道民が別府の地獄温泉ミュージアムへ遊びに行ったら、思わぬデジャブを引き起こした話
こちらのnoteを読んだんです。去年の1月に。
当方北海道民、地獄めぐりのことも、別府のことも、大分のことも、もうな~~んにも知らなかったんですが、「これは面白いにちがいない」の直感スイッチがバチっと。
その勢いのまま友人のスケジュールを押さえました。
行くぞ!!
ここが地獄温泉ミュージアム。かまど地獄から白池地獄へ向かう道すがらにあります。
中へ入ってみると……わあ!新しい!
まだ完成して2ヶ月くらいのはずなので当たり前ですが、別府の歴史ある街並み・施設を見て回ってからだと、殊更に新鮮に感じます。
入口にはこのあたり一帯のマップが貼ってあり、おしゃれなカフェがあり、いい感じに手に取りたくなる雑貨があり、蒸気の噴き出す中庭があり、なにより死ぬほどきれいなトイレがあります。ありがたや。
ミュージアム本体への入場はチケット制で、10分ごとに入場のタイミングが区切られているようでした。とはいえ予約でいっぱいという感じでは全くなかったので、ふらっと立ち寄ってもすぐに入れると思います。
そして手渡されるポストカード。なにやらここにこれから12種のスタンプを押して、自分だけの湯けむり風景を作っていくと。ほむ。
なるべく事前情報を仕入れないようにして行ったので、正直まだなにもよくわかっていません。ワクワクしますね。
別府の空から地下へ
11:40入場の方!と呼ばれて入場します。ここでチケットをもぎるお姉さんがこっそり一言、
「丸いイスがおすすめです……」
なんのこっちゃ、と思っていると、モニターをぐるっと取り囲むようにイスが置かれた真っ暗な空間へ案内されました。球と円柱のイスが交互に並んでいます。なんかわからんが、多分この球状の方に座ればいいんだな?
ぽよんこ。
あっ、ちょっといい。座るとぽよんことした感触で押し返されます。たしかにこれはおすすめしちゃうかも。
同じ時間に入場した人たちもみんなお姉さんの囁きを聞いていたので、全員もれなく丸いイスに座りました。ぽよんこぽよんこ。みんなで跳ねながらモニターの映像の開始時刻を待ちます。ぽよんこぽよんこ。
ここの映像で説明されたのは、簡単に言うと「お前はこれから水になるんだよ」ということです。
①雨となって地面に染み込んだ水が
②地熱で温めに温められて
③地表にグツグツ沸いて出る
この一連の過程を水の視点で体験していきましょうね、という趣旨の展示になっているようです。
映像を見終わったら、みんなでゾロゾロと次のエリアへ進みます。
地下深くから伝わる熱
わ!オシャレ!
と思わず声に出してしまいました。
このエリア、シャラシャラの生地のカーテンでゆるく区切られた迷路になっているんです。
全体的に暖色なのは、地熱を表現しているからだそう。
そして、迷路の行き止まりの場所にはそれぞれスタンプ台が設置されています。
そこかしこに書いてあるトリビアを読みながら歩き、そこかしこに置いてあるスタンプをポストカードに押していく作業。
このゆるやかな参加型、いいですね〜〜。なんで人間ってスタンプラリーが好きなんでしょうね。
スタンプは全12種あります、と言われていたのですが、なんとなく歩いていたら先に迷路のゴールっぽいところに着いてしまいました。
嫌じゃ嫌じゃ!12個全部押してから出るんじゃ!と駄々をこねて、来た道を戻ります。
こうしてまんまと部屋の隅から隅まで探索させられていると。
仕掛け人の思うツボだな……とは思いつつも、悪い気はしないからお得です。
地表につながる通り道
迷路の出口へ。
すると、突然の、鏡!
チームラボか?と思いました。
どこを向いても自分がいるので落ち着かなくて私は割とすぐ飛び出してしまいましたが、写真を撮りたい人にとっては絶好のポイントかもしれません。
この鏡エリアの意図するところは、自分(=水)の姿が様々な場所に点在している、つまり、温泉水が地中の複数地点から湧き出ていく様子を表したものだそうです。
特に時間制限も無いので、ここでしばらくゆらゆらと揺蕩っておくのも楽しそうですね。
様々な泉質となり湧出
そんなこんなで、温泉についての解説がたくさん書かれた部屋までやって来ました。
改めて、別府の温泉はどのようにできているのか。そして、この場所に温泉が沸いているというのは、どれだけすごいことなのか?
展示から、たくさん教えてもらえます。
別府を地元とする人々の矜持のようなものが見えて、すごく好きな空間でした。次からはもっと感謝して温泉に浸かろう。
そしてここではもう一つ大事なイベントがあります。
そう、泉質判定タイムです。
実はあのスタンプを押したポストカードにはちゃんと意味があって、この部屋でとある判定方法を用いることで、自分がどんな泉質の温泉となったかが分かっちゃうのです。
詳しい情報は伏せますが、私の場合は、
含鉄泉になりました。
人や文化との出会い
さて、物語はまだ続き、次は2階に上ります。
階段の先にあるのはこちらの扉。
次の開場まで少々お待ちくださいとのことで、椅子に座って友人と談笑することに。
でもこの構造、すごく見覚えがあるんです。
以前に北海道当別町のロイズの見学施設のレポを書いたことがあるのですが、そこも見学途中にミニシアターを挟んでいました。
こんなこともあるもんだなあ、最近の展示物の流行りなのかな?と思ったのですが、考えてみれば、色々と似ている部分は他にもあって。
映像を多用する感じとか。プロジェクターで壁に投影する展示のデザインとか。参加型にこだわっているあたりとか。
全く憶測の域を出ないのですが、もしかしたらプロデューサーかデザイナーが同じ人なのでは?と私は睨み始めました。
だからシアターが開くまでの時間、私は「北海道と九州の両方に触手を伸ばしている謎の暗躍者がいる説」を友人にずっと力説していました。
開場時間になったので入ります。
え?すごっ
めっちゃ風呂じゃん
シアターの内装がこれなんです。大浴場。
「遊び心のある大人がやるやつ〜〜!!」と思いました。
でも私が気になっているのはそこだけではなくてですね、このシアターが上映されたあとのことでもう頭がいっぱいでした。
というのも、ロイズでは、映像が終わると同時にスクリーンがパカっと割れて扉になるという演出がありまして。
もし私の考える「ロイズと地獄、共通暗躍者存在説」が正しいのならば、同じような演出をここでも使ってくるはずだと思ったんですね。
それでシアターをぐるっと見回すと、どうやら出口らしき扉がどこにもない。
これは"ある"んじゃないか……?スクリーンが割れて道になるんじゃないか……?
ドキドキしながら座って待ちました。
映像の中で語られたのは、地獄地帯と人々の交わりの歴史や、温泉を活用した文化の発展について、など。
とにかく鉄輪(地獄めぐりがある地域の名前です)ってすげーんだぜ!俺たちは胸を張ってこの場所を誇っていくぜ!えっへん!という感じが伝わってくる、非常に良い内容でした。
やっぱり地元を誇る姿はかっこいいよな、私もいつまでも"えっへん!"していきたいな……
と思っていたら、
ガーッとスクリーンが開いて道が出現しました。
いや絶対同じ人の演出!!うちのロイズと一緒です!!当別町のロイズもよろしくお願いします!!えっへん!!よろしく!!
今、そして未来へ
中庭の湯けむりを見ながら、最後の部屋へと足を踏み入れます。
ここでは、期間ごとに異なる季節展示が行われているようです。
私が鑑賞したのは、地獄の精霊(?)をモチーフにした衣装と、その衣装を使った祭の様子についての展示。秋田のなまはげみたいなものだと解釈しました。
にしてもちょっと、
マジで怖すぎませんか?
写真ではイマイチ伝わっていないかもしれませんが、赤色を基調とした顔のない異形に囲まれる空間、威圧感がすごいです。
展示には実際の祭の映像もあったのですが、3,4歳くらいの子どもがずっと尋常じゃないくらい泣き叫ぶ音声が流れていました。
そりゃ泣くわな。ちょっと怖すぎるもんな。
ちなみにこの祭、さぞ歴史があるのだろうと思ったら、始まったのが2020年でした。めちゃくちゃおニューだ。
祭を現代に新しく立ち上げられるってすごいですね。何から手をつけていいかわからなくなっちゃいそう。
文化はこうして生まれていくんだな。そしてまた受け継がれていって、変化したり、盛り上がったり、廃れたり……
人の道は果てしなく長いです。
おわりに
これにて完了、お疲れ様でした。
本当に軽い気持ちで訪れた地獄温泉ミュージアムでしたが、内容も濃く、携わった人々の想いも見え、なにより地元ロイズとの共通点らしきものまで見出してしまったということで、ハイパー大収穫だったことをここに報告します。
思えば、似るのも当然なんですよね。どちらもワンテーマで一本の物語の筋を通すことを主目的にしていると思うので。
ロイズの場合は「カカオ」で、地獄温泉ミュージアムの場合は「温泉水」。物が違うだけで、「よーし、偏執的な愛を語っちゃうぞ!」という熱量は一緒なはずです。多分。
その両方を割と短期間で体験できたことは、かなり幸運だったと思います。
これからもこういう偏ったテーマの展示に多く触れていきたいなと思いますが、その度におそらくロイズの話をするはずなので、「地元のダイレクトマーケティングに必死で草」と思われないか心配でもあります。許して!頼む!
私も面白い見学施設を知っているよという方、もしくは陰の暗躍者に心当たりがあるよという方は、ぜひご一報ください。よろしくお願いします。
唐突な別府冷麺でお別れです。
ありがとうございました!