【連載小説】俺様人生 vol.15「休職」
引っ越しが決まってから三週間後、ようやく引っ越し先が決まった。
引っ越しは、アスカが唯一仲よくしている、アスカの父親に軽トラを借りて引っ越しを手伝ってもらった。
実は父親に会うのはこれで二度目だ。
一度目は、アスカが珍しく実家に俺を呼んでくれたときだ。
まだ付き合って日が浅い日のことだった。
アスカは、みんなが仕事で出掛けている隙に俺を呼んでくれたのだ。
アルバムを見せたくて俺を呼んでくれたらしかったのだが、そのとき父親が家に帰ってきてしまったのだ。
付き合っている人はハニタンだと紹介も済んでいたので、ここにいる俺は何者?
というパターンだ。
かろうじて笑顔で
「お邪魔してます」
とは言えた。
父親はアスカがいたことにまず驚いていたようだが、すぐに笑顔になると、
「こんにちは。ゼリー買ってきたけど食べる?」
と言ってきた。
俺は
「もうおいとましようと思っていたので、結構です」
と言って、断った。
アスカは国道にあるホームセンターまで行くと、やっと
「ふー、焦ったぁ」
と言った。
「お父さんにばれたけど、よかったの?」
「いいわけないじゃん、最悪だよー」
と頭を抱えるアスカ。
ですよね、そりゃそうですよね。
留守をわかって入った間男ってやつですよね、わかります。
「でも、しばらくはまた帰らないんでしょ?問題ないよ」
「お父さんがどう思ったか次第だな」
アスカがハンドルに突っ伏して言う。
そんなことがあったんです。
それでも手伝ってくれるってことは、ほぼ公認だと思っていいんですよね?
引っ越しも完了し、明日布団を持っていくと完璧に完了。
その日の晩は、チューハイを買ってきて、ささやかながら乾杯をした。
認めてもらえたことに乾杯。
二人のこれからに乾杯をした。
翌日、布団を車に積むと、不動産屋のチェックを受け、鍵を返納して、俺たちの引っ越しは終わった。
そして、もう一件の別れがあった。
「ハニタンとは、友達に戻ることにした」
アスカははっきり言い切った。
「ずっと前からはっきりしないと、ってずっと思ってきた。そろそろいいかなって」
「友達に戻るってことは、遊びに行ったりはするんだね?」
「うん、私、友達いないし、よく考えたら私たちって、恋人というより親友って感じだなって思ったの」
それは同感だった。
だから、ハニタンと会うことは許せた。
本当になにもないってわかっているから、許せた。
不思議なもので、そうなると独占欲がおさまるのか、ハニタンに対する全ての行為が許せてしまう。
これで名実共にアスカは俺の彼女になった。
アスカは長い病欠を経て、職場復帰トレーニングをすることになった。
普通に出勤するだけの簡単な訓練だが、アスカには難しかった。
まず、朝起きれないのだ。
薬のせいもあるかもしれない。
ここ最近寝付きが悪くなっていたアスカには睡眠導入剤が出されていた。
しかし、早寝をしても、どうしてもその時間には起きてくれないのだ。
起きた日は一応仕事にいく。
送迎は俺がした。
帰りにパチンコへ寄って欲しくはなかったし、まず、俺は無職だからだ。
それでも途中で気持ちが悪くなり、早退を繰り返した。
とうとう、人事課から呼び出しをくらい、休職扱いにしようと言う話が出たらしい。
アスカはお金のことを心配していたが、ほぼ満額傷病手当てが出ると言われて安心して手続きをしてきたらしい。
これでアスカが治れば完璧だ!
と俺は思っていた。
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