見出し画像

【連載小説】星の下で vol.15 「跳び箱」

次の週もレンに会いに来た。

「レン、今日は体育で跳び箱があったよ。昔レンが見せてくれた一回宙返りをしたかったばってん、うまくできんくてこけちゃったよ。おかげで、ほら、たんこぶができたつたい。触ってもあんまし痛くはないんだけどね、ちょっと恥ずかしいよ。

今日の給食はカレーだったばい。あとはフルーツヨーグルト。フルーツヨーグルトはじゃんけんで負けておかわりできんかった。

掃除は久しぶりに渡り廊下だったけん、久しぶりに滑って遊んだばい。女子からは非難ごうごうだったばってんね。竹中由起子覚えとるかな?その竹中みたいな感じで、女子が怒るったい。「先生、男子が掃除しません!」

ってね。僕らは先生がいる間だけ真面目に掃除したよ(笑)

今日も秘密基地は健在。少しおもちゃ類を整理したばい。もう使わなくなったのとかはゴミに出した。レンのおもちゃは捨ててないよ。熊本ファイヤーズは永遠に仲間だけんね……

それにしても、最近女子が「男子が、男子が」ってうるさいつたい。なんでも言いつければいいと思ってるみたいでから。困ったもんばいね。」

私は話終えると、花瓶の水を換え

「また来週ね」

と言って病室をでた。すると、ちょうどレンのお母さんと出会った。

「翔くんありがとうね……」

おばさんはとても老け込んで見えた。そりゃ仕方ないだろう。一人息子がこの状態、でも自分が働かないと病院代も払えなくなる。私は思わず

「大丈夫ですか?」

と声をかけていた。

「なんとかね……翔くんはいつも来てくれて、レンも楽しいと思うの。これからもレンのこと忘れずにいてね……」

忘れるはずがないじゃないか!!

おばさんにお辞儀をすると、私は一目散に駆け出した。

私は、私だけはレンをわすれずにいよう、そう思った。

いいなと思ったら応援しよう!

ちびひめ
よろしければサポートをお願いします。 生きるための糧とします。 世帯年収が200万以下の生活をしています。 サポートしてもらったらコーラ買います!!コーラ好きなんです!! あと、お肉も買います。 生きていく・・・

この記事が参加している募集