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百年文庫71 娘
わかりやすいテーマで、読みやすいものが多くて良かった。個人的に結構好きな話が多かったな。
片意地娘/ハイゼ
「海は僕たち二人の場所だ。」-美しい娘ラウレラの心を開いたのは若き船乗りだった。色彩豊かな南イタリアを舞台に描かれた、清らかな恋の物語。
ラウレラが意固地になる気持ちもわかる気がする。変に周りから構われる苛立たしさ、自分に本当に関心があるのか「若い女」という概念として扱われているのかがわからずに皆同じという怒りをずっと緩く燃やしている感じ、短い言葉数でもラウレラの心の動きが伝わる描写力で後半の展開も急展開のように感じない。
ハイゼ、名前だけは聞いたことあるような、というくらいでドイツ文学とは知らなかった、と思っていたらドイツ作家として初のノーベル文学賞受賞者だったらしく、単に私が無学なだけでした。読みます。
幽霊花婿/W.アーヴィング
ドイツの山深い古城では、盛大な婚礼の準備が進められていた-。予期せぬ花婿の死から始まる異色作。
結構序盤の話の展開は暗いけど、全体を通すと楽しいオペレッタみたいな印象の作品。幽霊花婿というタイトルもその雰囲気を出しているのかも。
すごくドイツ民間伝承の雰囲気を色濃く出しつつも、100%民間伝承だな、という擬態ではなく作家の個性も感じられてバランスが良い。
余談だけど、「リップ・ヴァン・ウィンクル」や「スリーピー・ホロウの伝説」がアメリカの作家によるものだったと今回初めて知った。
ほれぐすり/スタンダール
資産家の夫との人生を投げ打ち、若き曲馬師を選んだレオノール。恋の激情に身を任せた娘の逃避行。
スタンダールぽいなと思ったら本当にスタンダールだった。こういうタイプの激情的な女性の物語を書く作家って、多そうで意外に少ない気がする。
唐突な終わり方が好き。作中に描かれていない部分が多すぎるレオノールの人生に思いを馳せてしまう。
作中に一切出てこない「ほれぐすり」というタイトルもいい。