスの経験はほぼない状態でクラシコムにジョインしました。正直もっとうまいやり方や近道もあったと思いますが、自分たちなりに楽しみながら希望を感じながら事業を育ててきた5年間を、覚えている範囲で振り返りながら「クラシコムの広告事業ってこんなことしてるんだ」と少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。(絶賛採用中です)

事業1年目(2015年9月 - 2016年7月)

<当時の課題>
・9月に入社し「さぁやるぞ!」となっていたものの、とにかく案件を受注しないと自分の仕事がない
・事業担当の自分がメディアの広告ビジネスについて詳しくない
・3本セットのタイアップ記事というメニューだけは用意できていたが、売る相手がいない

<やったこと・わかったこと>
・ブランド担当の方や広告代理店の方にとにかく会って話を聞いてもらった、教えてもらった

買ってもらいたい相手であるブランド担当の方はどういったことに悩まれてたり課題を持ってたりするのかを知るために、少しでも繋がりがある方に連絡したり、ブランドマーケ担当者さんが集まるイベントに参加して繋がりをつくったりして、アポをとり、媒体説明とあわせてヒアリングをしつつ、担当の方のリアクションを見ながらどこにペインがあるのかを探していきました。

個人的には、このアクションで「ブランドに込められている想いやストーリーが伝えられていない。本質的にはそこにブランドとしての存在意義があるのに、、」というペインに気づけたことと、アポイントの数をこなして何度も媒体説明を行うことで、自分の言葉として話せるようになったことも大きかったと思います。

※事業立ち上げ期の2ヶ月ぐらいは、代表の青木にアポに同行してもらい、媒体説明のフォローアップ等をしてもらえたこともだいぶ助かりました。そして現在も、事業PRにつながること(取材対応・イベント登壇等)は最大限協力してもらっています。

・1ヶ月の掲載枠数を最大2枠までと決めて比較的高いプライシングで販売

当時のWEBメディア広告ビジネスでは、圧倒的な記事本数により広告在庫を担保してそれをどんどん売りさばくというモデルが主流でした。個人的にはWEBのなかでも「プレミアムな広告価値」をつくっていきかったし、「選ばれる理由」をつくれるならきっと高単価でも売れるはずという考えのもと、1ヶ月に2枠しか受け付けない設計にしました。希少性を保ち続けられることがプレミアムにも繋がると考えたからです。

そして、高単価でも選ばれる理由としては、前述の担当者ペインをもとにした価値設計を行いました。広告だから嫌われるのではなく、自社ブランドに込められた想いやストーリーを語ることが読者から喜ばれる広告。イメージとしては「カンブリア宮殿」のような設計の広告コンテンツなんですと説明していました。

・メディア露出によりプレゼンス向上や営業力強化につなげた

ゼロからのスタートでもあるので、広告事業のプレゼンスを高める必要があると考え、知り合いのライターさんや編集者さんに取材企画の持ち込みをして、Web記事やイベントでの露出を強めました。リリースされた記事はブランド担当の方たちにメールでお知らせして見てもらうことで営業のひと押しにも有効だったと思います。

・メニューの値上げを行うが、、

2015年11月に2案件を受注、その後も2案件ほど続けて受注できたことで、値上げを試みたことがあります。売る相手を変えずに一気に2倍以上の値上げを行ったことで案件受注がピタっと止まってしまいました。。これはマズい!ということで、金額は変えずに3記事セットを2記事セットのプランに変更し、1本あたり単価としては実質値上げしているが出稿金額は据置きという体裁をとりました。

誰がもつお財布(予算)から発注いただくかを当時はイメージできていなかったことが、無謀な値上げにつながったなと反省しています。

事業2年目(2016年8月 - 2017年7月)

<当時の課題>
・決裁者が「北欧、暮らしの道具店」を知らないという理由で受注を逃すことが何度かあり、決裁者認知を獲得していくことが必要
・受注まで至ってないブランド担当の方との関係値を温めていくコミュニケーションが必要

<やったこと・考えたこと>
・コーポレートメディア「クラシコム ジャーナル」の立ち上げ

決済者の媒体認知が課題であったなか、「北欧、暮らしの道具店」は世界観や文脈的にややハイコンテキストな媒体であるからこそ、名前を聞いたことある程度の認知では弱く、業界のトップランナーの方たちから共感を得られている状況を知ってもらうことが効果的と考えました。

そこで「クラシコムジャーナル」というB向けのオウンドメディアを立ち上げ、様々な著名人と弊社青木との対談記事をリリース。マーケ担当者さんから決裁者さんに記事を共有してもらうなどして、「いい媒体なんだ」という認知を獲得していきました。

・ブランドマーケ担当者向けイベント「クラシコムサロン」の立ち上げ

「北欧、暮らしの道具店」との取り組みに興味はあるものの、なかなか社内説得ができない、今の時期は予算がとれないといった担当者さんの悩みは当時から何度も聞いていました。そこで「クラシコムサロン」というクローズドイベントを不定期で開催し、トークセッション&懇親会を企画。決裁者をその場に呼んでいただく、カジュアルな場だからこそ本音で意見交換をする、今すぐの取り組みは難しくても関係値を温め続けることを目的にしたところ、とても有効に機能したので、今も不定期で開催を続けています。

・受注状況は順調。でも掲載枠数は市場の需要に対して少なめに。

この年はメンバーが2人ジョインし、制作リソースが拡充したことで1ヶ月の枠数を2枠から3枠に引き上げ、期の後半には4枠まで広げることで売上のトップラインを伸ばしていきました。とはいえ、ここでさらに枠数を広げずに「希少性」を担保したうえで、どの程度の枠数に設定するかは慎重に決めました。

それでも順調に受注が続き、「これはメディアの広告ビジネスにおいて新しい価値や選択肢がつくれているのではないか」という事業としての自信も出てきた時期でもありました。(こんなプレスリリースも、、)

事業3年目(2017年8月 - 2018年7月)

<当時の課題>
・既存顧客からのリピート受注が20%ほどだったので改善していく必要がある
・一方で新規リードとの出会いもつくりだす必要がある

<やったこと・わかったこと>
・BRAND NOTE PROGRAMをリリース

リピート受注率の改善において1つわかったのは、「北欧、暮らしの道具店」と取り組みができた、担当ブランドが紹介されたということに、担当者さんが満足してしまっていることでした。「カンブリア宮殿」のような広告コンテンツという設計だったことは前述の通りですが、同番組に1回取り上げられたら一定満足であり、2回3回と取り上げてもらいたいかといえば、そうではないかもなと。

そこで自分たちはマーケティングソリューションパートナーにならないといけないと思い、自分たちがご案内できるソリューションメニューを拡充させ、BRAND NOTE PROGRAMとしてリリース。

要因はこれだけではないのですが、期を通してリピート受注率を20%→40%まで改善することができました。

・クラシコムサロンを250名規模で開催 & 紹介営業

新規リード獲得のための施策として、これまでクローズド(招待制)で行ってきたクラシコムサロンをオープンに告知し、どなたでも応募できる大きめな規模で開催。取り組みを検討いただいている担当者さんもご招待して足を運んでもらえたこともあり、このイベントをきっかけに1000万円以上の大型受注につながりました。

一方で感じた課題としては、自分たちがビジネスのパートナーとして見ているマスブランドの担当者さんはインバウンド施策ではなかなか出会えないということです。そこで、クライアントになっていただいた方から同じ社内の別ブランドをご紹介いただくことで新規案件につなげるという紹介営業を強化。具体的なブランドを指名させていただき、なぜこのブランドとお取り組みしたいか、親和性はどこにあるか、などを伝えることで、快くご紹介いただくことができました。

事業4年目(2018年8月 - 2019年7月)

<当時の課題>
・なぜか受注できない時期が3ヶ月ほど続く
・受注単価を向上させていきたい

<やったこと・わかったこと>
・事業の調子が良いときだけでなく、悪いときを受け入れる

事業を行うなかで、何をやってもなかなかうまくいかない時期がありました。なにせ受注が決まらない苦笑。チームみんながその状況に焦り、アクションは続けるのですが、先方からは音沙汰がなかったり、タイミングが悪くアポもとれなかったり。負のサイクルに陥りそうな感覚もあり、不安な気持ちが大きかったです。

「そういうときは変に抗わないほうがいいよ」「目の前のお客さんにありがとうと言われる状況をもう1回作っていこう」と青木から1on1でフィードバックを受けたときは、少し安心できたせいか若干泣きそうになった記憶があります。

具体的にはかなりお得なキャンペーンを期間限定でうつことに。一時的でも値下げをすることは営業のセオリーではあまりよろしくないことだと思いますが、「これは買わないと損!」と改めてメンバーが胸を張って売れる状況・グルーヴ感をつくりたかったし、「こんなお得な案内をくれてありがとう」「やっと北欧さんとお取り組みできます、ありがとう」「良い成果が出てありがとう」というように顧客から「ありがとう」を言っていただける回数を増やしたかったので、実施に踏み切りました。

結果としては本当にやってよかったと思います。もちろんその金額だからお取り組みできたクライアントは、定価での継続したお取り組みが難しいという状況もありましたが、不思議とその後は受注がどんどん決まっていきました。

上記のトピックに限らずなのですが、「BtoBは合理的な意思決定・BtoCは非合理的な意思決定が行われる」ということが言われるなかで個人的にはそうとも言えないなと思うことが多々あります。BtoBも結局は人と人なので、商売人としてのクリエイティブさ・想像力・親切さが求められることが仕事における面白みだなと思います。

・ムーンショット菅原健一さん(すがけんさん)にアドバイザーになってもらう

事業の売上は、<案件数×受注単価>で基本的には決まってくるなかで、案件数は供給リソースを増やすことが社内事情もあり、いかに受注単価をあげるか。

そのためには提案の内容をアップデートしていく必要があるなぁと感じていたときに、すがけんさんに事業成長のアドバイザーに入っていただくことになりました。

チームが抱えている課題をテーマにして毎月すがけんさんとMTGを行い、新しい視点や考え方、それを具体的なアクションまで落とし込み「あとはやるだけ!」の状況まで毎回サポートをいただけたことは本当に大きかったです。

提案は課題認識のセットアップが重要、相手の視点に立った提案になっているかなど毎回気付きと変化を与えてくれることに感謝しています。おかげさまでこの期の受注単価は375万円→445万円までアップし、受注率も大きく改善されました。(引き続きお世話になります笑)

すがけんさんの考え方が綴られているnoteはこちら↓

・「広告する」だけではなく「モノをつくる」というソリューションも開始

「北欧、暮らしの道具店」はインテリア雑貨やアパレル、最近だとコスメなどをオリジナルブランドとして開発して販売する、今で言うD2Cブランドとしての顔も持っています。そこで得たノウハウをクライアントのプロダクトに落とし込んでいくという取り組み「BRAND COLLABO」をリリース。

自分たちがプロデュースしたアイテムが、スーパーやドラッグストアの店頭で手軽に買え、お客さんからも喜ばれる取り組みとしてソリューションメニューを拡充できました。

事業5年目(2019年8月 - 2020年7月)

<課題>
・「購買」までを一気通貫した取り組みニーズへの対応
・新型コロナの影響により需要予測が立てにくい

<やったこと・わかったこと>
・EC事業者の特性を活かした「販売する」プランをテスト

上記でご紹介したBRAND COLLABO、そして既存のBRAND NOTEやMOVIEにより、つくる・広告するという機能はソリューションとしてご用意できていたなかでの最後のピース「売る」プランをテスト的に開始しました。認知して興味関心をもってそのまま買える。それはブランド側だけでなくお客さまにとっても親切なことであるし、本来お客様が負担する送料をブランド側に負担いただくことで、トライアルも生まれやすくなります。お店・ブランド・お客さまが三方よしになる取り組みとして、今後も改善をしながらゆっくり磨いていきたいと思います。


・先行き不透明な状況だからこそ本当の意味での情報交換を行う

前期を思い出すうえで上期のことが覚えてないくらい新型コロナによるドタバタが印象深い期でした。(今期も引き続きですが…)

有事のなかで、自分たちがすべきことは何なのか。まずはお客さんである担当者さんの声や悩みを聞くということでした。

「北欧、暮らしの道具店」はEC事業者なので、自分たちの状況や考えを同じマーケターとしての立場でお客さんとディスカッションを行えたことで、チームメンバーも手応えを感じられ、やるべきアクションが見えました。

自分たちが持っている一次情報を伝え、お互いにインスパイアを受けあうような機会を担当者さんと多くつくることができ、ある意味スパーリングパートナーのような関係性になれたことは今後の事業成長のうえで大きい変化だったと思います。

・前年比122%でなんとか着地

新型コロナの影響も多少は受けつつも、前年比122%で着地、リピート受注は全体の60%、案件単価も518万円まで向上できたことは自分としてもチームとしても自信につながったように思います。(調整面ではなかなかハードでしたが)

受注の構成比率もこれまではBRAND NOTE(記事コンテンツ)が大きな割合を占めていたところ、それ以外の取り組みで41%の受注をとれていることも面白いし希望を感じる結果でした。

広告事業のこれから

・メディアパートナーからブランドパートナーに

「伝わってない」を「伝わった」に変化させるのがメディアパートナーとしての役割であるのですが、今後も引き続きその役割は果たしながらも、「ブランドとしてのあるべき姿」を一緒に描き、ブランドの現状とのギャップ(課題)に対してソリューションをご提供していくというスタンスを強めていきたいと思っています。それができるのは「北欧、暮らしの道具店」としてBtoCでブランド価値を磨いてきた実績やノウハウがあるからで、その強みをさらに活かせていければ。


・お客さんの可処分予算をどれくらいいただけるか
BtoC側でもお客さまの可処分時間をいかに1分でも多くいただきたいという気持ちで、サイト内だけでなくYouTubeやSpotify、Instagramなどでもオリジナルコンテンツをお届けしています。BtoBの広告事業も、担当者さんの可処分予算を少しでも多くいただけるように尽力し、クライアントの期待値を超えてその責任を全うすることで、事業としても人としても成長していきたいと思っています。1億円の売上でも、100ブランドから100万円よりも、10ブランドから1000万円いただくことでそれを成し遂げていきたいです。

5年間を振り返るということでいざ書き出してみると、長文になってしまいました。。そんなクラシコムの広告事業でありますが、ご発注いただける担当者さん、いつも好意的に楽しみながら広告コンテンツをご覧いただいているお客様、制作に妥協がない編集チームや外部のクリエイティブスタッフのみなさん、イベント登壇等にご協力いただける方々のおかげで着実に育っていっています。

今後の広告事業にどうぞご期待いただければ嬉しいです。

そしてクラシコムでのプランナー職に興味あるかもという方がいれば、ただいま採用期間中なので、ぜひ以下より概要をご確認ください!


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