【連載小説】俺様人生 vol.20「努力」
赤星さんの仕事をこなしていく。
やはり、今の職場より赤星さんのほうが厳しい。
でも、よりテクニックを磨けるというか、センスアップするというか、とにかくやりがいがあった。
ただ一つ問題なのは、赤星さんは給料が遅れるということだ。
ひと月分の給料がふた月経っても支払われない。
催促をすると、
「もうちょっとだけまってね」
と言われ、3ヶ月が過ぎた。
アスカは二回目の復帰訓練。
当面はアスカの傷病手当てがあるから、生活は苦にならないけど、3ヶ月遅れるってどういうことだ?
給料三倍って言ってたのが無理になったのかな?
せめて半分でもだしてもらえたらな。
アスカが給料をもらってこいとギャーギャー言う。そのことでまた喧嘩になる。
俺の心労も三倍になる。
あぁ、赤星さんが早く給料をくれたら、全て解決できるのに。
俺は疲れていった。
アスカの復帰訓練は相変わらず、行けたり行けなかったりしていた。
これじゃまた休職延長だな……と俺は思った。
アスカが頑張ってないとは言えない。
最大限の努力はしている。
それは俺が誰よりも一番知っている。
けど、それだけじゃダメなんだ。
結果を残さないと。
俺も早く給料もらわないと、今のままでは結果じゃない。
俺は疲れきっていた。
アスカの送迎に自分の仕事、それにバスケまで抱えてパンク寸前だ。でも、そんな俺を支えたのはアスカの笑顔だ。
どんなに体調が悪くても、俺のご飯だけはしっかり作ってくれる。
これも俺のパワー原動力一つだと思う。
俺はアスカの親子丼をたべながら頑張った。
アスカの復職はまだだめだった。
さすがのアスカも落ち込んでいる。
これは俺が励まさねば、と意気込んだが、アスカは俺のことを心配してくれる。
俺は当面は自分のことだけに専念することにした。
アスカには申し訳ないが、バス通勤してもらうことになる。
アスカは車酔いがひどく、出来るだけバスには乗らないようにしていた。
しかし、仕方がない状況。
障がい者手帳を使うとバスも半額になる。
しばらくはそれで我慢してもらうしかない。
バス通勤1日目。念のために酔い止めを飲んでから出発した。
『酔わずについたよ』
とメールがきて、とりあえずよかったなと思う。
俺は自分の仕事に専念することができた。
ちょっとホッとする。
お昼はなに食べようかと迷っているときにアスカからメールが届く。
『冷蔵庫にお弁当いれてきたのいい忘れた。食べてね!』
冷蔵庫を開けると弁当が一番下段に入っていた。
『了解』
とメールすると、俺は弁当箱を開けた。
俺の好物がたくさん入っていた。
俺はちょっとうるっと来ながら弁当を平らげた。
「ただいま」
アスカが帰ってきた。
「酔わなかった?」
「うん、薬なしでも大丈夫だった」
「えっ、薬飲んでないの?」
「これ、酔ってからものめるチュアブルタイプだったから、試してみた」
「へぇー」
「私、バス通勤出来るかもしれない。」
そう言った日は、訓練の最終日だった。
今回も復職にはならなかった。
しかし、バスに乗れたという輝かしい結果を残した。
俺は赤星さんに、熱心に給料を請求した。
やがてその効果があってか、一部給料が貰えた。
あくまでも一部、だが、大きな一歩を踏み出した。
俺は家で仕事することが多かった。
それは少しでも長くアスカといたいせいもあった。
アスカはこれまでに何度となく自殺未遂をはかっていたから、心配もあった。
でも、借金が片付いてから自殺未遂はしなくなっていた。
医者からは三十代になると病状も安定するよ、と言われていたが、まさにそんな感じだ。
パチンコも行きたがらなくなったし、あとは睡眠薬がなくなって、仕事にいければ完璧だ。
そんなことを考えていたら、仕事の手がとまっていた。
ヤバいヤバい、ちゃんとしないと。
俺は再び仕事に熱中していった。
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