【呻吟】ーーは真実を求め、現実を望む
その日も、なんてことのない日常だと思っていた。
あまりに平凡すぎて、この日常を物語にすることは、古今東西あらゆる文豪が集えども、難しいかのように思われた。
「真実と事実の違いをさ、優等生もどきはしってる?」
ーーには心なしか、影が差していた。まだ夕刻五時すぎだが、季節を感じさせる。
「わからないって、私が言ったら?」
「知らないワケじゃないんだな。優等生らしく、真面目に答えててくれよ」
「でも優等生もどき、だしなぁ」ツンとして見せる。この幸せな時間が、いつまでも続けばいいのに。
ーーと話すようになり、関係が深くなってからは、放課後の部活がない日、度々二人で話すようになっていた。
一緒に帰ることもある。
「真実は誰もがしらないかもしれないけど、不変的なモノで、事実は世間的に無難な常識とされているんじゃないかな。事実って時代や捉え方、マジョリティ勢力によってコロコロと変わる見掛け倒しのものだと、私は解釈しているのだけれど」
小説でよく使われる「事実、そうであるとしか言えない」という台詞は、皮肉と捉えられてもおかしくはない。
「そうだね。大体当ってる。でも・・・」
「でも?」
「そもそも、ヒューマンほど高次的に物事を思考する個体なんていない。それなのに、今現在、地球上に存在しているはずの俺たちが、現実という空間に存在しているかどうか、本当に意味で認識することはできてないなんておかしい。ここが仮想現実であったとしても、俺は納得しちゃうね」
そうだね、と返す。実際、かなり彼の考えには共感できた。
「そう、ここは仮想現実なんだ」真剣なカオをしてまだ言っている。
断言する彼に私が言えることは、「真実は分かんないけど、若さを武器にして、そのどうしようもないやるせなさに立ち向かえればいいよね」
ーーの神妙そうな面持ちは、夜に闇に溶け込むことなく、夜空とは異なった黒さを秘めていた。
そう、このカンケイもいずれ終わる。
だからこれは、結果的に何の変哲もない、ただの日常でしかないのだ。
思想強めなので、若干ビジネス小説要素あるかもです。いつかは『ユダヤ人大富豪の教え』みたいな小説を書いてみたい。
よろしくです。