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【映画は映画館で。②】「アメリカの影」/やまと編

皆さん、こんにちは!
東京国際映画祭 学生応援団です。

今回も前回に引き続き「最近、メンバーが映画館で鑑賞した作品」というテーマで作品をご紹介いたします!

「映画は映画館で。」と題した今回の連載。
映画館へ足を運ぶことの楽しさや魅力と、それぞれの作品の情報や見どころを、メンバーそれぞれの個性がたっぷりと詰まった記事を通して、皆様に伝えられれば幸いです!!

第二回目は12期のやまと!(自分で編集しているので違和感がありますが。笑)
作品はもちろん、映画館の魅力もたっぷりとお届けしたいと思い記事を作成しました!是非最後までお読みください!!


はじめに

皆さんは「カサヴェテス」をご存知だろうか。

いつも学生応援団のnoteを読んでいただいている皆さんはもちろんご存知の「インディペンデントの父」ことジョン・カサヴェテスである。

「え?誰ですかそれは」という人ももしかしたら、、、いや、むしろ学生応援団のメインターゲットである若年層の方の多くは、こういった気持ちかもしれない。
実際、恥ずかしながら私自身もカサヴェテスを知ったのは、自分が映画を作りたいと思うようになってからなので、1〜2年程前のことで、今回見た作品を入れても2本しか鑑賞できていない。(もっと鑑賞したい!!)
ので、一人でも多くの人がこの記事を通じて、彼と彼の作品を知る・鑑賞するきっかけになればと思う。

ジョン・カサヴェテス レトロスペクティブ リプリーズ

そんな俳優としても監督としてもとてつもない功績を残し、後の多くの映画人に影響を与え、「インディペンデント映画」の礎となった孤高の映画作家ジョン・カサヴェテス。SNSで特集上映が行われていると知り、「これは絶対に劇場で見たい!」と思い、東京・渋谷シアターイメージフォーラムに足を運んだ。

宮益坂を登り青山通りを渡り、、、
2本目の路地を進むと、、、
到着。カッコいい外観。

シアター・イメージフォーラム

実はこの劇場に来るのは2回目であったが、鑑賞は初めてだった。
館内・フロントにはたくさんのフライヤーや特集上映のポスター、紹介記事の切り抜きに溢れ、ミニシアターならではの魅力満載。この時点で私のワクワクはかなり高まっていた。

館内にはたくさんのフライヤーが階段に積まれている
カサヴェテス特集用の批評や記事の切り抜き。劇場に足を運べば作品をより一層楽しむことができる!


特集上映ポスター(素晴らしいデザイン)と半券と。

あらすじ

原題は「Shadows」
ヒュー、ベン、レリアの3兄妹はマンハッタンで暮らしている。売れない歌手の長男ヒュー、トランペット奏者を志しながらも無気力で刹那的な生活を送る次男ベン、ひっかりものの妹レリア。彼らは混血児でヒューは黒い肌、レリアは白い肌、ベンはその中間のような浅黒い肌をしている。ある日妹レリアは白人の青年トニーと出会う。レリアにとって初めての男性であったトニーは、レリアのことを傷つけてしまう。トニーは彼女を宥めようと家まで送っていくが、黒い肌の兄ヒューと対面し、あからさまに困惑の表情を浮かべる。ヒューは妹をこれ以上傷つけまいとトニーを追い払う、、、。三兄妹それぞれのエピソードが展開されつつも、3者が時折交錯し、物語が進んでゆく。群像劇的構成と即興演出で創られた、カサヴェテスの処女作。

作品を鑑賞して

一言で述べるなら「自分は言葉にできない何かとても"スゴいモノ"をみたのでは、、、」という感覚を覚えた。

作品内容の事前情報を一切遮断して鑑賞したのだが、正直なところ、途中まで「一体何の話をしているのだろう」という気持ちでいた。
それは作品全体を通して独特のリズム(編集や即興演出によるお芝居、それを治めるための撮影や照明によるものなのだろうか?)が有り、また、群像劇的構成で登場人物の名前や行動の一致を図るのが難しいという要素からなのだろうと考えていた。
しかしながら、あらすじにも記載したが、レリアが白人男性トニーに出会い、その後ヒューと対面するシーンを見た時、一気に作品の"流れ"が脳に入り込んでくるのと同時に、それまでの違和感に気づき衝撃を受けた。この作品は確実に「人種や民族の多様性・共存」をテーマの一つに置いている作品なのだが、私はそれを冒頭から受け取ることはできなかった。
要因として「彼ら三兄弟が"兄妹である"という事実関係」を深層心理的に脳が受け取っていなかったのかのしれないという仮説が浮かび、衝撃を受けた。その意味では、困惑の表情を浮かべた白人男性トニーと私自身に何の差があるのだろうと考えてしまった。

作品全体としてはいわゆる「人種(民族・多様性)についての映画」というよりも「他者(異る者)」との関係性についての映画」だと感じた。それは男と女なのかもしれないし、裕福な人と貧しい人かもしれないし、黒人と白人なのかもしれないが、「違い」に対してのそれぞれのアプローチと感情の動きがとても印象的だった。

エンドロール間際、「ご覧になった作品は即興の産物です」という一文が出る。(パンフレット参照)この作品はその文の通り「動き」に関して即興的演出で創られており、その制作過程やパイロット版からの変遷等「監督」もしくは「製作者」としてのカサヴェテスの顔を知って振り返るとさらに楽しむことができると思った。

インディペンデント映画そのものの成立と深く関わり、その成立に大きく貢献したカサヴェテス。初期衝動、もしくは彼のクリエイター精神の塊とも言える本作品を映画館のスクリーンで見ることができ、とても大切な鑑賞体験になったと思う。

パンフレットは必読!

ここまでお読みいただきありがとうございます!

今回ご紹介したジョン・カサヴェテス氏は今年の東京国際映画祭の審査委員長を務めるヴィム・ヴェンタース氏をはじめ、濱口竜介監督や昨年のTIFFにも選出された「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱監督など、様々な映画監督や映画人に敬愛されてきた素晴らしい映画作家です。

ジョン・カサヴェテス レトロスペクティブ リプリーズはミニシアターを中心に全国で公開中。ぜひスクリーンでご覧ください!

今年のカンヌ国際映画祭では役所広司さんが「PERFECT DAYS」で主演男優賞を獲得しました。監督を務めるヴィム・ヴェンダース氏がコンペティション部門の審査委員長を務める今年の第36回東京国際映画祭は2023年10月23日(月)〜2023年11月01日(水)の10日間です。ぜひご来場ください!!

企画/13期田巻
執筆・編集/12期相馬


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