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【連載小説】星の下で vol.5 「小学校」
小学校に上がる前に、知能テストのようなものを受けさせられた。
同じ模様を探したり、そういう簡単なテストだ。
私は何の気なしに受けて、テストの時間があまってしまい、テストの裏に落書きをして遊んでいた。
人生初のテストだった。
えらく簡単だったけど……
テストの結果は家に郵送されてくるらしい。
いい点数だったら、お母さん喜ぶかな?少しドキドキした。
ある日、うちにお客さんがくることになった。
教育委員会だとか、何とか……
「翔ちゃんは天才です!ぜひ受験をすべきです!!」
そんなことを言っているのが聞こえてきた。
またやってしまったな……と私は思った。
お絵かきも国語も手を抜いてきたのに、テストだからって、つい本気の答えを書いてしまった……
教育委員会の人だと思っていたら、違う小学校の校長先生だとわかった。私のテストが満点だったのに驚いた教育委員会の人から話がもれたらしい。
プライバシーに関わることなんだ、もっと慎重にみんな考えるべきなのに。
学校の先生は、編入でもいいから、と一生懸命お母さんを説得していた。
お母さんは私を呼んで聞いてきた。
「翔ちゃん、チャレンジしてみたい?」
私は頭を横に振った。
「という訳で、このお話はなかったことにしていただけますか?」
「うむむ、仕方がない。では、いずれ気が向いたらということで。」
先生たちは帰って行った。
◇
小学校の入学式。
私はドキドキしながら校門で写真を撮ってもらった。
兄の宏樹は先に学校へ行っていて、私が来るのを待っていてくれた。
兄貴も一緒に写真を撮ってもらう。
真新しいランドセルに期待を背負って私は校門から入っていった。
私は一年二組だった。二組のドアを開けて入ると、二人の子が言い争いをしていた。
どうやら、一番前の席の取り合いらしい。
周りの子はおろおろするばかりで。それはそうだろう。初めて見る教室に机。その上初めて見る友達。喧嘩の仲裁など、なかなかできたことではなかった。
仕方がないので、私が仲裁に入った。
じゃんけんで決めることになった。
「最初はグー、じゃんけんぽん!!」
結果、ランドセルにお守りをつけている方の子が勝って、堂々と席へ座った。負けた方の子は残念そうにその子の横の席に座った。
「サンキューな。俺はレン。横道レンだ。よろしくな。」
レンは嬉しそうに手を差しのべた。
「僕は水谷翔。よろしくね。」
私はその手を握り返したのだった。
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