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【連載小説】公民館職員 vol.15「補佐の補佐」
ちずるは比較的仕事に気を配るようにはなった。
しかし、昼当番が忙しいときに援護射撃はなかったし、窓口にでる回数は増えたものの、やる気がなかった。
私は事務長に訴える。今までとなんら変わりがないじゃないですか!と。
しかし、与えられた仕事はこなしている上、追加の仕事もこなしているため、事務長はこの辺がおとしどころだろうと言った。
私は勝手に勝利したと思い込んでいたので、これは結構ショックだった。
そういえば、ちずるとカラオケに久しく行っていない。
まあ、仲が悪くなってもアレなんで、久しぶりに誘ってみる。
「ごめん、あたし今日は用事があるから今度ね」
その約束は叶うことがないものとなった。
おっさんに電話で相談する。
『そりゃ、もう諦めたほうがええ。一度うまくいかなくなった歯車は、二度と同じところにははまらんからな』
『でも、ここに来る前までは仲良しだったんだよ!』
『でも、前の職場でもさんざんな目に合わされたっていってたやんか』
『ぐむぅ、それはそうなんだけど』
『向こうがお前のこと嫌いだしたきっかけは思い出せんの?』
『さあ?今の職場に来たらすでにこんな状態だったから』
『ま、なんにしろ関わらんこっちゃな。でないと自分、損するで』
『納得いかないけど、わかった』
私は結局ちずるには勝てなかったのだ。
今日もおっさんとデート。この日ばかりは私も上機嫌になる。
今日は中華だって!お腹をしっかり空かせとかなきゃ!
八月の日差しが眩しい。
今日は外勤の日だ。各小学校中学校をまわってプリント配布の以来をしてあるく。プリントとは公民館だより、兼図書室だよりだ。これがどれだけきちんと家庭につくのか、はたして読んでくれているのかは謎だが、毎月一回の外勤。
公用車でいくから楽チン。
ただ、今は各小学校中学校ともに、防犯のため、入り口を閉じているところが多く、小学校中学校ごとに重い門扉をあけるのには一苦労だ。
門扉を開けて車をいれ、すぐに門扉を閉めてプリントを渡しにいって、また門扉を開けて車を出し、門扉を閉めて帰る。
意外と時間を食うのだ。
帰ったら、館長補佐が、会議に使う資料を手伝って欲しいという。
わたしははいはいと2つ返事で請け負った。
「ちずるちゃんにも頼みたいんだけど」
その言葉にちずるは、
「今は別件で忙しいので」
と断った。
「ユキちゃん、じゃあこの分も頼めるかな?」
「はい、わかりました」
そこからはグラフを作ったりして資料を作り始めた。
午後一番に頼まれたので終わるだろうと鷹をくくっていた。
しかし、五時の定時をすぎても仕事はおわらなかった。
六時にと約束をしていたので、
『遅くなりそう』
とメールしておいた。
現在時刻八時半。
まだ作成は終わらない。あとちょっとなんだけど……
おっさんに進捗状態をメールする。
『焦らんでもええよ』
ありがたい返事をもらえる。
資料が出来上がったのは九時半だった。
補佐がお礼に一杯奢るよと言ってくれたが、私はおっさんをこんなに待たせていることで焦っていたので、急いで荷物をまとめると、「お先に失礼します!」と言って走って待ち合わせの喫茶店へ行った。
おっさんはのんびりくつろいで、雑誌をめくっている。
私は駆け寄ると、
「ごめんなさい!」
と謝った。
「仕事の方は終わったんか?」
「うん、ばっちり!」
「それならよかった。飯、食いにいこか」
「まだお店開いてるかなぁ?」
私が心配していると、
「十二時まで開いてて十一時半年までがオーダーストップや。大丈夫、大丈夫」
「それならよかった」
安心してお店の門をくぐった。
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