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【連載小説】俺様人生 vol.18「一ヶ月」

通帳を全部押さえて一ヶ月。

アスカは穏やかな日々を送っている。


通帳は絶対にわからない場所に隠した。

これで一安心だ。


メールチェックもしようかと思ったが、それではあまりにアスカが可哀想だと思い、やめておくことにした。


本当に穏やかな日々だ。

アスカは毎日手料理を作り、俺は毎日写真を撮りに行った。


そんな折、俺の撮った動画を見て、東くんの知り合いが、

「うちで結婚式の撮影のバイトをしないか?」

と言ってきた。

俺は大喜びで返事をする。

撮影をやってみて、すごく楽しいし奥が深いなと思っていたところに、棚からぼた餅だ。


結婚式の撮影は意外と簡単だった。

決まったラインに沿って動画を撮っていくだけ。

ただ、少々厄介だったのはその編集の方だった。


俺は普段からパソコンを愛用している。

だからスムーズにいったけれど、パソコンに慣れていなければ悲鳴をあげるほど、ソフトの扱いは面倒だ。

普通に編集するだけなのだが、途中効果をいれたりしなければならない。

効果をいれるのは自由に、と任された。



この、自由に、が一番難しかった。

自由にと言われても、どこをどうすればいいのかわからない。

俺は過去の作品をいくつか持って帰ってきた。

それを見て研究するつもりだ。


帰ってから作品を見ていると、アスカも横から見ているようだ。

アスカにも見えるように画面の角度を変える。


アスカは作品に感動したと言って、泣き始めた。

すぐ感動する。

そんなアスカも可愛いな、と思いながらティッシュを何枚か渡す。


俺は家で仕事が出来るように、ソフトを持って帰ってきた。

アスカが興味深そうに見つめる。


俺はしどろもどろしながらも編集を始めた。

何度も何度も修正を重ねながら作っていく。

難しいことはまだできない、持ち帰った作品を参考に効果をいれていく。

思ったよりもいいできばえだ。

一回通しで確認する。

アスカはまた泣いていた。

「よかった、よかったね、二人とも」

どうやら作品に感動したようだった。

この日から、俺はアスカが泣くか泣かないかを目安に作品を作ることにした。



アスカの自己破産の通達が行われる。

俺たちは以前に泊まったラブホに泊まる。


アスカはゲームとして置いてあるスロットにご執心だ。

「いよいよ明日だな」

「うん、いい結果だといいけど」

「きっと大丈夫だよ」

アスカは玄関口までタバコを吸いにいく。

このホテルは入り口が二重扉になっているので、タバコが嫌いな俺のためにそこにタバコを吸いにいく。

普段はどうしてるかって?

蛍族だよ。



アスカは戻ってくると、夢の話を始めた。

「私がカフェを開いて、レンくんが取材するの。それでね……」

話が尽きることはない。

そのうちアスカは寝息を立てて眠ってしまった。

俺はなんだか眠れなくて携帯をいじっている。

突然アスカが、

「レンくん、レンくん、どこ?」

と泣き出した。

しょっちゅうあることだが、仕事にいったり、不安な時ほどひどくなる。

アスカは緊張してるんだな……

俺はアスカの手を俺の顔へ持っていき、触らせて安心させる。

ポフポフとアスカの背中を叩いていたが、そのまま眠りに落ちた。



翌日はいい天気だ。

これはきっといい結果に違いない。

アスカは一生懸命ブーツを履いている。

俺は駐車場のボタンを押すと、

「忘れ物ないな?」

と確認する。

「ないと思うー」

「なら出発するか!」

「お願いします」

俺たちはゆっくり車を走らせ、裁判所へついた。

ついたのはちょうど時間前。

アスカは緊張した面持ちで、

「いってくる」

と言う。

俺は背中をトンっと叩くと

「いってらっしゃい」

と答えた。


アスカはすぐに戻ってきた。

顔は弾けんばかりの笑顔だ。

それを見て俺は結果を知る。

「破産できたよー!!」


聞くと、前回と同じように、裁判所の一室へ通され、弁護士ともう一人がいる中で、破産宣告を承認する、と言われたらしい。

それで終了。


帰りに弁護士さんの所へ寄って、預けていたいくつかの物を受け取った。



アスカはさっぱりした顔をしていた。

今までに見たことがないようないい笑顔だ。

やっぱり借金が重たすぎたんだね。

よかった。

あとは俺が頑張ってアスカを支える!!

そう、改めて思った。

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