往復220kmチャリ旅
福岡市から関門海峡トンネルまで!1泊2日の弾丸まったり自転車旅
感動あり・友情あり・ホラーありのハードすぎるライブの打ち上げの記録をここに記す。ホラーに関してはマジ怖かったし仲もめちゃくちゃ深まった旅だった。
打ち上げの詳細
コレだいぶ破ってますねぇ。ルールは2日目に1つ目のルールだけ破っちゃったけど、、まあまあ。他もだいぶ伏線になってるのでぜひどこがミスリードになってるか予想してみてね!
DAY1;旅の始まり
朝6時半、眠い目をこすりながらの起床。自分にとってだけだが、この前日、春休みの初日にも部活の関係で北九州にある九州工業大学戸畑キャンパスへと赴いていた。それゆえに少し気怠さも感じる。昨日は学校の用意したバスで北九州へ出向いたのに、立て続けに今日なぜ、自転車で戸畑よりも向こうの北九州まで行くことになっているのだ。
だがこれは、バスや電車で行きたいとかそういうことではない。自転車で行くことに意味があるし、こちらの方が1ヶ月前からずっと楽しみにしていた。
すでにほとんどの準備は終えている。旅は身軽に、そして旅の恥はかき捨て。トートバックに少しだけ荷物を入れた。朝食を摂り終え、髪をセットしながらこうなった経緯を思い返す。
ライブ2週間ほど前のバンド練習の日、打ち上げをどうするかという話に。この前のライブでサイゼリヤ行ったばっかりやしなぁ。普通の打ち上げじゃ面白くない。
そこから話は二転三転し、リードギターのSmith(後述スミス)がジェットコースターに乗ったことがない、怖そうだからというところまで行きつき、じゃあアトラクションのあるところへ行こうと。自転車で行ったらもっとワクワクしないか。
そんなバカみたいな会話から軌道修正。流石に自転車で行けばアトラクションを楽しむ時間はほとんどなくなってしまう。なら、自転車でどっか行こうぜ。1年半前の夏休みに自転車を1時間半漕いではしゃぎ遊んだ海の時みたいに目的をゴールに作るのではなく、自転車で移動するという過程を目的にする。そうすれば移動も苦ではなくなる。
長崎にする?いや広島もありか。いやでも広島は行きすぎではないか。
そうして、有ちゃまの祖父母家が北九州にあるということで行き先は北九州。関門海峡トンネルを渡って県外に脱出するところまでが予定の行き先。
そんな感じで北九州に自転車で、しかもバンドメンバーとライブの打ち上げで行くことになったんだっけかと、回想を終える。俺たち、ロックンロールすぎやしないか。
LINEを確認すると30分予定より集合時間を遅らせるらしい。いつも遅刻ばかりの俺たちらしい。朝早いしな。俺たちとは言ってもスミスを除いた俺たち2人なんだが。
有ちゃまに至っては遅れて気を使うのがイヤというのが理由のひとつとして、Tiger(俺)かスミスがいないバンドではできないらしい。このバンドのメンバーがどうやって構成されることになったかということも、のちに明かすこととしよう。
そして遅らせた集合時間よりも5分遅れて俺参上。特に責め立てられることもなく、平然と出発の写真。出発前と到着後の写真を比べて顔の疲れを知りたいらしい。
出発
スミスのナビに従って後ろで談笑するTigerと有ちゃま。全然都会抜けねーじゃんと談笑しつつ、忙しない通勤ラッシュをバックに朝風を切る。
DAY1;街を抜けて奇跡のマッチメイク
街を抜けてまずやること、手土産が買えるイオンまで突っ走る!
いやこんな光景あるんやとか貨物列車やん!とか、いちいちのちょっと気になった景色はすぐに共有。そしてその話をし続ける。めちゃ楽しい。途中タイに行った時と同じ匂いがして懐かしい感じにもなる。
と思えばそこをすぎた瞬間に横断歩道の見当たらない高架下へ。まじかよ、、、とか言いながらも歩道橋に自転車を登らせる。きちぃ。この後にもあと2回登るんだが。
ちょっと進んで線路を通り過ぎる。なんだろう。電車とか全く興味ないけど撮り鉄ごっこしたい気分だ。ちょうど1時間に1回のストーリータイムだし小休止とばかりに撮り鉄。さらにその撮り鉄のことを撮る、撮り撮り鉄?俺たちやっぱりバカだぜ。
と、ここでまさかのニュース。東京で震災があったらしい。俺たちがチャリ旅中に出くわしたら‥なんて想像もつかねぇ。ご冥福をお祈りします。
あれ?目と鼻の先に大学があった。しかも今日が入試らしい。入学試験会場という看板が丁寧に表に出ていやがる。とりあえず受験のことは一旦置いといて先へと進む。
今の目的地はイオンである。どのくらいの距離かもわからないからずっと進み続ける。イオンか?!と思ってもマックスバリューなのだ。なんか遠い。
ここでスミスからの究極の2択。海側を通るか田舎道山道か。
アンサーは田舎道へ。国道3号線沿いを通るとのこと。国道3号の標識を見つけた時の妙な興奮は形容し難いが、国道でしかも番号が若いのがなぜか嬉しかった。のでショットタイム。
国道沿いの良さは自然音と車の音以外の静けさ。めちゃくちゃ語りまくれる。ここでライブの振り返りができるのは俺たちだけの特権。いろんな想いが溢れる。でもまだまだエモくなる時間じゃないぜ。
車で行ったことのある場所が見えると、俺たちこんなところに来たのかよ。イオンに到着。手土産に通りもんを買ってちょっとおやつ休憩。
フードコートで奇跡的な再会を果たす。休憩で椅子に座ると疲れめっちゃきて眠くなるのヤバいなとか言って出ようとしたところで、スミスと有ちゃまのクラスメイトとエンカウント。俺は初対面だったけども。いろんなとこから通ってくる学校に行ってるからこんなところ出会うのかよ、みたいな。これ以降、奇跡の連続が巻き起こる。
DAY1;北九州
自転車に木の棒が刺さるだけでも楽しいお年頃。遠出でこんな楽しいのはクルマもバイクも免許を取ってない高校生の特権。自転車旅がこんな楽しいのは最高の仲間がいるから。
昼ごはんを考え始める。旅の醍醐味だし。マップでちょっと迷いつつもとりあえず、イオンで休憩した時にちょっと食べたから1時に食べることにしてあんまり坂もない山道を越えて、ちょっとした街でご飯を摂ることにした。
昼ごはんは宿泊地と出発地のちょうど真ん中あたりのゆめタウンのマック。すぐに食えるものにした。自転車、よく頑張ってくれるよねとか言いながら。
ここで自転車紹介。手前からサドルの硬すぎる電動自転車。電チャリは羨ましすぎるけど、クッション敷いてもけつが痛すぎるやつ。2番目は前日の夕方に裏の元自転車関係の人に無理言って借りたマウンテンバイク。ギリギリに行ったからグリップなしで肩から下、特にお手てが痛い。文句はないです本当にありがとうございます。奥のはよく分からん。普通のチャリ。
でメシ食って快晴じゃー!って叫びながらまったり弾丸旅にふさわしい速度で移動。なんと、北九州市に入る。
北九州チョロすぎ〜。
北九州に入ったのに感動した。俺たちすぐに来れるじゃん。ちょろ〜。やればできる!
それにしてもホントに晴れてよかった。2日間とも。しかもこの前後の1週間ずつなんてほぼ雨とか。示し合わせたように最強の天気を呼び寄せた俺たちはやっぱりツイてる。
DAY1;アライブ
到着までは書くこともなくなってきたな。ダラダラと喋りながら楽しい道中。
1時間に1回のストーリータイムには3つの「死ぬな!」シリーズがあって。インスタのストーリーズアーカイブ「チャリ旅」に載ってるんだけど、1回目は有ちゃまに、2回目は自分のUVカット伊達メガネに、3回目はサドル上のクッションに「死ぬな!死ぬんじゃねえ!」っていう茶番劇。元ネタがあるとすれば、ミッシェルガンエレファントの1998年のフジロックでチバが言ってた「絶対死ぬなよ」。それを裏声で。それもこれも有ちゃまがサドルのせいでケツバクハツしたせい。”ケツダイバクハツ”ってポケモンの技名っぽいよねとかおもいつつ。
最後は話すこともなくなってきてテキトーに熱唱。歌うだけ。スミスと有ちゃまのもうすぐ着く、あと20分詐欺を5回は聞きながら。初めに聞いたあと20分から1時間は到着にかかったぞ。
そんなこんなありつつ死者もなく無事到着して温かく出迎えてもらう。こん時に「ああ、計画中は俺たちできないかもしれないとか、ちょっと思うこともあったけど、俺たちやれんじゃん」ってなった。5時半着だからまだまだ明るい。
1時間充電して、夜ご飯へと向かうのであった。
おじいちゃんおばあちゃんまぢ優しい。
DAY1;sign
「最後話すことなくて歌ってたやん」
「じゃあ、とっておきの話してやるよ」
「明日に取っとけよ」 シュン⤵︎
夕飯はやよい軒。生姜焼き・カツ・唐揚げ定食を注文。
ここで声を大にして伝えたいこと。
白米はマジで美味い!!
1日目の総括はこれ。白米が美味い!
俺と有ちゃまは米のうまさに感動して「米うめえ、米うめえ」ってずっと言ってお代わりしてた。お腹いっぱいや。疲れてお腹ぺこぺこだからこそっていうのもあるけど、米はめちゃくちゃ美味しいんだよ。でもどこかの誰かが言ってたように、亡くなった親の生姜焼きが1番恋しくなる。生姜焼きは母親が作るのが1番美味しい。って言ってた理由はわかった。母親の生姜焼きが1番美味しい。マキマさんの生姜焼きも食べてみたいけど()。
日本人は米が体に合ってる。それを時々思い返してほしい。だってこんなに美味い。日本食が最高?いいや、違うね。米が美味いんだぜ!
明日世界が終わるならナニが食べたいかって?この時に友だちと食った白米だね!おかずなんて最悪なくてもいいよ。米だぜ米!
ちなみに今までだったらトムヤムクンにヌードルぶっ込んだやつって言ってた。
満腹中枢を刺激されてふらふらと、小音で俺たちにとってのエモい音楽を聴きながら帰路に着く。旅といえば同じ部屋で語り合う時間だって言うのに、もう寝ちまいそうだ。
寝る前にちょっと話のネタとして心理テストしてこれが後の伏線になってたり、寝ついたと思った瞬間に有ちゃまが爆笑しだしたり。これにて1日目は終了。
DAY2;諸行無常
有ちゃま家の朝食。すごい量だがしっかり完食、一宿一飯の恩義は忘れません!ありがとうございました!
筋肉痛はある。あるけど脳を騙しながらの出発。有ちゃまは自転車に乗った瞬間にケツバクハツ。自転車屋に行ってサドル新しいの買うかーと近くのところの行ってみるも、小さいところで売ってない。まあまあ、行きに自転車屋あさひはいくつか見つけたしどうせどっかで買えるでしょ!と念願の関門海峡へチャリを走らせる。これが仇となり、あさひが見つけられずに最後までケツはやられたまま。。
坂で下のトンネルはぜひ一度自転車で滑ることをオススメする。とても楽しい。北九州は道路だけ整備されてたりするなとか思いながら目的地は一瞬で来た。
うわぁ。関門海峡だ。
今日も快晴、青い空と青い海。これぞ青春の暗示。
我々一行は関門海峡トンネルへと潜る。中国人観光客の人たちの写真もお撮りしてさしあげる。県外脱出は、目と鼻の先だ。
DAY2;ホラーの始まり
平家物語、覚えちゃってるんすよ。というわけで壇ノ浦の戦い。
大砲とか置いてある。
そんなことよりもう11時。辿り着かないのではという疑問も抱きつつお腹が減ってくる。
ちくわターイム。
注文を受けてから焼き始めるらしい。めちゃくちゃ美味しい。ちくわにこんな感動するとは思わなかった。焼き目ちょうど良すぎる。
県外脱出じゃあ!とかはしゃいでたけど山口に用があったわけじゃなくて、自転車で関門海峡トンネル渡りたかっただけ。あとは帰るだけ。
北九州に自転車で日帰りで行ったことあるよってDMに友だちから何件かきてたけど、ただのアホだろ。山口までは行ってないみたいだし、計画性ある俺たちは偉い!(自転車で行く時点でみんな頭悪い)。
そんな愛すべきバカどもの餞を受けて本当の意味で家に向かうのだった。
1日目にもストップ!待って!って言ったのに進んで行った愛すべきバカがうちにもいるんですよ。2日目の今はトンネルの写真撮ろうと思って、待ってって言ったのに先に行っちゃって。
追いかけて電話して。有ちゃまが電話かけて無言で俺に渡してきたから、俺も無言でいって
「繋がらんかったけど誰かと通話中やった?」ってもう1回かけ直して、
「え?繋がってたやん」
「繋がらんかったよ。え、怖い怖い」
みたいなホラー展開を作り出そうとしたのに、その意図に気づいたとかでもなく、合流してもホラー展開にならず。
あれー?とか思いながら、ちょっと無口になったのに違和感を感じつつも3人でまた漕ぎはじめた。
今思えば、ここから全ての歯車が狂い出して霊に誘き寄せられていたのかもしれない。
DAY2;戻りかけた歯車
今日は海側行くかー。ナビのスミスを前に有ちゃまと会話して、スミスにも話題を振るのに全く反応なし。聞こえてないのか、はたまたナビに集中しているのか。
真相を聞いてみると
「え、2人で楽しそうだから話に入らなくてもいいと思って。てか、疲れた」
らしい。旅疲れはあるだろうし話しかけられてもしんどいならとりあえずいっか、と2人でアニソンの話。適当なコンビニを見つけて休んでもらってみる。この旅は全然汗は書かないのに喉が渇きまくって、水を飲むもんでトイレが近くなる。コンビニにはお世話になります。
そのコンビニの前には闇落ちしたENEOS。写真は逆光で色が暗くなってるわけじゃなくて本当にこの色だった。逆に人口がめちゃくちゃ減った後の近未来感がしてカッコいい雰囲気。
するとスミス回復。「なんかものすごい倦怠感があったけど取れた」らしい。今まで感じたことのない疲れみたいなもんだと。ENEOSの写真をストーリーにアップしてみると、他にいいねはほとんどしていないスミス父がこれにだけいいねしてたから、スミス家にとってのパワースポットだったのかもしれない。
この拭いきれなかった疲れが、後に我々を死地に誘うとも知らず。呑気に再出発して、『Hacking to the gate』熱唱。これこそがシュタインズ・ゲートの選択。
小倉の地に踏み入れて森鴎外旧居があることを知る。まさか、東京だけではなかったのか…!
そう、私Tigerは森鴎外『舞姫』が大好きなのである。「俺のエリス」を合言葉に森鴎外旧居へ。近いうちに「私の好きな人」って題材で『舞姫』と『エリス』への愛を語りたい次第。
昼ごはんはうどんじゃあ!資さんうどんで間違ってうどんの細麺にしちまったよ。
DAY2;【最恐ホラー】犬鳴村から逃れられない
昼食後、急な坂が一瞬ある方か緩やかな坂が続く方かと聞かれて、緩やかな坂を選んだはずなのに。急な坂が続くとかいうバッドエンド。後から大人たちに聞くと急な坂の方を選べば、ほぼ坂なしで帰って来れたという悲劇。
疲れすぎた。日焼け止め2日とも塗ってるのに、いつの間にか日焼けで顔が赤くなっちゃってるし。
ここで朗報。このまま行けば犬鳴ダムとかトンネル脇を通れるってことで、ちょっと楽しみになっちゃってる自分がいる。スミスはちなみにまじで嫌そう。ギリギリ日が沈まないうちに犬鳴抜けれそうだしエンタメとしてだから大丈夫でしょ、とか思ってた矢先でした…
自転車のパンク。
まさかの俺のマウンテンバイクのタイヤがパンク特有の音を発し始める。幸いなことに空気は全く抜けてないけど、さすがに犬鳴抜ける途中で空気が抜けきったりしたらシャレにならんすぎる。
それで犬鳴から逸れたルートで帰ることに。よかったね、スミス。
パンクは流石にヤバい。結果論でいくと家まで空気は全く抜けることなく到着して、次の日に見ると空気がなくなっててあぶねーってなって。
パンクロックやってんだよこっちは、チャリのパンクがこの旅行中にあったとしたら本望だぜ!とか言ってたのにパンクしてビビるなんてね。
そして山道。いくら犬鳴ルートを逸れるとはいえ、犬鳴峠に近づかなければならないらしい。後戻りは不可能に等しい。そのせいで山道を登らないといけない。なんかここから飛び降りてそうだなって雑木林も尻目に捉えてしまうし。
山道をひとつ登り終えるとコンビニがあったので休憩。通ってきた坂を振り返ってみると看板が目に入る。
「この先自転車 歩行者行き止まり」
嫌な予感しかしない。無視してやる。コンビニで糖分でも買おうとコンビニに入ると1通の電話が入る。
「よお、俺だぜ俺。北九州に自転車で行くなんて、心も身体もロックンロールになってんじゃねえか」
詳しいことはあまり話せないが、1年以上音信不通だった最高の友達からの電話だった。オレオレ詐欺かマルチ商法かよーとか冗談叩きながらも、過去の回想が脳に溢れかえる。まったく、お前ってヤツは。トークも相変わらずキレてやがる。
例えるなら、五条悟が獄門疆に封印される直前に3年間の青春の日々で脳がいっぱいになる感じ。
そこからの俺はちょい無敵だった。
今かよ。今までずっとお前からの連絡を待っていたのに。このタイミングだなんて、、最高すぎる。もう会えないと思ってすらいたのに。
無敵という名の恍惚状態のまま進む。このままだと犬鳴近くを走り抜けるのに日が暮れちまうよ、ヤバいヤバい。ホントにね、日が昇ってる間だったらいくらでも行ってやるけど暗くなったらシャレにならないから。近く通りたくないから早く進もーって。
車通りある道路から外れて田んぼ側というか正真正銘の田舎道って方やけど、こっちで合ってるのか?
そんな疑問も抱きつつ、田んぼと田んぼの間を抜ける。すると山に向かう坂にが現れる。
いやこんな坂とかもう進みたくねーよとか言いながら。その時にはまた疲れたのか、スミスはほとんど口を開かない。でも、スミスナビによるとこの坂を登るらしい。
そこで有ちゃまが一言。「こっちじゃなくね」
「いやこっちだよ」とスミス
坂が嫌だからこっちじゃない、と俺。
有ちゃまがもう一度言う、「いや、絶対こっちじゃないやろ」
俺には方向はよくわからなかったがふと違和感を覚える。お茶を飲む。
坂を登る必要があるのだと再度ナビを見せながら、スミスが教えてくる。確かにナビが示す方向は坂だった。
夕焼け空まで、あと数十分。
有ちゃまが自分のスマホのナビで確認する。どうやら逆方向らしい。
どっちだよ、と思いつつ自転車のパンクが気になってタイヤに目を向けると、その延長線上の不気味なものが目に入る。
【止マレ】
赤い字でコンクリートに記されたそれを見た瞬間に、背筋に電撃が走る。鳥肌が身体中の毛穴から沸き立つ。
何を俺たちに訴えかけているのか、指を震わせながらそれを指す。「おい、あれ見ろよ」
気づいた2人にも衝撃が走り、鳥肌が立つ。有ちゃまは今振り返ると、最大の鳥肌ポイントがそこらしい。
自分も咄嗟にナビで調べると有ちゃまと同じで、行き先は違う方向を指している。
それだけではない。坂を登って向かう一直線上には、犬鳴峠と書かれていた。この坂を登れば、時間的にも犬鳴から逃れられなくなっていただろう。
急いで方向転換した一行はビビりながら元来た道へと戻る。何やってんだよスミス。お前が1番行きたがってなかったのに、お前が犬鳴に俺たちを連れて行こうとしてんじゃねえか。ナニカに誘われてたのか…?
【止まれ】の真正面にあった一軒家の窓からは犬が覗いていた。全然泣かないなとか言いながら後にする。通りすがった車の中の人たちの顔がなかったりしたら怖くね、とか言いながら。
それからわずか数分後、後ろから割と大きめな自動車が俺たちを追い抜く。さっき言ったことが気になり、ふと車内を見てみると、さっきは家にいたはずの特徴的な犬がいた。おかしい。そんなわずかな時間で車に乗せて、しかも追い抜くなんて不可能。
気にしないことにした。
しかし1分後、今度は前から車が向かってくる。さっき追い抜いて行った自動車とやけに似てるな、と思いつつも、気にしないようにした時ほど気になるのが人間。車内を見ると、またあの犬がいる。よく見るとナンバープレートも車種も全く同じだ。
この短時間、しかもUターンする場所なんてないのだが…?
もういい、気にしないことにした。Uターンできる場所でもあったんだろ、とにかく進んだ。
そう、とにかく進んだ。夕日の追いかけっこだ。死ぬわけにはいかない。
旅のルールには「何があっても諦めない」とあるのだから。死ぬな、死ぬんじゃねえ。
ここで昨夜の心理テストを思い出す。スミスには友だちの多い友だちが必要。Tigerには明るい友だちが必要。
その通りなのかもしれない。数多い友だちのうちの旧友を先ほどのコンビニで取った電話で引き当て、それは明るい友だった。スミスにはTigerが必要で、Tigerには久しく会ってない友が必要。
電話がなければ視野が狭くなり、【止まれ】を見つけられずに突き進んでいたのかもしれないと、ifルートを想起する。
道路脇で突然、スミスが自転車を停めた。「水、水」と水を欲しながら。なぜか、「水」と「水買いたい」とだけ何度も何度も異常なほどに。お茶を買って飲んでからは口を開く様子もない。有ちゃまは呑気に「もうこの旅も終わってしまうのか。日本1周しようと思っとったのに」と言っていたので、こいつは大丈夫だろう。100メートル先には美味しい水と看板の建てられた店もあったが、素通り。「水、しかも美味しいのあるじゃん。なにお茶買ってんだよ」と茶化しても、スミスの反応はなかった。
闇夜が俺たちの頭上を覆い始める。果たして間に合うのだろうか。
それ以降、スミスが口を開いた時はナビに誘導されて曲がることを伝える時。しかし、有ちゃまがあらかじめナビを開いて、トンネルを抜けるまではまっすぐでいいことを頭に入れていたので、曲がろうとするたびに真っ直ぐだぞ!と背中を押す。何故スミスは犬鳴峠へと向かう真っ暗になってしまった方へ、俺たちを曲がらせようとするのだろうか。
スミスはもう使い物にならない。犬鳴に取り憑かれている。1番嫌がってるヤツやナビゲートするヤツ、真面目なヤツこそこういうのにはやられやすいとは定石だ。Tigerと有ちゃまが今までアニメや漫画で培ってきた、フラグになりそうなものの蓄積。フラグ折職人となった。フラグになりそうな言動は全て俺たちでへし折る。無事に生きて帰るんだ。
そして血筋だろうか。Tigerは「左側ヤベェよ。明らかに君の悪い空気感がする」だとか「今度は右側だ。よくそんな家に住めるよな、不気味すぎて気分悪い」だとか、地場に全集中する。それまでとは違い、みんな急ぎ気味にペダルを踏む。
かと思えば、先頭のスミスがスピードを落とし始める。速くいかなきゃヤバいことを分かりながら、足を止めてチャリを降りる。
「速く行こーぜ」
返ってきた言葉は「もう、疲れた。むり」
ノロノロと歩き始めたので、それに従う。置いていくわけにはいかない。
自転車を漕げないほど身体が重いスミスが心配だが、もう陽もほぼ沈みかかっている。できるだけ早急に脱出したい。
トンネルまで来た。犬鳴トンネルではないが、トンネルを通りたくはない。首のない地蔵がいるかもしれないし、霊が集まりやすいとも言われているからだ。
「トンネルは流石に勘弁なんだけど…?」
それでもトンネルを通るほかないらしい。腹を括る。スミスを自転車に乗せて、ネックウォーマーを目の下まで伸ばし、車道側の右目を瞑る。車内なんてもう見たくもない。
スミスを先頭にトンネルへ侵入。10秒してTigerは耐えられなくなり、全速力で漕ぎながらスミスを追い越し、みるみる内に2人との距離が離れていく。無心で漕ぎ続ける。幸いなことに下り坂ではあったが、昼ほど楽しんでは走れない。
死にたくねえ。死んでたまるか。人生で1番必死だった。
800メートルを走り抜けると陽は沈み、真っ暗な夜だった。一気に肩の力が抜ける。
後ろの2人がトンネルを抜けてTigerに追いつく。有ちゃまはトンネルの下りを楽しみ、スミスもトンネルの出口へと近づくたびに身体が軽くなって行ったようだ。有ちゃま、なんてヤツだ。
スミス曰く、トンネルを完全に抜け切ってからは頭のモヤも晴れて気分も良くなったらしい。口数も増えて、会話に積極的に参加するようになった。
「よっしゃ!俺たちは生きて犬鳴の呪縛から逃れたぞ!」
「バカ!フラグだろ、それ!」
「身体が本当に軽いよ!」
「ホラーなんてもう懲り懲りだぜ」
「油断大敵!!!」
そう叫びながら、犬鳴トンネル付近の公衆電話に霊が出るという噂があるので、公衆電話を見つけたらうわぁぁぁと。何事もなく、行きに手土産を買ったイオンに、夕飯へと向かったのだった。
俺たちは無数にある世界線から、数少ない無事に生き延びるルートを掴み取ったんだ。
DAY2;休息
今となっては思い出せないが、イオンの直前の瀕死の状態で「鶏が先か、卵が先か」の結論が出た気がする。極限状態でイオンのフードコートにどっと、それこそずっしりと座り込む。今まで気張りすぎていた分、余計に疲弊した。
結果的に1時間半は休んだために帰りがより遅くなったのだが、夜ご飯をゆっくりと食べ、100均でパンクした時用の空気入れを3つとケツバクハツマンの新しいクッションを購入。クッションをビニールテープでぐるぐる巻きにして、「おほぉ最高」と今度こそ家へと向かう。
この30分後に、ケツバクハツマンこと有ちゃまは電動自転車の電動部分が起動しなくなり、クッションで良かったの一瞬だけかよ!とそれはもうブチギレる。なんで電動アシストはつかないのに、電気だけつくんだよ。30分電源を切り、その後に直ってなかったら本当に泣くぞ、と悲壮な顔であった。今まで見たことのないほどに。
翌日に分かったことは、クッションからはみ出たビニールテープがアシスト部分に引っかかったことが原因だったらしい。どうしたもんかね。
通り雨の大粒をコンビニで避け、迎えに来ようかと言う電話も制止して緩やかな坂にも立ち向かう。一刻も早く帰り着きたいスミスとゆっくりで良い派の有ちゃまが自転車を交換し、意見を対立させながらもひとつひとつの漕ぎ出しに力を込めて、仲良く家に帰る。お腹が空いてコンビニにも寄る。
福岡市だ。とうとう来たなこの時が!
DAY2;エモいんだって!
福岡市に入った感想。「都会的な街に癒される!」
なぜだろう、いつもは都会よりも田舎の方が癒されると思ってたのに。やっと帰ってきた感というか、タイの都心でも感じたこの故郷だと思える感じは。不思議だ。
そして北九州と比べて空気が煙とか花粉とか大陸からくる諸々で汚いね、うん。
博多も近くなってきて、旅の終わりを本格的に感じる。それはエモいというよりは疲れたから早く家につきたいという感情だったけれども。
エモさはそれからの会話にあった。2人がバンドに入ってくれた時の話。
元々このYouth Youth YouthってバンドはTigerのクラスメイトの2人がいて(全員音楽は未経験)、残りのドラムがいない!ってことで有ちゃまにダメ元で頼んでみた。ダメ元っていうのは、有ちゃまはそういうのに積極的なタイプではなかったから。
有ちゃまに切り出したのは、有ちゃまとスミスの学校の文化祭の帰り。ライブすげーってなった後。
「ドラム、やってくれん?」
「いいよー」
その時は軽い感じだったからヤッター!って感じで。まさかだけど良かったって。バンドやってても周りの大人たちが1番すごいって、学生のレベルじゃないって褒めるのは有ちゃまのドラムだから、誘って良かったし俺にしかドラムの道へ進められたやつはいないって自負があるね(笑)。
でも実際のところは帰ってすげー悩んでくれたらしくて、そん時にはもうライブも決まってたし。ドラムかベースやりたかったし、なにもやらない人間よりはって最終決断をしたそう。悩んでくれてたのはシンプルに嬉しかった。
スミスがこのバンドに入ったのはクラスメイトが1人抜けてヤバいってなった時で。文化祭終わって2週間後くらいに、『ぼっち・ざ・ろっく!』ってアニメに触発されてギターを買って。でも一緒にやる雰囲気ではなくて、その時は。
それからまた2週間くらいして急にLINEが来て「バンドに入れてください」って。土下座マークまでつけて。それには二つ返事でOKした。
この裏話は、スミスが有ちゃまにどうにかバンドに入れてくれたりしないかなって相談して、有ちゃまが軽い感じで、今ギターいないしTigerに言えば即入れるでしょって背中押して。
スミスとは毎週末の朝に散歩する、パートナー的存在だったし。ちょうど誘おうとしててちょうど良かった。案の定スミスはめちゃくちゃドキドキしながらLINE送ったんだって言ってたけど、ギター上手いの弾ける要員がいてくれてマジでありがたい。有ちゃまが突出しすぎてるだけで、みんな上手いからね。音楽理論も機械のいろいろも、動画の編集もできる有能です。
ベースが結果的に抜けたからこの2人には感謝しかない。初ライブは俺以外風邪で欠席で、終わった後3人のグループラインから少しの間抜けた時もあって。スミスはグループラインなのに2人なの意味なくねって言ったけど、有ちゃまがあいつは帰ってくるって待っててくれたおかげで今も仲良く北九州まで行けて。
グループラインを抜けたのは嫌になったとかではなく、ひとり見直しの時間が欲しかったからなんだけどね。やっぱり有ちゃまは分かってくれてる!なんだかんだ1番分かり合えるヤツだよ。
パンクバンドで、Tigerはパンクとアニソンが好きで、スミスはj-popとk-popが好きで、有ちゃまはゲーム音楽やアニソンやボカロを聴いてて。バラバラだけどパンクが1番ライブじゃ盛り上がるよね!いい曲だしって付き合ってくれて。
忘れちゃいけないのがベースから脱退した、Youth Youth Youthを最初に作ったときにいた唯一の人物がロックやりたいって言ってたことで。それがなかったらたぶんバンドしてないし。
それぞれキッカケは違えど『ぼっち・ざ・ろっく!』でモチベーションをブーストさせつつ、ライブの期限が迫ってくる危機感で練習したり。このバカみたいな打ち上げが、最高なバカ共とチャリで執り行えたのはこういう裏があったんだって、Youth Youth Youthってインテリ高校生パンクロックバンドをこの記事でちょっとでも知ってもらえたら嬉しいです。
エモ
旅は誰と行くか。1人も楽しいけど、最高な仲間とバカ話してた方が何倍も楽しいんだ。
DAY3;Youth Youth Youth
生還。
でも小見出し通り3日目にかかってしまった。0時30分到着。犬鳴を抜けたときほどではないけど相当な疲労感が、これから数日間のひどい筋肉痛を予期させる。階段を上るのにも苦労しそうだ。
夢も覚えていられないほど泥のように閉じるまぶたに身を任せ、達成感と溺れるのだった。
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