【連載小説】公民館職員 vol.28「食事」
進藤さんからの返事はこうだった。
『私もいつも楽しく図書室で過ごさせていただいて、いつも感謝しています。お礼と言ってはなんですが、今度食事にでもいきませんか?』
キター(・∀・)
リア充展開キター!!
植田さんからもお墨付きだし、これはもしや、長いこと待ち望んだ春がやって来た?!
いやいや、ここは慎重に、男に飢えていることを悟られてはいけない。
従って食事にほいほいついていってはならない。
だけど……我慢できませんでした。
『食事、是非是非!いつにしますか?』
社交辞令かもしれないメールに真剣に返事する私。
正月休み中だからか進藤さんの返事が早い。
『明日とかお時間ありますか?』
なんだ、進藤さんのほうが、がっついてきているような?
明日?!予定はないけど、仕事後だからおしゃれはやたらとできない。
しかし、このチャンスを逃す手はない。
『明日、仕事が終わってからなら大丈夫です』
すると、
『明日、終わる頃公民館に迎えに行きますね』
展開はやっ!!
とりあえず明日は正月明けで暇なので残業の心配などはない。
あとは服だな……おっさんといるときは、気楽だったから、ほんの少しのおしゃれでよかったんだけど、今回は気合いが違う。
服屋に寄って可愛いワンピでも探して帰ろう。
帰りにデパートに寄った。まだまだ福袋セールとかやっている中を目指すお店へ一直線だ。行き先はバーバリー。こないだ可愛いワンピを出していたのだ。
お店にたどり着くと、福袋をチェック。そしてお目当てのワンピは――なくなっていた。
店員さんを呼んで確認する。
お正月のセールで売りきれてしまったらしい。
他の店も見て回るが、これ!といったものはなく、うろうろ徘徊しただけになる。そのうち七時になり、デパートが閉まる時間となった。
収穫は、ゼロ。
仕方がないので帰ってからファッションショーの始まりだ。
男を落とすには、ワンピがてきめんだと以前なにかの雑誌に書いてあった。
あぁ、でもちゃんとしたワンピがないよう!!
私は妹の部屋まで占拠してファッションショーを繰り広げた。
結果、妹の一昨年買ったバーバリーのワンピに決めた。
なぜそこまでバーバリーにこだわるかと言われると、昔の彼氏に、
「お前バーバリーとか似合いそう」
と言われた、ただそれだけのためなんだけど、とにかくバーバリーが大好きになった私は、勝負服はバーバリーに決めている。
翌日、少し化粧を念入りにすると、バーバリーのワンピに身を包み、私は出勤した。
嘱託の本多さんに、今日は決まってるね、とお褒めの言葉をいただいた。いつもだってちゃんと決めてます!つけまがまるかないかの違いくらいで。
仕事は手につかなかった。仕事らしい仕事もなかったからいいんだけど、今日はおしとやかな気持ちだったので、図書室には上がらず一日デスクで過ごした。
なにをしていたかと言うと、先日発見した『図書室は二階です』の看板を作っている。看板と言っても、階段の段差の部分に張り付けるだけのものだから、そう難しくはないのだけれど、すっかり凝ってしまって、階段の段差に張り付けるお花模様とかも作り出してしまった。
でも、そのおかげで、久しぶりにデスクで目一杯仕事ができた。
定時まであと十五分。
私はトイレにこもって、熱心に化粧を直していた。
嘱託の井手さんがトイレにやってきて、
「今日は気合い入ってるのねー!デートかな?」
とからかってきた。
私は、
「まあ、そんなところです」
と言いながらニヤケ顔がとまらなかった。
五時十五分、定時。
そのとき、進藤さんからメールが入ってきた。
『裏の駐車場で待ってます』
私は裏口からでて、キョロキョロした。すると一台のスポーツカーが停まっていた。
軽く手をあげる進藤さん。
私は走りよった。
「すみません、お待たせしました」
「いや、僕も今来たところだから」
今日は郊外にあるレストランで食事ということだった。
「じゃあ、出発しますよ!」
と言うと、颯爽と車を飛ばしたのであった。
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