愛別離苦
愛別離苦
愛するものたちには、常に別れの苦しみがつきまとう。
苦しみたくないのなら愛さなければいいのかもしれません。
けれど、わたし達は出会い、愛し合い、そして、お互いに掛け替えのない人になったのです。
苦しむことが愛したことの証なら、別れのこの苦しみを受け入れよう、今はそう思っています。
片岡鶴太郎
「今日の言葉」は、ドラマ終着駅シリーズ37「停年のない殺意」のラストに、片岡鶴太郎さんが、シリーズでずっと夫婦を一緒に演じていた岡江久美子さんに送られた言葉を抜粋したものです。
当然、役柄の中ですので、岡江さん演じられてきた突然亡くなられた「澄枝」さんに向けてのセリフとしてですが、思いは、岡江さんへの素直な言葉のように感じました。
せっかくなので全文載せますね。
日々が流れてゆきます。
苦しんだ人にも、後悔した人にも。
たくさんの涙を流した人にも。
そして、わたしにも。
家内が私の人生から姿を消してしまってから半年が経ちます。
耐え難い苦痛と悲しみの中で、わたしは若い頃に読んだ本の中の言葉を思い出していました。
愛別離苦。
愛するものたちには、常に別れの苦しみがつきまとう。
苦しみたくないのなら愛さなければいいのかもしれません。
けれど、わたし達は出会い、愛し合い、そして、お互いに掛け替えのない人になったのです。
苦しむことが愛したことの証なら、別れのこの苦しみを受け入れよう、今はそう思っています。
今も彼女の笑顔が目に浮かび、彼女の声が聞こえます。
その彼女に私は語りかけ、そして言います、
ありがとう、そして、いつかまた・・・。
台詞だけは、脚本家ではなく片岡鶴太郎さん本人が書かれたとも言われています。
「苦しみたくないのなら愛さなければいい」
というのは、ちょっと冷たい言葉のように思われるかもしれませんが、釈迦が説いたことです。
喜ぶ、愛するという人間が大事にしている感情こそが、実は苦しみの種なんだと。
でも、愛することをやめられない、喜ぶことをやめられない、それを求めてないと生きていけないのが人間でもあります。
だから
「苦しむことが愛したことの証なら、別れのこの苦しみを受け入れよう」
これが大事なのです。
人間であることを受け止め、人間でしかないことを受け入れるという宣言です。
前にもダラダラと書きましたが、
生老病死の四苦
愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦の四苦を足して八苦
四苦八苦は人間であるからこそ持つ矛盾からなる苦しみです。
この苦しみさえも大事に受け入れていくことが、いま、何かにつけ荒んでいる社会に生きるわたしに大事なことなのでしょう。