【連載小説】俺様人生 vol.14「引っ越し」
アスカのパチンコ癖はなかなか治らない。
せっかく役所には病欠をもらっているのに、俺が学校に行っている隙にパチンコへいってしまう。
四月になり、新学期が始まるが、俺はアスカを見ていなきゃという観念から、学校を休みがちになっていた。
季節は過ぎていく。
そんなある日のこと。
俺は最近いつも昼食は家で食べるようにしていた。
そうすれば、アスカがパチンコに行きづらいから。
その日は午後に必修科目があった。
休みがちになっているため、次に休めば留年確定してしまう。
なのに、帰ったらアスカがいない。
アスカがいつも行くパチンコ屋はだいたい決まっている。
俺はカッとなって、つい車で探しに出てしまった。
必修科目のことはもう頭になかった。
アスカを連れ戻す、それしか頭になかった。
アスカはやっぱり行きつけのパチンコ屋にいた。
無理矢理帰らせようとする俺。
抵抗するアスカ。
賑やかなはずの店内に俺の怒鳴り声が響く。
周囲の人もなんなんだろうと、こちらを見る。
それでもなお、抵抗するアスカを引きずるようにして店から出ようとしたとき、警備員に止められた。
警備室で事情徴収される俺たち。
とりあえず警察沙汰にはしないでもらえた。
アスカはずっと泣いていた。
なぜ泣く?
それは、自分の依存症が治らないから。
事情徴収も終わり、解放された俺に、アスカは泣きながら言う。
「ありがとう、レンくん、ごめんね」
アスカの車の後ろを走らせる。
そのとき、ふと必修科目のことが頭をよぎった。
俺は奨学金で大学に行っている。
留年になると必然的に奨学金はストップされてしまう。
つまりは学校に行けなくなるのだ。
俺は頭をガンガン叩かれたような痛みを感じる。
アパートに戻ると、俺はベランダから実家の母に電話をかける。
アスカはなんだろう?という顔でこちらをみている。
『もしもし?』
「もしもし?俺。ちょっと話があって」
『話?なぁに?』
「俺、留年になった」
『留年ってあんた……なんでまた?』
「用事があって学校休んでたら単位がとれなくなって」
『用事がって、まだ5月よ?なんでそんなに休んだの?』
「だから、大事な用事があったんだよ!で、さ」
『留年って、奨学金は?止まっちゃうんじゃなかったの?』
「うん、そう、だからさ」
『だから、何なのよ?』
「俺、こっちで学校やめて就職しようと思う」
『就職って、あんた、そんなに簡単にはいかないわよ』
「やれるだけやってみる。だからさ、アパート借り直さなきゃと思って」
今住んでいるアパートは大学生専用だ。
だから、大学をやめるならば出て行かねばならない。
「それでさ、彼女も一緒に住もうと思ってる」
『彼女?なんで一緒に?』
「彼女、行くところないんだよ。だから」
『お父さんに相談してみるから、待ちなさい』
と、母は電話を切った。
話が聞こえていたアスカは、更に大泣きしていた。
「レンくんが、レンくんが、私のせいで……!」
また過呼吸を起こしかねない勢いで泣くアスカ。
俺はアスカを抱き締めると呟いた。
「頑張ろうな、アスカ」
その週末に両親はやって来た。
アスカが緊張している。
俺は
「大丈夫だよ」
とささやいて、両親を迎えた。
部屋はパッと見れば二人暮らしだとすぐにわかるような有り様だ。
言い訳は出来ない。
「彼女と一緒に住んでたのか……」
父は唖然として言った。
アスカがぴょこんと頭を下げる。
母も無言でなにも言わない。
「でも、学校やめるなんて……」
「お父さんも学校はやめさせたくない、でもこれ以上お前にだけお金を使うことは出来ない。やめるしかないな」
「うん……」
「ところで、彼女は学生なの?」
「いえ……」
アスカがボソッと呟く。
「彼女は市役所員だよ」
俺がフォローをいれる。
アスカにあまり負担をかけたくない。
「仕事なんてすぐに見つかるわけでもない。一度実家に帰っておいで」
ここは譲れない。
アスカの帰る場所は俺しかないから。
「いや、こっちに残る。仕事もすぐ探してお金は必ず返すから」
それでも親は一度戻ってこいと言って、譲らなかった。
俺は仕方なく、アスカが実家とうまくいっておらず、うつ病を患っていることを話す。
そのために俺もこっちへ残って闘いたいと言った。
何度も何度も丁寧に話す。
「そうか……そこまで覚悟を決めてるんじゃ仕方ないな。お父さんたちは応援しかできないが、とりあえず引っ越し先を探そう」
父がそう、言ってくれた。
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