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『鳴き声を頼りにして』

『鳴き声を頼りにして』 No.032

家に帰ってきたと同時に電話が震える
画面に映るのはいつもの名前
また鞄へと放り込む
パンプスを脱ぎ、うなだれるようにソファー
パンストの両ひざには幾つもの伝線
帰り道で出会った捨て猫を思い出す
抱きかかえ、過去の自分を投影する
いつまであなたに甘えればいいの?
何度も何度も別れてはよりを戻す
もうこれ以上は耐えられない
寂しい時だけあなたを頼る
そんな自分が本当にイヤ
あなたはいつも優しく受け止めてくれる
そんなところが大好きだから、嫌いになる
一生懸命イヤな女になってみせる
あなたの前だけで
こうするしかないのよ
私はとっくに擦り切れて鳴らないレコード
いつまでも同じところで回れない
ずっと誰かを頼る生き方はもう…
これからは誰かに頼られたい
私に出来ることは…

何も持たず家を飛び出した
ただ泣くだけの私から卒業したい
今度は私の胸で思いっきり泣かせてあげたい
あの子猫を保護するため、もう一度あの鳴き声を探した…


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