【連載小説】公民館職員 vol.22「映画」
今日は休みだ。
土日に休みなんてほとんどないけど、なにしよう?
と思っていたら菅やんからメールだ。
『仕事頑張ってるー?』
ああ、昨日は今日が休みだって言ってなかったっけ。
『今日は仕事休みー。暇だー!』
と返す。
しばらく漫画を読んでいたが、菅やんから返事が来る。
『ドライブにでも行かない?』
いいけど……この雨の中でドライブねぇ。
『行ってもいいけど、どこへ行く?』
『ドライブだけじゃなんだから、映画でも見るか?奢るよ』
奢りで映画、いいじゃん、気が利くねー、菅やんは。
『はいはい、行きまーす!待ち合わせどこにする?』
と言うと自宅まで迎えにくると言う。
自宅の場所を分かりやすく説明したあと、着替えだす。
菅やんだから、適当でいいか。と、メイクもあまりしなかった。
雨がしとしと降っている。雨があがったら冷えそうだなと、ヒートテックなインナーとボアブーツをチョイスする。
一時間くらい経って、菅やんから着いたよー。とメールが来る。
私は
「いってきます」
と言うと家を出た。
家の前には菅やんの軽自動車が止まっている。
「場所よくわかったね」
「ユキちゃんの説明がよかったからだよ」
「で、今日は何観るの?」
「四丁目の夕日、だよ」
「あー、それ私超観たかったやつだ!」
「ならよかった!出発しまーす!」
菅やんの運転は軽快だ。私も横に乗っていて楽しい。道中、かけている音楽の話で盛り上がった。
私も好きなチャットモンキーの曲だ。他にもマキシマムザホルオンとかの話にもなる。
あのデスボイスはすげー、とか、たてのりはどこまでできるかとか。
菅やんといると、安心できる感じがした。このまま仲良くしていけたらな。
目的地へ到着。
映画の時間まで一時間あった。
チケットを買うと、菅やんが
「お腹すいてない?」
と言うので、正直に小腹がすいてる、という。
すると菅やんが、ケンタキーでフライドチキンを食べないかと言い始めた。私もケンタキーは大好きなので、食べに行くことに。
ただ、ケンタキーはホントに仲良し同士じゃないと食べれないな、と思う。骨までしゃぶりつく姿はあんまり見せれたもんじゃない。まぁ、相手が菅やんだからいいけど。
菅やんとは、同期の友だ。研修で同じクラス、同じ班になった。大卒の菅やんは、一浪して入庁しているので、正確には五つ年上だ。
でも、最初の時から年上という感じはしなかったし、話しやすかった。いや、別に菅やんを見下しているとかいう訳ではなくて、親しみやすい、というか、頼りやすい……頼りやすいかはわからないけど、とにかく身近に感じた。
それは今も変わらない。
映画まであと十五分を切った。私たちは映画館に戻っていて、ジュースとポップコーンを買う。
映画にはポップコーンなんて、誰が考え付いたのだろう?私はチュリトスというドーナツも買ってもらい、上機嫌だ。
「もうそろそろ入っとく?」
と菅やんに聞かれて、
「うん!」
と答える。
映画館に入ると、次作のCMとかがながれていて、次に観たいのはこれだ、とか小さい声で話し合う。
私は涙もろいので、ハンカチを準備しておく。
映画が始まる。
昭和三十年から四十年にかけての物語、時に笑いあり、時に涙ありで、とても面白かった。
ハンカチを用意しておいて正解だった。ついでにメイクもしてなくて正解だった。
私はそのくらい号泣したのだ。
途中、菅やんが手を握ってきたけど、涙はおさまらなかった。
映画が終わっても一時放心していた私は、喫煙所に行ってやっと落ち着いた。菅やんが笑っていた。ホントに涙もろいね、と。
そのあとはスバータックスでコーヒーを買い、いざ、ドライブへ。
雨なので大きい道をゆっくり走る。
話題はさっきの映画。
どこがよかっただの、ここが泣けたのだの、いろいろ話し合った。
菅やんが手を握ってきたことは、すっかり忘れていた。
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