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十二国記ファンが激推しする『精霊の守り人』を軽い気持ちで読んだらいつの間にか朝になってたけどこれ時空震動ですか?

十二国記こそは国内ファンタジーの至高にして一強!! そう思っていた時期が俺にもありました
↑バカも〜〜〜〜ん!!精霊の守り人も読めぇ〜〜〜〜い!!

こんにちは!!!!
十二国記が国内最強ファンタジーだと考えていたところに、新たなる強者が颯爽と現れ戦々恐々としている男こと遅筆マンです

昨年末から読み進めていた大傑作・十二国記シリーズを読み終え、
「あ〜〜もう完全に理解っちまったワ、ファンタジーの真髄ってヤツ。要するにィ〜十二国記が最強っちゅーこと〜ヨロシクね〜」などとイキリ散らしザウルスと化して街を闊歩していた折のこと

まぁでも評判らしいから、一応ね?
十二国記が最強だとは思うんですけどもね??
一応読んどきますかいね〜〜〜〜ィくらいのテンションでこの『精霊の守り人』を手に取ったわけです

ま!つっても、あの十二国記に匹敵するファンタジー作品なんてそうそういるわけが──────

いました!!!!!!!!
あの十二国記に比肩しうるやつが!!!!!!!
十二国記のせいで目が肥えてしまった俺の顔面をぶん殴ってくるすんげ〜〜〜〜作品が!!!!!!!!

というわけで、本日は十二国記に続き俺をファンタジーの沼に引き摺り込んでくる傑作「精霊の守り人」について語り散らかします!!!!

『精霊の守り人』

わたしはね、骨の髄から、戦うことが好きなんだよ。

精霊の卵を宿す皇子チャグムを託され、命をかけて皇子を守る女用心棒バルサの活躍を描く物語。著者は2014年国際アンデルセン賞作家賞受賞。
老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。

公式あらすじより

直前のアホセンテンスをいきなり裏切るようで恐縮ですが、本音を言えば『精霊の守り人』がめちゃくちゃ面白いであろうことはわかってました

というのも、以前Xのほうで十二国記勢の皆様におすすめ作品を聞いたことがあり、それについてまとめさせていただいていたのですが
(↓当該記事)

その際、もっとも多くの方からおすすめいただいたのがこの「精霊の守り人」だったからです

世にコンテンツは数あれど、そのなかから十二国記を長らく愛し続けてる皆様の審美眼にかなう作品であれば、さぞかし面白いに違いあるまいよ……という予測はもちろんありました

ありました、が!!!

ここまで面白いとは聞いてねェ…………!!!!!

この『精霊の守り人』については、著者の上橋先生が文化人類畑出身ということで、神話や国の成り立ちをはじめとした強固な世界観の魅力についてとにかく言及されているな〜という印象でした

実際、文明・文化の併合に伴うシンクレティズムっぽい要素が物語の骨子に据えられていたりと、まさに文化人類学畑の人らしい手つきでの作劇がめちゃくちゃに面白い
そりゃ気づけば朝になるまで読みふけますて

精霊の守り人は子供のみならず大人にも……否、大人にこそ読んで欲しい児童ファンタジー

魅力的な世界観やバルサの生き様、バトルの臨場感など、本作の面白ポイントをあげればキリがありません

なかでも、特に心に残ったのがトロガイのこのセリフです

「心配するな。わしは、よその国の神話だからといって、それを頭から馬鹿にするほど、馬鹿じゃない。どこの国の人でも、みな、気が遠くなるほど長い年月をかけて、この世のほんとうのなりたちを知ろうとしてきた。

精霊の守り人
著・上橋菜穂子 出版・新潮文庫
P190より

物語で頻繁に使われ続ける題材であるだけに、有名な神話ならそのおおよそはぼんやりながら知っているような気がしていましたが、「なぜ神話が生まれたか?」「神話がこの世界においてどういう役割を果たしてきたか?」そういう当たり前にあっていい疑問を素通りしてきたんだな〜、とこのトロガイの含蓄あるセリフで気付かされました

まだ科学的な知識や技術も乏しかった時代、その時々の人々が世界を知る手段として用いていたのが神話なのだ、という視点に「神話ってアレでしょ〜? FGOにフリー素材扱いされてるやつでしょ〜?」くらいのナメた知見しか持っていなかった俺はひどく納得しました
なるほど、小中学校の先生もそういう面白い説明をしてくれたらもうちょい神話やら民俗学方面やらにもっと関心を寄せてたのに〜……と
というかいくらなんでも俺は神話をナメすぎ。下れ天罰

そして、この作中のセリフの逆算のような解説を恩田先生が書かれていました
俺がこの精霊の守り人を一発で気に入った理由も集約している一文なんですが

 作家が異世界ファンタジーを描きたいと思うのはどうしてだろうか。
 同業者として想像してみるに、自分だけの世界を作り出したい、自分だけの世界をすみずみまで構築してみたい、というのがまずあるだろう。だが、その更なる普遍的な欲望に、自分の存在する世界を、異世界という縮図で理解したい、描きたい、自分のものにしたい、という意識があるような気がする。

精霊の守り人
著・上橋菜穂子 出版・新潮文庫
P350 恩田陸氏の解説より

言われてみれば、この精霊の守り人は遠く異世界を舞台にしながらも、そこで描かれるテーマはこの現実世界で生きる当たり前の人々にも通ずるものであるように思います

新ヨゴ皇国の王子に生まれたかと思えば、精霊の卵を産みつけられるという運命に苦悩するチャグムに、誰もが自分ではどうしようもない生まれや社会的な役割について考えさせられるはず

思えば、この物語にはとある理由から争いのなかで生きる以外の道を見つけられないバルサを始め、国のために息子さえ殺さなければならない皇帝、聖導師、狩人など、役割に縛られ自分で生き方を選ぶことができない人々が多く登場します

そして、周りを見渡せば実は自分も含めて、世の中はそんな人ばっかりだったりするわけで……

個人的な推しでもある昭和の文豪・坂口安吾は、

 思ふに文学の魅力は、思想家がその思想を伝へるために物語の形式をかりてくるのでなしに、物語の形式でしかその思想を述べ得ない資質的な芸人の特技に属するものであらう。

大阪の反逆
著・坂口安吾
青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42853_35002.html)より抜粋

と、文学の魅力について説明していますが、それをより限定的に言い換えれば、ファンタジーという形式を通してこの現実を生きる人々の葛藤を描こうとする作家さんが、俺は大好きなのかもしれません

「これは、あなたの物語。」というキャッチコピーを冠する十二国記にもそれは奇しくも通底していて「なるほど〜、だから十二国記勢のみなさまからこんなにもオススメされたんだな〜」とめちゃくちゃ納得しました

こういうの、マジで好き。おすすめしくれた皆さん、Love……

まとめ

普段はどちらかといえば既読勢に向けて「この本、マジで面白かったっすわ〜!!」と感想共有を目的にnoteを書しているのでネタバレありきの記事が多いですが、今回はそれは最低限に抑えてみました

というのも、普段お世話になっていてこれを読んでくださっている十二国記勢の皆さまのなかに、まだ精霊の守り人が未読の方がおられれば是非にオススメしたい!と思ったからでございます

こ〜〜〜〜〜〜〜れは面白いっす
間違いないっす
精霊の守り人はいいぞ!!!!!
十二国記勢にも、小学生のお子さんにも、成人以上の大きなお友達にも絶対面白いはず

と同時に、これだけ面白い「精霊の守り人」と一緒におすすめされた他作品も絶対面白いじゃん……といまからワクワクしております

ということで、今回は短くなりましたがこのへんで

次回は銀河英雄伝説の感想文でお会いできればと思います

ではでは!!!

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