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【連載小説】俺様人生 vol.16「カメラ」

アスカの具合は日に日によくなっていった。

やはり仕事自体がストレスのようだ。


俺はいくつか会社の面積に行ったが、全部だめだった。

落ち込む俺をアスカが手作り親子丼で励ます。


実は前のアパートは、独り暮らし専用だったためか、IHのコンロが一つしかなかった。台所も狭く、とても料理できる環境ではなかったため、普段はセブンイ○ブンのお弁当か、ダーツバーで食事をとっていた。

だから、アスカがこんなに料理上手だなんて知りもしなかったのだ。

特にアスカの作る親子丼は絶品だ。


俺は親子丼を食べながら、明日こそは!と意気込んだ。


そんなある日、アスカがSNSで知り合った仲間がバーベキューをするので行きたいと言い出した。

俺は人付き合いは嫌いだが、アスカはとてもそういうことに積極的だ。

これも病気を治すいっかんだと、俺たちは参加することにした。


バーベキューはアスカの職場近くの河原で行われる。

俺たちも早めに行ってセッティングを手伝おうと、早めにいったのだが、なんだか別の団体もバーベキューをするらしく、俺たちはしばしそちらの団体に紛れ込んでいた。

みんな知らない人ばかりで、不思議そうな顔をしていて、違和感があった。


そのうち、アスカにメールがきて、違う場所だということがわかり、俺たちは赤面しつつその場を離れる。



ようやく自分たちの目的地へつくと、まず挨拶を交わした。

人のよさそうな小太りの青年、この人こそがアスカのSNSでの知り合い東くんらしかった。

人といるのが大好きな癖に人見知りするアスカは、なかなか輪に入れずにいた。

人数は総勢10名程度。

アスカは俺がそばにいるからなのか、主催の東くん以外から話しかけられることはなかった。

そこに、一人の少女があらわれた。

すごく細くて小さいのに、大きなバイクに乗った少女。

彼女も人見知りらしく、他の人にあまり絡んでいかなかったが、アスカが積極的に話しかけ、ようやくアスカに話し相手ができた。

名前は諭吉。もちろんハンドルネームだ。

細くて小さな彼女は、未成年とおぼしき感じだが、タバコを吸っていた。

まるで小さなアスカをみているような錯覚を覚える。

アスカも若いときはこんな感じだったんだろうな、という感じ。


二人が仲良さそうにはなしていたので、俺の緊張もほぐれていった。


東くんは、バスケットボールをするらしく、今日の集まりもその一環だそうだ。

女子ばかりなので、東くんは俺に話しかけてくる。

俺が無職だと言うと、バスケットの手伝いをしないかと誘ってきた。

実は俺、中学の時バスケ部だったんだよね。

進学校に進学を目指していたから、体力つけるためだけにやっていたんだけど、これも何かの縁、ということでバスケットの手伝いをすることになった。


「宴もたけなわですがー」

東くんの声が響き渡る。

「これにて、一旦バーベキューを終了したいと思います。」

みんなから拍手が送られる。

もちろん俺たちからも、だ。


俺は東くんの連絡先だけは聞いておいて、片付けに入った。


「楽しかったね」

「うん!諭吉とたくさん話したよ!」

「よかったね」

「うん!」

アスカはとても楽しそうだ。

よかった、連れてきた甲斐があった。


帰りの道中、俺がバスケットの手伝いをすることになったことを報告する。

「よかったね、レンくん。やっぱり人の繋がりって大事だよね」

アスカは両手ばなしで喜んでくれた。

「で、なに手伝うの?」

「パソコンでサイト作ったり、あとは写真と動画を撮ったりかな」

「レンくん、写真撮れるの?」

「うーん、なんとかなるだろ」



アスカの様子がこの頃変だ。

何かを隠している。

なにを隠しているんだ…。

自己破産申請中にまた借金でもしたら、全ておじゃんだ。

何を隠している……?


答えはすぐにわかった。

アスカは俺がバスケットの写真を撮るためのカメラ代を貯めていたのだ。

「じゃーん!!」

十万円を差し出すアスカ。

俺が毎日カメラの値段をチェックしていたのを横から見ていたらしい。


今は机とテーブルを2つずつ買って、俺のパソコンデスク、アスカのパソコンデスクとが横並びになっているのだが、横から見て欲しい機種をチェックしていたらしいのだ。


パチンコも我慢して行かず、まぁ、これは毎日俺がいるから当たり前だけど、お金を貯めたらしいのだ。


俺はありがたく頂戴すると、欲しかったカメラを購入した。

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