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【連載小説】公民館職員 vol.24「クリスマス」

おっさんにクリスマスプレゼントを贈る準備が整う。

タイピン、喜んでくれるといいな。

東京の住所を書くと宅配便に出した。おっさん、びっくりするだろうな……ふふふ。



菅やんとは次の土曜日に会う予定だ。クリスマスプレゼントのこと、詳しく聞かねば!!

今回のお出かけ先はマリンタワーだ。

一度行ってみたいと思ってたんだよねぇ。

海沿いにあるマリンタワーからは、夜景が一望できるそうだ。ゆえに、今日のお出かけは午後から。

高速で二時間ほど走ると、街中に入った。

大きな大きなショッピングモールをゆっくり見て歩く。一日中かけても見終わらないくらい、ショッピングモールは大きかった。一日中っていうのは大げさだけどね。そのくらい大きく感じた。

夕食はモール内のラーメン横丁で、トンコツラーメンを堪能した。

やっぱりラーメンはトンコツだよね!

そのあと港付近を少しドライブしてから、目指す地、マリンタワーへ行く。

土曜日とあって、カップルがたくさんいる。

こりゃ、デートだな、なんて思いながら玄関を入る。

人出が多い。

そりゃそうだろう。クリスマス直前の土曜日だもん、カップルだらけですごい。

「ごめんね、私なんかが一緒で……」

「なに言ってんの、ほら、エレベーターきたよ」

こんなときにも菅やんは優しい。持つべきものは優しい友達だよね!と思う。


エレベーターで登って行くと、血の気が引く感じがした。忘れてたけど、私、高所恐怖症なんです。

エレベーターから足元が見える、透明なエレベーターに乗って、恐怖に打ち勝とうとするが、だめだった。

展望フロアに来たときには、足はガクガク、腰も抜け気味で夜景どころではなかった。

それでもなんとか夜景を見て、綺麗ねー、と言いつつ足元に気がいってしまって、全然綺麗じゃなかった。

本庁勤務のときも、一、二階だったので、油断していた。


菅やんに支えられ、なんとかエレベーターで降りる。

もうあんな怖いとこ、行きたいなんて思わない。



タワーから降りて、休憩する。

菅やんが気をきかせて缶コーヒーを買ってきてくれた。なかなか気が利くねぇ。


タワーから降りたところで、菅やんから紙袋を渡される。

え、なにこれ、もらってもいいの?

開けてみると暖かそうなミニブランケットだった。公民館でも使えそうなサイズ。

だいたい、公民館は私と同じ年くらいに設立されているから、いろいろ寒かったりして大変なのだ。足元にストーブがほしいと思うくらいに冷える。

そのことを知ってか知らないでか、ミニブランケット。

「ありがとう、大切にするよ〜!」


と、しばし沈黙。


あれ?なんで沈黙してるの?と、菅やんの顔を見ると、耳まで真っ赤になっている。

え?なに?私、何かした?


――と、菅やんが言った。

「ユキちゃん、好きです。よかったら付き合って欲しい」

付き合って欲しい……頭の中でリフレインする。

「……って、あたし??!!」

「そうだよ、ユキちゃん、好きなんだ」

「だって、あんたこないだまで先輩が好きだのって言ってたじゃない!」

「それは吹っ切ったってこないだも言ったじゃない」

よりによって、私……


そうか、この前のデパートで見かけたのはこれを買っ……て、無理だから!!

「無理だから!!私、菅やん、無理だから!!」

あ、ちょっと言いすぎたかも。

菅やんが小さくなっていく。

「……っ、そういう意味じゃなくて、友達としてしか見れないって言うか」

さらに小さくなる菅やん。


「気にしないで、忘れて」

菅やんはそう、消え入るような声で呟いた。


「じゃあ、これ、返すね?」

とブランケットを返そうとすると、

「それはユキちゃんのために買ったから、受け取って欲しい」

と言われて、ブランケットは受けとることに。


帰りの高速で無言になるのが嫌で、とにかく喋りまくったのだった。

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