【インタビュー】映画『距ててて』監督兼主演・加藤紗希さんと脚本・豊島晴香さんに聞く
みなさん、こんばんは🌙
東京国際映画祭 学生応援団です。
久しぶりの投稿は、2回に渡って映画『距ててて』についてのインタビューをお届けします!今回は監督兼主演・加藤紗希さんと、脚本・豊島晴香さんに、映画についてのお話を聞いてみました🎤
第1回目は『距ててて』という作品の制作経緯や、こだわりや魅力について伺いました。ぜひ、お楽しみください!
〇『距ててて』作品概要
『距ててて』のはじまり
ーー加藤さんはもともとダンスを中心とした舞台の活動をされていましたが、どのような経緯で映画を作り始めたのでしょうか。(たくみ)
加藤さん:2016年に振り付けと出演で関わった映画の現場があったんです。そこで映画をやりたいなと思ったのがきっかけで、翌年に映画美学校アクターズコースに入りました。入ってみると映画のことをどんどん知りたくなって、それには自分で作るのがいちばん良いかなと思いました。そこでアクターズコースの同期の豊島さんに声をかけて作ったのが短編の『泥濘む』という最初の作品です。
ーー加藤さんと豊島さんは、映画美学校でお知り合いになったんですね。(たくみ)
加藤さん:そうです。豊島さんとは映画美学校のアクターズコースで知り合いました。出演者も含めみんなそうなんです。しかも『泥濘む』に出ている人たちが全員『距ててて』にも出ているんですよ!
ーー『距ててて』は最初から『泥濘む』のメンバーで撮影しようと考えていたんですか。(たくみ)
加藤さん:そうですね。出演者と場所は最初に決まった状態で、そこから物語が出来ていったという感じです。
『距ててて』に出てくる人の魅力はどこから?
ーー『距ててて』、鑑賞して登場人物の面々がとても個性的だと感じました。キャラクター作りをするときに、役者自身の性格なども考慮しましたか。(たくみ)
加藤さん:基本的には俳優の魅力を活かすようなキャラクター設定だったり、関係性だったりを考えて作っています。
豊島さん:性格というよりは、佇まいな気がします。実際にこういう人たちであるというよりは、その人の立っている姿とか、ふとした瞬間に見せる姿とかから着想を得た感じですかね。
ーー登場人物たちの会話に独特な雰囲気を感じましたが、会話に対してどのようなことを考えていましたか。(たくみ)
加藤さん:会話のテンポ感は豊島さんのセンスだと思いますね。
豊島さん:間フェチみたいな、「間」が好きなんですよね。なので結構「…」とかも脚本に書いてます。
加藤さん:言い間違いとか言い淀みもあえて脚本に書いてありますね。「え」とか「えーと」とか。一言一句覚えてくださいとは言ってないので、テイクによって違うこともあるんですけど、でもそういうテンポ感に関しては、そういう脚本になっているからこそ実際に見えてくるものなのかなと思います。
ーー主人公のアコとサンのキャラクター性は、どのようなことを考えて創作したのですか。(たくみ)
加藤さん:私は人間にはすごい多面性があると思っているので、一辺倒なキャラクターにしないということだけ決めていました。
ーー人間の多面性を描きたいというのは、ご自身の経験からですか。(ともか)
加藤さん:人によってこういう自分が楽だなとか、この人の前ではこうしてしまうとか結構あると思うんです。本当の自分はどうなんだろうと考えたとき、全部本当の自分なんじゃないかなって。人間の多面性をそのまま表した人が映画のキャラクターにもあっていいんじゃないでしょうか。
豊島さん:私も全く同じ悩みを持って、全く同じ結論に至ったことがあるのでびっくりしました(笑)
第一章でアコとサンがふたりきりで夜に話すシーンがあって、その撮影をしているときにこの人(サン)めちゃめちゃアコに対して気を遣っているなと思ったんですよね。演じてみて、サンも自由奔放なところもあれば、すごく人に気を遣うところもある、きっと誰にでもそういうところがあるのかなと思いました。
『距ててて』に込められた沢山のこだわり
ーー『距ててて』と題名にあるように、人と人との距離感を意識して作られたんですか。(たくみ)
加藤さん:『距ててて』というタイトルは、実は編集後につけたものです。4章の物語すべてに当てはまるような言葉はないかなと考えて、思いついたのがこの言葉でした。でも、距離感とか時間のことはなんとなく描きたいってずっと思っていて……コミュニケーションの取り方って人によって全然違うし、コロナでどうしても近寄れないことってあるじゃないですか。自分自身そういうことを考えているからこそ、物語に要素として入ってくるんじゃないかなって思っていました。
豊島さん:テーマを持って書いたっていうよりは、自分たちの価値観とか今生きてる現状とかが結果的にこうなったっていう感じかもしれないです。
ーー登場人物の背景に深入りしすぎない印象がありましたが、これも人との距離感への意識からなんでしょうか。(たくみ)
加藤さん:なにより描きたいものが「人物」だからですね。その人の行動が不自然でなければ別に情報は開示しなくてもいいんじゃないかなと思っています。あとは想像してほしいという思いもあります。話さないことによって色んな広がりを持って、観客が想像することってすごく豊かなことだと思うので、あまり描き過ぎたくないっていうのはあります。
豊島さん:俳優の生身の体に立ち上げてもらった方が断然説得力があるだろうと思います。変に背景を決めるよりも、自分の体でその人のイメージで演じてもらったものの方が私は興味があるし、魅力的だなと思います。
ーー部屋の中の美術が印象的でしたが、こだわりはありましたか。(たくみ)
加藤さん:美術に関しては豊島リーダーが筆頭に頑張ってくれました!(笑)
豊島さん:もともとその家のインテリアがとても素敵なので、そんなに作りこまなくてもいいところもいっぱいありました。サンの部屋は、みんなで家にあるカラフルな要らないものを寄せ集めましたね。ポスター写真はすごくこだわっていて、各章に出てくるアイテムが色々置いてあります。
ーー濡れた足をタオルで拭くなどの日常的な動作が映画の中に散りばめられていましたよね。食事のシーンなどから生活感をすごく感じました(たくみ)
加藤さん:人間には生活っていうのが、みんなあるじゃないですか。物語でフィクションを描いてるけど、やっぱりリアリティをもたせたいって思いがあります。
豊島さん:脚本を書くとき、「こうしたらこうなるよね」っていうのは自分の身体で考えています。でも脚本に書いてあることだけじゃなくて、例えば汗拭きシートで身体を拭くシーンとかは、脚本には私が『着替える』としか書いてなかったんですけど、加藤さんが演じるときに夏に着替えるんだったら先に身体拭くよねと考えて、そういう細かい描写ができました。
ーー1日の時間の変化や季節の変化を映画の中から感じられましたが、時間や季節へのこだわりはありますか。(たくみ)
加藤さん:季節に関しては、コロナ禍での撮影だったことが関わっています。コロナのリスクをなるべく減らすにはどうしたらいいのか考えた結果、オムニバス形式にして、私たちふたりが中心となる話で、章ごとに少しずつ俳優さんに来てもらう形がいいんじゃないかとなりました。
さらに1カ月に2〜3日ずつの撮影にして、体調が悪くなったりしたらすぐに止められる体制にしようということになり、じゃあせっかくだから季節をまたぐような4章構成にしようとなったんです。時間に関しては、照明の西野さんがしっかり作り込んでくれました。実際の撮影時間は違うんですけど、早朝のシーンだったら、夕方の何時くらいに照明を当てたらできるかもみたいなそういうスケジュールを相談を重ねて理想の照明ができました!
ーーー第2回に続くーーー
いかがだったでしょうか?
話を伺っていて、映画を作ることの楽しさがものすごく伝わってきました。また、コロナ禍での撮影だったからこそ、映画に現れてきたものが沢山あったような印象を受けました。
第2回目の記事もお楽しみに!そして、ぜひ劇場へ足をお運びください🏃
〇【劇場情報】
・2022年6月10日(金)まで、東京/ポレポレ東中野で上映中!
今後の劇場公開予定
・2022年7月9日(土)〜 長野/上田映劇
・2022年8月 福島県/Kuramoto・いわきPIT
・2022年夏 兵庫県/元町映画館
・2022年夏 京都府/京都みなみ会館
・2022年夏 愛知県/シネマスコーレ
〇オリジナルグッズ情報
〇プロフィール
(取材/執筆・ともか、たくみ)