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統合マーケティングのプロモーション領域に貢献する広告代理店はプラニング機能を今こそ充実させてその「企てる」力を得意先に提供して、日本市場を活性化しましょう!ということをメモにしました。

日本にはローカルエフィー賞がないことは以前記事にしました。
今日は広告代理店サービスにおけるプラニングの重要性について書きたいと思います。



日本の広告業界でのプラニング

広告の仕事のみならずグローバル規模で展開される産業はそれぞれの国や地域市場において独自の進化が起きています。
人間が社会的な生き物である限り、個々の市場にはその社会性が反映されます。

日本の広告業界において今僕が個人的に一番心配していることがあります。
それは、「プラニング」機能の後退です。

日本の広告代理店からプラナーという職種の役割が減っています。
例えば、僕知りうる限り電通には純粋な「ストラテジックプラニング」部門がありません。
クリエイティブプラニングやコミュニケーションプラニングに昇華されています。

ストラテジックプラニングの役割においては博報堂グループと独立系代理店、そして外資系にその機能とそのための組織が存在しています。

個人的な意見ですが、日本の広告作品が海外賞で最近大きな評価を得ることが減っています。
理由の一つに「マーケティングにおけるプロモーションで解決すべき課題」の設定がうまくいっていないのではないかと思っています。
プラントは企てることですので、「企て」の設定ができていないように思います。

企てない広告代理店の現状は?


広告代理店の制作プロダクション化が進んでしまうことについての危惧が強くあります。
これは制作プロダクションのことを卑下しているわけではなく、一般的にグローバル展開している広告代理店の売り物はプラニング、制作が柱です。
その広告代理店ビジネスからプラニングがなくなるということの深刻さを理解してもらえるかと思います。

企てに対する得意先ニーズの移り変わり


日本市場ではストラテジックプラニングの需要がないわけではありません。
その需要が変化していること、そして、その需要をビジネスにできていないことが問題です。

プラニングに関しては広告代理店が得意としてる市場と消費者の洞察を再び大事にすることが重要です。
何よりも日本市場での「統合マーケティング」そのものにおける広告の位置付けを明確にする必要もあります。

そんな中で広告代理店とその重要な機能であるプラニングの未来について議論用のnoteを続けます。

ニーズの変遷を観察すると


総合広告代理店から「ストラテジックプラナー」の役割がなくなりつつあることは深刻なことなのですが、なぜ役割が後退しているかをこれから考察します。

これは主に日本のコンシューマー向けのマスマーケティングの世界の話になります。

まず最初のポイントは1990年代後半から得意先の変革により広告代理店へのニーズが変わってしまったことに日本型の広告代理店モデルが追いつけていないことです。

議論のために乱暴な言い方をあえてすると、マーケティングは予算を含むリソースのアロケーションです。

得意先にマーケティングの認識が低かった時代は広告代理店が広告宣伝領域から上流に駆け上がることを目指すことができました。

収益の確定はメディアやクリエイティブという出口=納品物です。
その納品物についての優先的に扱う機会を川上で押さえ込もうという目論見です。
博報堂も80年代は「マーケティングエンジニアリング」企業を謳っています。

宣伝部門の役割が変わっている


マーケティングの仕組みが得意先の中で構築される中で、得意先宣伝部へのリソースのアロケーションの先が「広告」になり、それが「媒体」の買い付けと「広告制作物」の開発と制作になると下流工程そのものしか無くなってしまいます。

デジタル関連業務は従来の宣伝部に含まれないこともあり、まさに総合広告代理店のメディアエージェンシー化と制作プロダクション化です。

本来統合的マーケティングの4Pのプロモーションに関与するべき広告代理店のプラニングについては得意先社内組織の変遷とともに「タッチポイントの分析」と「広告制作サポートのためのインサイト発見」という程度にまで追い込まれてしまっています。

広告による宣伝に期待すること


経済成長を前提としたマスマーケティング全盛の時代は「より多くの人」「より遠くに住んでいる人」にリーチすることが広告の役割でした。

より多くの人に同時に到達できる「良いテレビの枠を買える」代理店が価値を持つことになります。
プラニングとクリエティブをサービス(無料という意味です)に、メディアの買い付けで収益を確定するということが得意先と広告代理店での合意事項の時代です。

得意先側のビジネスを精緻する方向性とデジタルによりターゲットクラスターへのアプローチの細分化の流れの中で、広告代理店が提供しているサービスとクライアントが認める報酬体系との間において矛盾が生じています。

メディアバイイングでは収益が満たされない


マーケットインを掛け声に商品開発に近いところからの上流工程での努力をメディアの扱いやクリエイティブの制作機会で回収することを一つのモデルにしていました。
しかしトラディショナルメディアからデジタル重視の時代の流れにおいて上流工程にかけた費用の回収を出口だけで行うことは機能しなくなっています。

日本の広告費ではメディア全体を見渡すと22年度は過去最高ですが、デジタルメディアについては総合広告代理店にとって「実入の悪い」物件でもあり、ワークロードと収益が釣り合っていないとされています。

近い将来にメディアの買い付け機能で収益を確定させるモデルから飛び出す可能性を模索するタイミングです。

マーケティングでの広告の役割


まず得意先のビジネス(マーケティングの中)において広告の役割、4Pで言えばプロモーションの役割を再規定して、その中でプラニングが果たすべき責務を見つける必要があります。

そもそも、広告をマーケティングのどこに位置づけるのか?つまり広告の価値は何でそれに対して対価を払ってくれるのか?ここをしっかり議論する必要があります。


Price is wha you pay, Value is what you get


ウォーレンバフェットさんが愛する言葉から現在の広告代理店の価値を見ると、「スケールメリットでの媒体購入(安価での購入)」と「クリエティブ開発」が物理的な価値、「めんどくさいことを任せる」情緒的な価値と認識できます。

変化する得意先からビジネス拡大のため役立つか、ビジネスを共創するためにどんな機能的な価値、情緒的な価値を広告代理店が提供できるか問われています。自分たちの価値を意味にする必要があります。


提供する価値を得意先にとって意味のあるものに

B2Bから学べ


現代のテクノロジーでターゲットセグメンテーションがマスマーケティングでも緻密にできるようになるということは、むしろ日本ではモデル化が進むB2Bのノウハウが適応できます。

デジタルメディアは儲からないと言っていると、得意先に提供すべき価値がどんどんなくなります。
顧客視点ではB2BとB2Cの差はわずかです。
デジタルもトラディショナルも情報接点においては同じものです。

広告の役割をもう一度考えよう


現代の広告の起源はディストリビューションが未熟な時代に、商品を顧客の手元に届けることができないクライアントに対して「より遠くの人に商品の価値をメディアやテクノロジーを使って届けること」であるというのが僕の認識です。

商品の固有の価値を解釈して意味を与えてより遠くまで流通させていること(認知・理解・購入意向促進)が、広告の本務であるならば、現代においては「より正確に・より緻密に」という要素が入るはずです。


意味を顧客に届けていくだけではなく共創していく

メディアについてデジタルとトラディショナル


デジタルの世界でB2B企業が日常的に行なっていることはまさにマーケティングにおけるプロモーションです。

繰り返しになりますが、デジタルとトラディショナルは対立した概念ではなく、その成り立ちを考えても補完する関係です。


放送と通信の成り立ち

リードエージェンシー機能・コミュニティマネージメント機能


マーケティングサービスにおけるプロモーション領域を統合するリードエージェンシーとしての役割が総合広告代理店に期待されています。
それによって提供する価値がリードに集約されて意味が見えてくる→総合広告代理店のプラニングの重要性が出てくるということになります。

総合広告代理店が得意先と企てて全体を設計しチームで運用します。
得意先を指揮者に専門性の高い社内外の機能を取りまとめて課題に向き合います。
オーケストラにおけるコンサートマスターの役割です。


総合広告代理店の進む先に「コミュニティマネージメント」があるのではないかと仮説を持っていますが、チーム運営などにおいても同様の知見を活かすことができます。

もっと得意先に広告代理店のことをわかってもらう努力を


パートナーでもクライアントに広告代理店が置かれている状況を理解してもらう努力が必要です。
アウトサイダーとして何を期待しているのか、得意先とも役割についてももっと議論をしなければなりません。

広告代理店のプラニングの復権で日本市場をもっと面白く

クライアントのマーケティングプロモーションの代理人の集団であるエージェンシーをうまく使ってもらうようになって欲しいと思います。

広告の職場はデジタルとか総合を問わず能力が高くやる気のある人たちが働いています。

プロモーション領域のエージェンシーが活性化を通じて、日本のマーケティングを元気にしましょう。

広告の復権と広告サービスにおける営業チーム、プラニングチームの復権を目指して今日も投稿を続けます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

クライアントさんと広告代理店の関係向上、チームとしてのパフォーマンスアップのためのコンサルティングを行っています。
お気軽にお問合せください。

h-mori@threeplussix.com

それでは、また。

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森 浩昭 / Hiroaki MORI
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