連載:動物園が活きる道② 「テーマ」が活きるテーマパークへ
なぜDisneyリゾートやUSJが高額入場料で成り立つのか
前回は連載:動物園が活きる道① ターゲットの細分化と目的ある営利化として、地域と県外からの観光向けと異なる対象によって金額設定の重要性を提案しました。しかしこの金額設定は、地元もしくはその地方全体でも有数の観光施設として受け入れられる必要があります。これは地元割引を確立するにあたりもっとも重要なポイントです。なぜなら地元から集められない資金を観光で補うためには、観光としてそれだけの支出に納得できるだけの理由がなければ持続性を保てないからです。
異空間の演出で唯一無二の存在へ
関東地方ではDisneyリゾート、関西地方ではUSJと言えばそれぞれ不動の観光スポットです。これらの施設は、入場料が8,000円を超える高額施設にも関わらず常に来場者でいっぱいです。これらの施設の共通点は、不動の「テーマ」をゆうすることです。Disneyリゾートは、Disneyの映画キャラクターや世界観、USJはユニバーサル映画を中心に映画を主体とした世界観です。日常生活に追われた現代人にとって、ビル群を抜け出し異空間で異なる世界観に浸りたいのかもしれません。それを可能とする異空間は現代人にとって受け入れられやすいのかもしれません。
では動物園や水族館を観てみましょう。これらの施設にとってのテーマは、「動物」です。ただ大半の動物園でほとんどの動物の躍動感や生命の強さを感じる瞬間を目の当たりにすることは稀です。つまり動物が活き活きとしてこそ、その施設のテーマが活きるのです。これを実現できている施設は数少ないのが現状です。
しかし一方で水族館でも異空間を演出することができている施設があります。これらの施設は地域の観光名所としてその地位を確固たるものにしているのです。その代表が、沖縄美ら海水族館と大阪海遊館です。これらの施設は屋内型の巨大水槽や、順路の暗さで水槽を際立たせるなど異空間の演出を効果的に行っています。特に屋内型の水槽は、写真にするとよくわかるようにインスタ映えといった若者にとっても魅力ある演出にほかなりません。2018年度はどちらも200万人を超える動員数を記録しています。その一方で前回例に挙げた須磨水族館は同じ年に100万人にとどまりました。ここで注目したいのが、海遊館にはイルカショーがないということです。にもかかわらず海遊館に脚を運ぶと家族連れだけにとどまらずカップルや多くの来場者層がいる事がわかります。これは海遊館が、水族館としてここでしか味わうことのでいない空間演出ができていることに他ならないと考えています。
異世界への招待
唯一無二の世界への招待とは、入場ゲートをまたいだ瞬間からはじまるそのテーマパークが持ち合わせる一貫したテーマです。そしてその世界観は、飲食店など細かなところまで統一させることで外界からかけ離れた体験として人々の関心を得ます。
例えば上の写真。これはホテルのロビーとシャチの水槽画像を合成したものです。水族館隣接のホテルが存在するのであれば、なぜそのホテルに泊まるのかという付加価値は重要なポイントです。
展示場の水槽内だけを充実させたからと言ってその世界観が再現されているのかというとまた別問題なのです。このような付加価値を積み重ねていくことで、ただ動物を観ることのできる施設ではなく、動物が棲む世界に我々人間が飛び込むという異世界への冒険心を駆り立てるような施設にすることで一大テーマパークへと生まれ変わることが出来ると考えています。
しかし営利目的のようにこのような改革に踏み切った場合、問題となるのが社会的な役割である教育の普及とのバランスです。これまで経営・営利という観点からの提案をしてきましたが、そのような教育とビジネスの両立という課題について次回からお話していきたいと思います。
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