【連載小説】公民館職員 vol.23「クリスマスの準備」
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その日は映画と少しカフェでおしゃべりをして帰った。
映画の趣味がよく似ていることにびっくりした。
音楽の趣味もまあまあ似ている。
これで親友道一直線じゃない?
私は元々女の子が苦手で、あまり女の子の友達はいなかった。
ちずるくらいかな、友達と言えるのは。
今となってはそれもどうかわからないけど、ホントにそのくらい女の子の友達はいなかった。
だから、いつも男子にまみれて遊んでいた。ダーツしかり、カラオケしかり、ゲーセンしかり。
同期の友達もちずるとなぎさを除いては全て男子ばかりだった。
飲み会に行っても男子の中央で飲んでいたりする。
だから、親友の出現はかなり嬉しいものだ。
帰りに送ってくれて、
「また遊ぼうね」
と言われたのに意気揚々と
「うん!」
と答える。
菅やんもにっこり笑うと、手を振ってお別れした。
菅やんはすっかりなついたらしく、しょっちゅう公民館に顔を出すようになってきた。
私が、「ホントに仕事してんの?」と聞くほどだ。
菅やんは慌てて、してるよ!と言い書類を見せてきた。
はいはい、と私が落ち着け、と言う。納税課の資料なんて、外部の人間がみたらやばいでしょ。
それでも一生懸命に書類を出してくるから一喝した。
「公務員たるもの、守秘義務は守らなければなりません!」
菅やんも納得したらしく、今度は慌てて書類を片付け始めた。そんなに焦らなくてもいいんだけどね。
今日は図書室で廃棄本の整頓をした。なにを廃棄していいかわからなかったからそのままだったらしい。一日中いて、なにしてんの?仕事しなさいよ?と言いたくなるのを我慢して、作業を始める。
実用書の古いものは廃棄、小説はちょっと注意が必要で、全館で最後の一冊になっていれば、捨てることはできず、市立図書館の書庫に片付けることになる。児童書や絵本もしかり、だ。
そのルールを説明すると、嘱託さん二人が動き始める。次々に出てくる廃棄本の山。
今まで仕事してなかった分のつけだ。
選別は次の図書室整理日にすることにした。
図書室整理日と言うのは、名前が表す通り、図書室の整頓や、本の直接購入に出かける日だ。
今まで整理日になにをしていたのか、疑問が涌く。
ともあれ、廃棄本は大量に廃棄された。小説など、まだ読まれそうな本はリサイクル図書に回してお客様に持って帰ってもらうことにする。
一番困るのが市立図書館へ持っていく本だ。市立図書館の書庫はもう一杯一杯になっていて、持って行っても入らない。
もっと大きな書庫がある図書館を設立予定と言われてもうずいぶん経つ。
仕方ないので、本はできるだけ整頓して段ボールで山積みにして帰ってきた。
菅やんから、また次の休みに遊ぼうよ、とメールが来た。
土日休みの本庁と違って、月曜日が定休日の私たちは交代で土日に休みを取っていた。土日と火曜日を振り分けることで、人数を確保して休む。
休日も開けているので、休日は残業扱いで交代で勤務している。
だから、菅やんの言う次の休みがいつになるかわからなかった。菅やんは菅やんで休日出勤とかもしてるからね……
それでも何とか都合をつけて休みの日を作った。
街はもうイルミネーションがきれいな時期で、それだけでも浮き足だった。
仕事が終わった後、私はおっさんにタイピンをプレゼントする予定で街をうろついた。
すると珍しく定時にあがれたらしい菅やんの姿が。
姿が見えたけど、思わず隠れた。
だってそこは女物の売り場だったから。
「もう気になる人がいるんだよね」
そう言った菅やんの声を思い出す。
「クリスマスプレゼントか……」
でも、その女の子と接近したなんて話はいつものメールでも聞いてない。
まさか、プレゼントを渡しながら告白……?なんて迷惑なの?それって断られたらどうすんの?!
私の頭は痛くなるばかりだった。
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