【連載小説】俺様人生 vol.21「浮気」
アスカと出会ってから二年が経過していた。
あんな出会いでここまでくるとは思いもしなかった。
アスカと会ったときから感じる、この懐かしさはなんだろう?
もう何十年も一緒にいる気もするし、初めて会ったようなときめきもまだ感じる。
不思議なことだ。
そしてアスカも同じことを感じているらしい。
運命の相手がいたとしたら、まさにこんな感じなのかな、と思う。
いろいろあったけど、俺のアスカを守りたいという気持ちは強くなる一方だ。
アスカの様子がおかしい。
話をしていても上の空という感じで、全く聞いていない。
そんな中で、アスカは明日ネットで友達になった人に会うという。
アスカのリアル友達が増えることは喜ばしいことだし、俺は特別にお小遣いをあげる。
アスカは熱心に、
「この服がいいかな?」
「それともこっちかな?」
「ちょっと、ちゃんと見てよ!」
明日の服で悩む。
アスカが楽しそうなので、俺まで楽しくなってきた。
結局ピンクのカットソーとスカートで行くことが決まる。
突然カラオケや夕食になっても大丈夫な額をアスカに渡す。
「え……こんなに持ってていいの?」
「なんかで困ったら大変だろ?」
「わー、なんかお金持ちな気分がするー」
アスカは大喜びだ。
「全部使っていいとは言ってないぞ(笑)」
俺は念のため釘をさす。
ほんとは、ほんとに友達と使うなら使ってしまってもよかった。
パチンコに行きさえしなければ、それでよかった。
明日は友達が車で迎えに来ると言っている。
酔い止めを飲んでおくように、というと、
「大丈夫だよー。多分」
と言って、幸せそうな顔をする。
俺の脳内からは数日前おかしかったアスカのことは消え去っていた。
翌日、俺はアスカよりずいぶん先に仕事に出た。
アスカはまだ寝ていた。
約束の時間が午後2時と聞いていたので、職場から電話を鳴らして起こす。
まだ眠そうだ。
とりあえず起きたようなので、ホッとして仕事に戻った。
アスカは、その日、戻らなかった。
俺は何回も心配して電話やメールをしたが、すべて返事がなかった。
最初はカラオケにでも行ってて電話に気づかないのかなと思っていたが、深夜3時になっても連絡がつかないため、心配して、
『警察に届け出るよ』
とメールしたら、
『心配ない。今友達とダーツバーにいる』
と返事が返ってきた。
この時間に開いているダーツバーは一ヶ所しかなかった。
『さすがに遅いから帰っておいでよ』
このメールもスルー。
『遅いから迎えにいくよ』
とメールすると、
『大丈夫。来ないで』
このメールを不審に思った俺はちゃっちゃと迎えに行く準備をする。
嫌な予感がする。
俺は不安なまま車を走らせた。
早く、早くいかなきゃ。
根拠のない不安が胸に押し寄せる。
ダーツバーの近くに車を停めると、小走りにバーへ向かった。
ダーツバーを開けてすぐのところにアスカはいた。
見知らぬ男と親密そうに、ボディタッチをしている。
まるで恋人のようだ。
顔を近づけると、何度となくキスをする。
俺はアスカに近づき、ぐいっとアスカを引っ張った。
隣の男が胡散臭そうにこっちを見る。
「これどういうこと?」
アスカは青ざめたままなにも言わない。
男は、
「なに?彼氏?」
とアスカに聞く。
アスカは青ざめたまま頷く。
俺は拳を握りしめた。
そしてそのまま男の顔面目掛けて殴り付けた。
店の中が騒然とする。
俺はアスカを殴りたいのを我慢して、料金を精算してもらい、アスカを引きずるように店から出た。
「レンくん、レンくん、痛い」引きずるようにして連れていく俺にアスカが悲鳴をあげる。
俺は無言で車まで歩き続けた。
助手席にアスカを詰め込むと、勢いよく車を走らせた。
「レンくん……レンくん、怒ってるよね?」
アスカが半べそで言う。
「ごめんなさい!ちょっと魔がさして」
アスカの言葉も聞かず、猛スピードで街をかけぬける。
「ほんとに、ほんとに、ごめんなさい……」
謝り続けるアスカ。
俺の耳に届きはしなかった。
よろしければサポートをお願いします。 生きるための糧とします。 世帯年収が200万以下の生活をしています。 サポートしてもらったらコーラ買います!!コーラ好きなんです!! あと、お肉も買います。 生きていく・・・