【連載小説】俺様人生 vol.11「アスカの秘密」
アスカがバツイチの子持ちと言うのは最初の段階で聞いて知っていた。
だが、普段のアスカについてはそう気にしたことはなかった。
ハニタンちと俺んちの往復だけだと思っていたから、特に何も考えてなかったし、アスカが苦しんでいることなんて、ちっとも知らなかった。
アスカは借金を抱えていた。
それはギャンブル、主にパチンコ、パチスロで作られた借金だった。
アスカはそんな状況でもギャンブルをやめられず、ギャンブル外来に通院していた。
俺はうつ病で、とだけ聞いていたので、ショックはでかかった。
今はギリギリ役所にも仕事で行くけど、休むことの方が多い。
俺の父親は国家公務員なので、年休については多少知識があった。
アスカは休みがとても多かった。
朝から仕事に行ったと思っていたら、パチスロをしていたり、ということが頻繁にあったらしい。
借金はやがては一千万という数字だ。
公務員だからこそできる数字だ。
いつも明るいアスカからは想像もできない話だった。
話はアスカから聞いた。
その日のアスカは変だった。
家にいても気はそぞろという感じで。
実はその日は借金の返済日で、アスカはいつもクルクルといろんな金融会社に返しては借りてつぎの金融会社にもおなじことを繰り返していた。
そのことを話してくれるまで、ものすごい時間を要した。
俺は、通院先でやっている、ギャンブルの家族勉強会などにも積極的に参加した。
アスカは、重度のギャンブル依存症という病気なのだ。
道理で金遣いが荒いと思ったらそういうことだ。
俺は覚悟を決めた。
アスカがよくなるまで、俺はそばにいよう、支えていこう。
アスカが泣いている。
「返せない……」
一件一件潰していくには金額が大きすぎた。
俺は今使わずしていつ使うという、パソコンの情報収集能力を多大に発動した。
結果、任意整理か自己破産か、どちらかを選ぶことになった。
アスカは家にお金をかなりいれていた。
家庭がうまくいっておらず、ハニタンちや俺んちに泊まり歩くのもそのせいだ。
家の人間は、一度労金でまとめた3百万のことしか知らなかった。
だから、家にお金を入れることを強要した。
アスカは自由奔放に過ごしているのではなく、家に帰りたくないからそうやってすごしているんだとわかった。
この頃、アスカと俺はダーツにはまっていて、週に三回ほど通っている店があった。
ギャンブルより健全でお金を使わない、ダーツならばいいかなと思い、週に三回ほど山を下って通った。
それでもアスカのスロットは止まることを知らなかった。
一度など、あんまりスロットに寄りたいと言ってきかずに、俺は怒ってパチンコ屋に入ろうとして乱暴に駐車場に入ったら、出てくる車と衝突したことがあった。
俺は近所の警察署に事故の届け出にいくと言ったら、
「スロットして待ってる」
と言い張ってスロットをしにいったほどだ。
スロットのことではよく喧嘩した。
どうしても行きたいと言うのだ。
家から脱走して、20キロ先のパチンコに行こうとしたこともあった。徒歩で。
ホントに無茶苦茶だ。
しかも、あまりに休みすぎるので、病欠を長くとらないかという話まで出てきて、結局休むことになるアスカ。
あまりいい傾向じゃない。
俺は思いきって、自己破産をしてみたら?
と声をかけた。
アスカもまんざらじゃなかった様子で、信頼できる上司に相談してみる。
と言った。
上司に聞くと、役所にはたくさんの自己破産者がいるから、安心してがんばれ、とのことだった。
俺は手続きなどをどうしたらよいか、病院に相談しながら進めた。
大きな第一歩だった。
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