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雨女は雨のせいじゃなくても帰れない~柄物ネキ神戸をゆく

※下の方に「どうかしているとし課」が爆誕しました!


自他ともに認める雨女である、というようなことを以前書いた。

そう、わたしは寿司柄雨ネキ


ジャングル柄のワンピースを身にまとい、神戸空港に降り立ったとき、真っ白な雲は空のずいぶんと低い位置まで垂れこめていた。
海はそんな陰鬱な空の色を反映し、鈍くとぷんたぷんと揺れている。
機内で聞いた「神戸、現地の天気は晴れ」のアナウンスは一体何だったのか。
同行していた夫が呆れ2割、ふざけ8割といった調子で

「困りますね。降りたらスーツケースから傘出さないとダメじゃないですか」

と言った。
わたしは雨女のくせに傘を忘れてきたことに、そのとき初めて気がついたのだった。
そして機内アナウンスで知った旅先の天気と、実際目にした空の色が全く違うということにデジャブを覚えていた。
わずか3週間前に、同じことが羽田空港で起きていた。
雨女は出力の調整は出来ないけれど、力を発揮することに関しては一切の妥協を許さないのである。

旅に出る時は大抵単独行動なのだけど、今回は珍しく夫婦揃っている。
わたしが「そうだ、◯◯に行こう」と思い立ったらすぐに出かけていく尻軽女であることと反対に、夫はできることなら外に出たくない、引きこもり体質である。
そんな夫婦だから、一緒に飛行機に乗るのは実に十年ぶりのことだった。それも、義妹の結婚式という半ば強制された行事のために出かけた時のことである。パグ姉妹を迎えたために、夫婦揃っての旅行というものからますます遠ざかっていた。
前日まで台風が立て続けに来ていたり、巨大地震注意報が出ていたりした。
不安を抱えながらの準備となったけれど、無事たどり着くことができた。

1日目はわたしの用事、2日目は夫の用事と順調に行程をこなしてゆく。
1日目は「あれ? 降ってきた?」と思う瞬間はあったものの傘をさすほどでもなく、問題は起こらずにすべての目的を達成した。
湊川神社でお参りをしてから引いたおみくじは、わたしにとって、とても良い兆しのものだった。
もう夫を神戸に置いて今日帰ってもいい。そう思った。

前にコニシさんに何かで「旅行記は柄が見切れてるのがポイント」って言われたので実践してみている
夫も見切れている


2日目は夫の用事ということもあってか、天候にも恵まれすぎているほどに恵まれ、蝦夷地の民には過酷とも言える環境の中の行軍となった。
関東の台風一過の暑さというのは、近畿地方にまで影響するものなのだろうか。
それでも先月末の東京よりはいくらかはまし。日陰に入り風が吹くと、少しだけ汗がひく。
立秋を過ぎてお盆を迎えると、やはり少しずつ秋に近づいていくのだな、ということを普段なじみのない旅先でも実感する。
この日はヒョウ柄スカート。写真は撮り忘れた。
#どうでもいいか


休憩がてら遅めのランチを摂っているときに、ANAのアプリからプッシュ通知が届いた。
我らが新千歳空港で保安検査がストップし、機材繰りのために欠航・遅れが生じているとのことだった。
もし帰れないということになったら……。
前日に泊まったホテルに空き部屋がないか確認をする、ダメならとりあえず何とかして東京あたりまで行きホテルを探す、最悪空港で一夜を明かす。
どうかするとこの辺りになるかもという覚悟を決め、神戸空港へ向かった。

わたしの旅は、新千歳空港到着後に一幻のラーメンを食べることで完結する。そう決めている。だから、帰りの便はラーメンにありつける時間のものにする。
今回も当然のようにそうしていた。

だけど、乗る予定だった神戸から新千歳の便は、結局1時間35分遅れの出発。
前回の羽田からの帰りの便も、空港上空に雷雲が発生したために1時間遅れとなった。
2回続けて一幻のラーメンを摂取し損ねたことになる。
今回はわたしの雨女としての能力とは一切関係ない遅延だ。ラーメンを与えまいとする何か強大な力を感じる。
ふと、前の日にひいたおみくじのことを思い出した。
良いことしか書いていないおみくじの中に、それでもうっすらとした陰のような言葉はあった。
おみくじの本質というのは、このような陰の部分にあるのかもしれない。

「旅行 よろしいが連れの人に注意する事です」

連れの人、というのは夫のことで間違いない。
妻であるわたしが言うのもなんだけれど、夫は外食に特化して地味な不幸に見舞われがちな人である。
ご飯を食べに行くと、夫の注文だけが厨房に通っていないという現象が一般にはあり得ない頻度で起こる。
料理が届いても食具が届かないこと、異物混入、スープカレーにメインの具材が入っていないこと、ハンバーグカレーを頼んだのにカレールウがかかってないこと、夫の頼んだネタだけいつまでも握ってもらえないことなどなど、枚挙にいとまがない。
果ては披露宴の時に新郎の足元にあるべきバケツがなく、注がれるアルコールを全て摂取する憂き目にあったこと。
義母も「この人子供のころからそうなの」と言っていたので、そういう星のもとに生まれてきているのだろう。
本人も半ば諦めて「ちゃんと食べられるものが注文通りにみんなと同じタイミングで出てくるのが奇跡」「自分のせいだから店に文句は言わない」という始末である。
今回は「ラーメンを注文したくても注文できない」という夫のさだめが形を変えて現れた、ということなのだろう。

次に飛行機に乗るのはそう遠くない未来だと思う。
そのとき、わたしの一幻チャレンジは果たして成功するのだろうか。
空港にラーメンだけ食べに行く、というのは何だか違うのだ。旅を北海道のラーメンを食べることで終える、そのことに価値がある。
とにかく誰でもいいからわたしのラーメンを返してほしい。

と、つい文句ばかりを書き連ねてしまったけれど、日がすっかり落ち切ってからのフライトである。
前の日にホテルの屋上から見た夜景も素敵だったけれど、大阪湾をぐるりと囲む光の帯を一度に見渡せるというのは地べたから離れた者の特権。
どんどん遠ざかっていく白く光る街、というか一帯を、首が痛くなるまで見送った。
そこだけが暗闇の中にくっきりと浮かび上がって、星空をちぎって貼り付けたみたいだった。ぱつっとハサミで切られたように光の群れが海岸線に沿って潔く途切れるさまと、山肌に沿って徐々に暗くなっていくさまとの対比。
坂の多い港街の風景をいくつか見知っているけれど、神戸はその規模もエネルギーも桁外れである。
お盆休みの終わりという時期も相まってか、花火大会が行われている様子も見てとれた。
ちょっと前に『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』という作品があったけれど、わたしは夜空に腰掛けて上から見下ろすという稀有な経験をすることができた。
それだけで、「連れの人に注意する事です」と言われる旅もよかったなと、帰ってきてみればしみじみ思うのである。

笑顔がまぶしい

パグ姉妹は実家に預けていた。
帰省していた弟夫婦にいいだけ遊んでもらい、婆からは「父さん母さんには内緒だよ」と大量のおやつ(きゅうりやトマト、桃など)を与えられていたという。おかげで両パグ共に下痢気味だった。
パグ姉妹はパグ姉妹で甘やかされて良い思いをしていたようなので、たまには夫婦で出かけるのも有りかもしれない。くれぐれも、おやつの量には注意してもらって。
旅行中、弟から「ドッグラン連れてった」となぜかわたしではなく夫のほうに連絡があり、楽しそうにはしゃぐパグ姉妹の写真が添えられていた。
弟よ、そこは我が家の庭ではないか。
体力が赤ちゃんレベルのもねは疲れきり、義妹に抱っこされて帰ってきたとのこと。
姫待遇である。羨ましい。

さて、noteも仕事も夏休みは終わり。
とはいえ、2学期開始まではもう少し時間がある。気温の様子を見て、趣味のひとつであるお弁当作りを再開した。
コニシさんの記事を読んでいたら、甘めの卵焼きを作りたくなってしまった。
蜂蜜と本だしだけのシンプルな味付けがじんわりしみる。
お昼が楽しみだなと思って出勤したら、管理職に「あれ、めぐみさん今日まで夏季休暇の申請出てるよ」と言われ、自分の予定もろくに把握していないことが露呈した。
2学期に出勤するのを忘れそうなので、誰かわたしに毎朝「出勤日だよ」と教えてくれないかな、と思っている。

鳥の照り焼きは砂糖の代わりにマーマレード


⬆️卵焼きってお弁当以外で食べたことない気がする。

《新設》路地裏案内所「どうかしているとし課」

「どうかしているとし課」は、「なんのはなしです課」「どうでもいい課」の並びの斜向かいにある日突然爆誕しました。
思いつきでやらかした「お留守番のタツー特集号」の解説が思いの外好評だったので、調子にのったわたしが誰かのどうかしているとしか思えない記事を勝手に解説・案内する課です。
わたしは楽しい、解説された人は場合によっては刺されて痛い、そんな部署を目指しています。マゾ向けです課
解説される人はロジウラーの中からわたしの独断と偏見で決めます。
#どうかしているとしか は自由にお使いください。回収はしません。
さてさて「どうかしているとし課」新設、記念すべき第1回めの犠牲者は……マイ汚フレンドマイトン👓!

毎週ショートショートを投稿しているマイトンさん、今回も安定してどうかしているとしか思えません。登場人物に特徴的すぎる全身タイツや水着を着せてちがさきサザンビーチに沈めたり、海女さんにゆらゆらとわかめを取らせたり、唐突に「I love LONDON」マグネットが登場したり、わたしには全部の意味が分かるんだけれど、たとえばググって記事にたどり着いたような人には全く訳のわからないことになっていて非常におかしな具合です。
#どうかしているとしか

寿司柄女がキノコ男とイチャつけるか、ということについては再考の余地がありますね。寿司柄女はキノコ男を神のように崇拝しているということは、まともに顔を見られない可能性があります。直視したら目が潰れると思っているのではないでしょうか。少なくとも推しの顔をまともに見られた試しがなく、ライブでも1桁番のチケットを持っているのに最前を避けたわたしはそうです。そういう人間にとって、崇拝対象に存在を認識されるということは、すなわち死を意味します。そもそもキノコ男は本当に人間なのでしょうか。寿司柄女は「柄」と明言されていますが、キノコ男はキノコですからね。狼男、雪男、人面電車男……どれも人間ではない気がします。キノコ男もキノコのUMA、もしくはゆるキャラなのではないでしょうか。
#なんのはなしですか
#どうでもいいか


ここでお知らせです。
次回の「柄物ネキ◯◯をゆく」は、「マイトンと行く🩷茅ヶ崎・伊勢原」。
放送は来年1月頃を予定しています。冬の茅ヶ崎サザンビーチでゲストのマイトンさんとキャッキャウフフの水遊び🩷 たくさん遊んだあとは、山の湘南で温かいきのこ汁をいただきます。
お楽しみに。


路地裏への招待状✉️🕊️

路地裏の住人こんなに増えてるの……?
いなくなった人もいるとか体感減ってるとか嘘でしょ?
コニシさんがお休みに入ると物足りないんだけど、お休みに入ったらどんな好き勝手をしようかなあと考えてワクワクしているので、本当に業の深い界隈だなって思ってる。