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学習の転移を効果的に引き起こすには?

学習の転移とは?

学習の転移とは以前学習した内容が新しい内容を学習する際に適用され、深い理解や、効率を持って学習が行われることです。


どのようにして学習の転移は起こる?

学習の転移は新たな内容を学習する際、すでに構築してあるスキーマや体系を用いることによって、そのスキーマや体系から学習対象の本質的な情報を引き出すことができます。その情報を用いることで本来は一から学ばなければいけないことでも、学習コストを下げて新たな内容を学習することができるようになります。例えば、英語の文章において、文法知識を使うことによって無数に存在する文章でも同じルールを使うことによって決まった解釈で理解できるようになります。そのため、個々の文章の意味を暗記する必要がなくなります。


スキーマや体系とはどのようなものか?

スキーマや体系は思考のフレームワークとして働きます。ある対象を理解するときその情報の本質的な情報は含んでおり、その対象について大枠を理解することができます。スキーマは知識の枠組みの小さな単位で、体系はそのスキーマが相互に関連し統合された知識の枠組みです。外の情報を理解する際に、一見無秩序に見えるような対象であっても、スキーマや体系があるとその対象を秩序立てて見ることができるようになり、理解を整理するのに役立ちます。


スキーマと体系の構築について

スキーマの構築の方法は主に二つあります。一つめは二つの対象から共通となる枠組みを見つけ出しカテゴリを作る場合があります、例えば犬と猫を考えた場合に共通のカテゴリである動物というスキーマができる場合です。もう一つは、ある体系内における抽象ルールの相互関連によって統合された枠組みを作る場合です、英文法において一つの文法事項から統合されて一つの単元になる場合などです。どちらのスキーマも新たな情報を効率的に処理するための枠組みを提供し、学習の転移の際にコストを下げて新たな内容を学習することができます。体系の構築はスキーマを統合していくことで要素同士互いに関連し一つのまとまった体系を作ることで作られます。例えば、英文法において一つ一つの単元が有機的に結びつき統合された文法体系を作る場合がそれにあたります。この体系は全ての英語の文章を理解する際に理解する枠組みを提供し、理解できるようになります。


学習の転移を引き起こす手順は?

学習の転移は次のような過程があります。スキーマを構築する過程、スキーマを適用する過程、スキーマを改善する過程です。スキーマは適用と改善を繰り返し精緻化されていきます。ある体系内において、その体系内の原理や原則にどのようなものがあるのかを理解し、実際にその原理や原則を具体的な事例に適用してその原理や原則の理解をより深いものにします。体系内においては他にも原理や原則があり、具体的な適用を通じながらそれらの原理原則がどのように関連しているのかを理解します。スキーマは個々の原理や原則に該当し、体系は相互に関連しあった原理や原則が統合されたものになります。構築されたスキーマは対象に適用した際、一致した場合はそのまま理解され、ギャップがあると、その対象にも当てはめることができるようにスキーマを改善し適用できるようにします。英語の例をとってこの過程を説明します。まずスキーマの構築は文法の習得に該当し、実際のさまざまな文章を通して文法規則を身につけていきます。スキーマの適用では、身につけた文法規則をさまざまな文章に適用していきます。適切に適用できた場合は文章の内容が理解でき、適切に適用できなかった場合は身につけた文法知識の見直しスキーマを改善します。この改善と適用のサイクルを繰り返し文法を正確なものにしていきます。


体系やスキーマの階層性について

例えば動植物のスキーマ(カテゴリ)を考えてみると、そのカテゴリの抽象度合いによってカテゴリの階層を作ることができます。具体的にいうと生物というカテゴリの下には動物と植物という階層があります。また動物という階層の下には猫や犬などがあります。ここで重要なのは猫や犬などの階層は、それより上位にある生物という階層の性質を全て引き継いでいることです。なので犬や猫はこの上位のカテゴリの原則から外れた性質は持っていません。これは体系の階層性についても同じことが言えます。プログラミングの体系の階層性を考えると、一番上位にプログラミングの普遍性の体系があり、その下にプログラミングのパラダイム(オブジェクト指向や手続型など)の体系があり、オブジェクト指向の体系の下にJava言語やSwift言語があります。体系の場合もスキーマの場合と同じで上位の体系の性質が下位の体系に引き継がれることになります。


学習の転移には体系内転移と体系外転移がある

例えばAというプログラミング言語を学んでいてすでに知識を構築しており、そのプログラミング言語を使ってあるシステムを作れることは体系内転移の例です。また、別のBというプログラミング言語を新たに学び、そのプログラミング言語を用いて別のシステムをつくつることは体系外転移の例です。体系内転移はAというプログラミングで使われるルールや原則が相互に関連しあって一つのまとまった体系を作り、その体系を実際のシステムを作るためにコーディングする際に利用されます。その際、全く未知の情報を扱っているのではなく、そのコードの性質や振る舞いが理解できた上でコーディングすることが可能になります。また、Bというプログラミングを用いた開発の場合の学習の転移は、Aというプログラミングをする時に使った体系よりも、より包括的な体系を使って行われることになります。この包括的な体系は、Bというプログラミングを学ぶとき、その体系から該当する知識の性質を利用することができるようになり効率的に学ぶことができるようになります。例えば共通するプログラミングの概念であったり、共通する原理、原則などです。Bというプログラミング特有の詳しいルールはわかっていなくても、本質的なレベルではBというプログラミング言語は理解できるようになります。これが体系外転移です。


効果的に学習の転移を引き起こすには?

効果的に学習の転移を引き起こすには、現象の中に現れるパターンを解釈できるための体系を構築することが重要です。ある体系内において現れる現象には繰り返し決まったパターンが現れてきます。その抽象的なパターンに具体的な要素が伴ったものが現象として現れてきます。英語の例で言えば、存在の中心に文型などのパターンがあり、そこに具体的な単語が要素として並んだものが文という現象として現れてきます。体系において現れるパターンは他のパターンと有機的に結びついて意味を持ちます。どの分野の体系を構築するのであれこのパターンが統合された体系を意識して構築していくことが効果的な学習の転移を引き起こすことに役立ちます。


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