ゲームメカニクスの授業で紹介しているボードゲームと参考書籍
専門学校でゲームメカニクスに関する授業をしているのだけど、教え方はある程度講師にゆだねられているため、僕はボードゲームを使ってメカニクスから生まれる展開や感情の動きを実際に体感してもらう形式でやっている。
ボードゲームはゲームメカニクスとゲームの動的な展開について学ぶのに最適な題材だと思っている。なぜなら、ほぼ全てのメカニクスがルールによって構成されていて、ルールが全て公開されているからだ。
現代のビデオゲームは、様々なメカニクスが複雑に組み合わされている。そのうえメカニクスは極力プレイヤーの目に触れないように舞台裏に隠され、舞台上にはビジュアルやシナリオのような華やかな面白さがたくさん詰め込まれている。
プレイヤーフレンドリーなビデオゲームに慣れた人には、難解なルールを読み解く必要のあるボードゲームというやつは少し面倒に感じるかもしれない。しかしこれは基礎トレーニングのようなもので、ボードゲームというむき出しのメカニクスに触れることで、ビデオゲームの舞台裏に隠されたメカニクスの働きも感じとることができるようになる。
そこで、この記事では授業で紹介しているボードゲームたちについてまとめていきたい。ひとまず現時点で紹介したものと、紹介する予定のものについてまとめるが、今後も実際に授業で扱ったものについて随時追加している予定である。ついでにボードゲームとゲームメカニクスに関する参考書籍も紹介する。興味があればぜひチェックしていただきたい。
1.授業で紹介したボードゲーム
ニムト
多人数で遊べて、手軽に盛り上がる定番カードゲーム。小栗旬がラジオでこのゲームにハマっているという話しをしたことで話題になったりした。
後述のピットとあわせてターンオーダーやゲーム内の時間に関するメカニクスを学ぶための題材として紹介している。
同時ターン制(全てのプレイヤーが一斉に行動を決める)のゲームで、他のプレイヤーの出すカード次第で場が劇的に動くため、ヨミと予想外の展開を楽しむことができる。
ピット
立会取引(金融商品の競りのようなやつ)をモチーフにした、さながら本物の取引場のように参加者のコールが飛び交う活気に溢れたゲーム。
100年以上の歴史を持つゲームで、考案者のなかにポケモンの名前の由来にもなったエドガー・ケイシーが名を連ねている。
リアルタイムに手札のカードを交換していくゲームで、ボードゲームには珍しいスピード感やわちゃわちゃ感を楽しめる。
ぬくみ温泉繁盛記
温泉旅館の若だんな(若おかみ)となって、街一番の人気旅館を目指すゲーム。そのテーマからもわかるように日本人が作者の国産ボードゲーム。
シンプルで遊びやすいワーカープレイスメント(マップがアクションの選択肢になっていて、コマをマップに配置することでアクション選択を行う)のゲーム。ゲームにおける空間の役割を学ぶための題材として紹介している。
ワーカープレイスメントにしてはシンプルで短めのゲーム時間ながら、多彩な助っ人が集まったり様々な施設が増設されたりして、プレイヤーごとに異なる自分だけの繁盛記が楽しめる。
ワンナイト人狼
正体隠匿系ゲームの代名詞である「人狼ゲーム」の短縮バージョン。名前のとおりワンナイト(普通の人狼の1ターン)で終わる手軽さが魅力。
短時間で人狼の醍醐味である推理や情報の駆け引きをしっかりと楽しむことができる。ゲームにおける情報の扱いを学ぶ題材として紹介している。
とにかく短時間で終わるのが素晴らしい。1ターンで終わるので情報を記憶する必要があまりなく、純粋に嘘と推理のぶつかりあいを楽しめる。
ドミニオン
ボードゲーム業界に旋風を巻き起こし、多くのフォロワーを生んだデッキビルド(ゲーム中にデッキにカードを追加したり取り除いたりする)ゲームの元祖。
「Slay the Spire」のヒット以降、インディーゲームのジャンルとしても人気となったデッキビルドのメカニクスと、ゲームのビルド要素について学ぶ題材として紹介している。
デッキを強化していくことによって、徐々に理想の戦略が完成していく楽しさが味わえる。最終的にはポイントを集める必要があるため、デッキの強化からポイント集めに方針を切り替えるタイミングの駆け引きもある。
ドラスレ
仲間と協力してドラゴンを討伐する、TRPG風のボードゲーム。それぞれのキャラクターの能力を活かした連携プレイが醍醐味。
役割分担を中心とした本来の意味でのロールプレイングを学ぶ題材として紹介している。
それぞれ異なる能力を持ったキャラクターがメタルフィギュアとして同梱されている。これを使ったロールプレイとサイコロによるドラマを楽しむことができる。
2.参考書籍
ゲームメカニクス大全
ボードゲームのメカニクスをカテゴリごとに分類してまとめた本。
様々なメカニクスが長所・短所、採用しているゲームの例とあわせて紹介されている。
海外の翻訳書なので、メカニクスの呼称が日本のゲーマーの呼び方と微妙に違ったりするが、とても勉強になる本。実質、僕の授業の教科書。
ゲーム理論の裏口入門
ゲーム理論(複数の意思決定者による駆け引きを数学的な学問分野)を、ボードゲームを題材に学ぶという本。
本来はゲームを題材に数学や経済の理論について学ぶ本なのだが、逆の視点で読むとゲームメカニクスに対してゲーム理論的な分析を適用する方法を学ぶことができる。
どのみちゲームの駆け引きについて深く考えるためには、ゲーム理論の知識があると便利だと思っているので、そのための入門におすすめ。
ゲームメカニクス
そのものズバリ、ゲームメカニクスについて書かれた本。
主にゲーム内リソースによる経済メカニクスの話を中心に取り扱っていて、経済メカニクスを設計してシミュレーションする手法としてマキネーションというものが紹介されている。
これを使って色々なゲームのリソースの動きをシミュレーションしてみると楽しいし学びがある。
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