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【連載小説】星の下で vol.4 「園バス」
幼稚園へ行くときは園バスで行く。
私の園のバスは、となりのトロロの猫バスが描いてあり、私の自慢でもあった。
そんなときに、ある女の子が私の園バスをバカにしてきた。
その子は近所の子で、私とは違う園に通っていた。
お気に入りの園バスをバカにされて引き下がれるような私ではなかった。
「なんだよ、バカにするなよ!」
「だって翔くんの行ってる幼稚園はバカばっかりが行くんだってー!」
この一言にぶちギレた。
「誰がそんなことを言ったの?」
「ママが言ってたもん。」
「ママが言ってたら何でも正しいの?じゃあ、ママがあなた死になさいって言ったら死ぬの?」
我ながら幼稚な怒り方ではあったが、これはこの子にはばっちり効いた。
「うちのママ、そんなこと言わないもん。」
「じゃあ、もし言ったらどうする?」
「いやだ!死にたくないもん!」
「ほら、ママが言うことが全部正しいわけじゃないじゃん。きみは僕の幼稚園に来たことがあるの?バカばっかりかどうか、来たことないくせにわかるの?」
「だって、ママが……」
その子はもう泣きそうである。
しかし、後には退けなかった。
その子が泣き始めてからしばらくして、その子の母親がやって来た。
その子は母親に、
「翔くんが意地悪を言うの!!」
と泣きながら言った。
「僕が悪いんじゃないもん。おばさん、僕の幼稚園はバカばっかりって言ってるんでしょう?」
後には退かない私。
「そんなこと……そんなこと言ってないわよ!」
すると泣いていたその子が、
「でも、この前……」
と言いかけたのを塞ぐようにして、その子と母親は去っていった。
みんな自分勝手なんだ!
前世を思い出す。
男手が少ないぶん、お互い協力しあって生きていた、あの頃。
私はよくご近所の子供たちの子守りをさせられていたっけ。
みんな素直でいい子ばかりだった。ガキ大将のような子はいたけれど、みんなが一丸となっていた。たまに嫌みなおばさんはいたりしたが、その他のご近所さんとは家族のように接していた。
そんなことを思い出し、懐かしさで涙が出そうだった。
園バス、かわいいもんね。いいもん。そうだ、僕が気に入っているのならそれでよかっただけの話なのに、わざわざあの子に意地悪をすべきじゃなかったな、と後から後悔した。
おとなと子供の合間にいる感じがして、うまくすっきりできなかった。
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