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「High Tech Highに学ぶ プロジェクト型学習の授業デザイン研修」

High Tech HighでのPBL(Project Based Learning)について、平岡慎也さんの研修に参加することができた。生身の感覚を伴った熱量に触れ、大変貴重な経験となった。以下に学びや気付きを記したいと思う。

受講前の探究学習・PBLへの理解

 改めて探究学習の定義はきちんと言語すべきだな、と思いつつ、PBLは探究学習の目的を達成するめの手段の1つという認識であった。そこは概ね間違いないという基本的なところから話をいただけスッキリとしたスタートを切れた。

「問いを立てる能力」とは?

 探究学習の必要性を語る上で最もよく言われるのが、問いを立てる能力を養うことが必要ということ。VUCAと言われるこれからの時代、言われたことをこなすだけではなく、自ら問いを立て自ら動ける人を育てなければいけない、というのが主眼となっている(この文脈でいうとアントレプレナーシップ教育も目的は同じ)。
 では、問いを立てる能力とはどのようなものか?私は『世の中の常識や当たり前に、自分自身の価値観という、他者を介在しない独自の視点を加えることで新しい気付きや疑問を得る能力』と捉えている。という風に捉えている。そのためにも、まずは自分自身の価値観・原体験を知ることが大切という考え。
 この辺りの考えも聞けるかな、と思っていたのだがPBLは課題を与え、それを解決することで学びを得る手法なので、どちらかというとその先のお話だった。しかし、学びを最大化するための問いに対する姿勢は大変勉強になった。

当日の学び・気付き

1.意外と多くの制限をかける

 PBLと聞くと生徒に主体を渡すので自由度が極めて高いのかと思っていたが、意外と多くの制限をかける。これは意外だった。話を聞ききつつ考えを巡らせてみた。
 日本の授業は、知識伝達型授業に偏らざるを得ない。その中でいかに生徒の自由度を増し、主体を渡し、個別化するかという方向で改革・改善を考える。対してHigh Tech HighのPBLではEssential Question、Core Contentを大切にする。どのようなことを学んで欲しいのかはきちんと設定されている。その中で生徒に自由を渡しすぎると、学びがぼやけたりフラフラしてしまう。そのため上手に制限をかけ、生徒が主体的に学びつつ目的を達成できるようデザインする。
 授業デザインを考えていく上で真逆の発想なのが面白い。伝えたいものが「知識」なのか「学び」なのかの違いかな?

2.結局システムの違いが大きい

 PBLのような教育は大切だ!という声は日本でも大きくなりつつある。しかし、なかなか広がらないのは受験の存在が大きい。細かい知識やその使い方を問うようなペーパー試験重視の大学入試。上述した通り、これが主流である限り知識伝達型授業に偏らざるを得ない。
 本当にそのような力が「学力」なのか、という根源を真剣に考えていきたい。その視点から見ると、私は「総合型選抜」の広がりに希望を持っている。

3.PBLチューニングの面白さ

 初めて体験した「チューニング」という考え方。中でも「ディスカッション&傾聴」の時間は面白い。自分の考えた授業デザインについてプレゼンした後、参加者同士で自由にディスカッションしてもらう。その間、本人は傾聴に徹し、一切口を挟まないのがルール。
 聞いていると「そこはそうではなくて!」と口を挟みたくなるが、そのズレが修正されることなくディスカッションが進む。もどかしい思いをしつつ、この説明では他者はそう捉えるのか、と非常に分かりやすい。
 PB Lでは主体性が重視されるがゆえ、ここをきちんと伝え切らないと生徒の学びの方向性が狂ってしまう。これが可視化されやすいと感じた。

日本の教育への疑問

 平岡さんの作りが非常に上手く、PBLの授業デザインの流れがよく分かりイメージが掴めた。またHigh Tech Highが試行錯誤を重ね作り上げているPBLデザインが秀逸であることも実感でき、ここは自分の授業デザインにも反映できる部分もあると感じた。わずか半日でここまで学びを深められた有意義な研修であった。
 一方で、日本にはあまりないタイプの教育を見させていただいたことで改めて現在の日本教育、自分の関わっている教育に疑問を持つことにもなった。大学受験の問題が一番大きい。例えば高校数学。数学Ⅲのレベルなど相当なものだ。数学に興味のない生徒が、ここまで理解せねばならないのか。自分の興味のある分野、やりたいことであれば努力はできる。それを見つけるのが先ではないのか。
 日本では「知識がないと応用はできない」ということで、先は分からなくともまずは知識を詰め込む。対して、PBLでは学ぶために課題(Project)を制作していく。自然と、自分に向き合うことになる。自分の興味・関心を見つけることに繋がり、学ぶことの楽しさを感じることも多いだろうと想像する。
 自分自身スッキリと理解しているとはいえない。これからも考え続け、動き続けることが必要だ。

最後に

 本当に良い機会を頂いた。企画していただいたCAN!Pさんは、福岡で民間学童保育、探究学習塾、英語スクールなどをされており、来年からオルタナティブスクールを開校する。子どもにとって必要な教育とは?を真剣に考え、常にチャレンジをしている信頼できる方々。ご興味のある方はぜひご連絡してみてください。


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