【連載小説】俺様人生 vol.29「エピローグ」
マサトを入れて毎日が回りだす。
マサトは結婚式のみの担当――俺が元々そうだった――だから、平日はアスカと二人で葬儀の仕事をこなしていく。
100キロくらい離れた葬儀屋からも依頼が入るので、移動が大変だ。
この仕事を始めたら、年中休みなしになってしまった。
アスカにも申し訳ない。
アスカはそれでもご飯を作って待っていてくれる。
一年ほど経って、ようやく月曜日を定休日にする。
それでも葬儀は入ってきてしまうので、マサトに店番をしてもらう。
将来的にはマサトに葬儀も手伝ってもらうかな……と思う。
俺がそうだったように。
月曜日はアスカの通院日でもある。
アスカを病院に連れていき、待ち時間にミ○ドに行ったりする。
通院のない日は映画にも行く。
俺は元々映画は苦手だ。
狭い席に座らされて、面白くもない映画をひたすら見る。それは俺にとって無駄な行為に他ならなかった。
だから、アスカも慎重に映画を選ぶ。
三谷○喜の映画なら外さない、と言われて一緒に見に行く。
確かにこの監督の作品は外さない。
なかなか面白い。
映画もたまにはいいんじゃない?という気分になる。
しかし、間に挟むB級映画のせいで、相変わらず映画嫌いなままだ。
ショッピングにも行く。
主にウィンドウショッピングなのだが。
お金ならあるのだから、好きなように使っていいと言っているのに、アスカは素朴なままだった。
これには一つ事情があった。
アスカは役所勤めのときに、役所の共済組合の保険に入っていた。車もしかり。生命保険もしかり。
役所をやめたとたんにそれは解消され、車こそ俺の保険の適用が効くが、生命保険にはうつ病のせいで入ることができなかったのだ。
以前入院したとき、高額医療の手続きのおかげで八万円で済んだが、八万円はうちにとっては大打撃だった。
ICUに入ったときはそれだけで三万円以上が消えてなくなった。
そういうわけで、貯蓄に回すようにしていたのだ。
アスカはお金がある今はパチンコに行かない。
夢が現実になる瞬間。
俺は俺の夢を達成した。
今なら言える!
「アスカ、結婚しよう」
アスカは小さく頷くと
「待ってたよ」
と囁いた。
☆☆☆
結婚式当日。
たくさんの知り合いから祝福の拍手を貰う。
いつもは自分が撮る側なのに、不思議な感じだ。
フラワーシャワーの中を一歩一歩歩く俺たち。
協会の鐘が鳴り響く。
俺がいつも仕事をしている現場での結婚式、披露宴だ。
ついつい、カメラを持ちそうになってしまう。
今日のアスカ、とても綺麗だ。
控え室で何枚も俺はシャッターを切る。
俺だけのアスカが欲しくて、撮りまくる。
アスカがやめてよ、と笑う。
その笑顔も一枚、撮る。
もう中座終了か。早いな。
披露宴あげる人の慌ただしさを実感する俺。
入り口で皆を出迎える。
中にはオフィス光の元社長も、バスケの面子もたくさんいる。
アスカも大事な友達を県外から呼んでいた。
ブログをしていた時代からの親友、今日が初顔合わせだ。
アスカが嬉しそうに泣く。
その涙を俺は忘れない。
披露宴は進んでゆき、自分たちで作った生い立ちのDVDが流れる。
主にアスカが作ったDVD。それは二人の軌跡を象徴するかのように、温かいものだ。
ブーケプルズには、独身の女性が少なかったため、女性であればだれでも参加可能にする。
結局独身女性が持っていった。
焼酎プルズはかなり盛り上がった。
焼酎は元社長が元気に持ち去った。
ケーキ入刀は写真を撮られまくって、アスカは緊張していた。
各テーブルを回って写真を撮っていく。
バスケの面子がノリノリだ。
そしてシャンパンタワー。
綺麗だ。
デザートビュッフェではいろんな人たちと交流した。
県外から呼んだアスカの友達は泣いていた。
実はこの子も自殺癖があった。
二人は支え合って今にいたる。
とにかくたくさんの人たちから祝福を受けた。
幸せな結婚式、披露宴だった。
今振り返っても、大変な人生だと思う。
波乱万丈、なんでもありの世の中だ。
だから、この先何が起きても大丈夫……な気がする。
アスカが元気になったことが、俺の一番幸せなこと。
アスカがいれば、俺はなんだってできる……気がする。
アスカを幸せにする、これが俺の人生だ。
くだらないかもしれないが、これがこの俺様の人生だ。
いつかこれを本にしよう、俺はそう思った。
そして子供たちに聞かせよう、そう思った。
ご静聴、ありがとうございました!
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