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【K-POP】会社にモノを言うファン【国際化】


会社に要求するファン

K‐POP界隈に来て驚いたことの中に、
「ファンが会社にものすごく要求する」
というものがあります。

しかも、要求内容が私の想像を軽く超えてました。
ケースは千差万別なのですが、「会社は神だよ」系沼遍歴が長く社畜属性も併せ持つ私が特に驚いたのは、例えばこういうのです。

  • 〇〇の曲を〇〇でも扱い、グローバルチャートに反映されるようにしてください

  • 〇〇のフィジカルアルバムが〇〇にまだ入荷されていないので、入れてください

え、営業マネージャーの方ですか……?

K-POPファンダムの特徴的活動

この疑問は、K-POPに特有なファンダム活動についての理解が進む中で、何となく解消されていきました。

K-POP界隈では、ファンが投票やストリーミングをすることでチャート類を動かし、メディア露出や受賞に直結させていくというシステムが確立されており、ファンの支援活動が直接アーティストの活動機会に影響を与えます

「【初めての】何で投票やストリーミングをするの?【KPOP】」より

K-POP界隈ではファン活動が具体的なパワーとして、推しのアイドル活動を後押しします。
そのため、ファンダムはチャート分析から押し上げまで全力で頑張るのですが、そこに「音源/音盤チャート」も入ってくるため、各ストリーミングへの登録状況や販売ルート、在庫などが見張られており、各窓口への対応要求に繋がるんですね。

実質、野良営業部長が社外発生している状態であり、ファンダムが完全にプロモーション業務を代行している部分があるようにすら見えます。
仕官してない在野武将が参戦してる状態。しかもやたら兵力高い。伝わるのかその例え。

昔、一般論として「強いファンダムを作れれば、そこに半分任せられる」という事務所サイドからの意見を読んだことがあるのですが、なるほどこれのことか、と膝を打ちました。

これを「ファンの愛を搾取する業界」と見るかどうかは、文化的背景が絡むので意見が分かれそうですが、このシステムに殴りこまれた欧米音楽業界はさぞビックリしただろうと思いますね……。

要求する背景への理解

こうした背景があるので、K-POPファンダムには野良営業部長が大量にいます。それぞれ、「推しのために」と思い活動してますから、ある意味仕事より本気です。
しかしそこで不便なのが、「立場はファン」だということです。実行権限が足りない。

憧れの会社に入った新入社員(権限ゼロ)が、課長あたりの仕事を情熱的にこなしていると思ってみてください。
自分じゃ決済も決定もできないから、手が出せない部分はひたすら権限ある人に「これお願いします」「すみません、以前お願いしたあれですが」「締め切りまでに何とか」と伝達するしかない状況になりますよね。めちゃめちゃストレスたまると思います。

要するに野良営業部長ARMYはこの立ち位置にいるわけです。
だから、会社に対しての要求も多くなるし、普通立ち入らない実務レベルまで要求内容に含まれるし、「何で仕事しないんですか」ってイラつく(あっ)んじゃないかと思います。

いや、これはけして誰かを責めているわけではありません。どっちかというと、K-POP界隈ってすごいシステムで動いてますね……と口を開けて見ております。
在野武将の皆さん、本当にありがとう!

で、このよく働くK-POPファンダムが世界へ出て行ったわけですよ。
そりゃ驚きますよね、世界も。

広がるK-POP市場と異文化衝突

ゲフィンレコード事件

以前、アメリカのレコード流通会社がARMYの要望に対して不適切な態度を取り、人種問題にまで発展して炎上したことがありましたが、当時の私はARMY側が怒ってる理由をまだよく理解していませんでした。

ちなみに今見直したら、経緯はこんな感じだったらしいです。

『Smeraldo Garden Marching Band(feat. Loco)』が先行公開予定
 ↓
ARMYがX上で、BIGHIT/UMG/ゲフィン・レコード(Geffen Records)然るべき購入経路のオープンを要請
 ↓
ゲフィン・レコードの副社長が「song of the year」と返答しつつ、別歌手の歌をコメントに残す
 ↓
当然ながらARMY激怒&人種差別との意見まで出てきて、炎上
 ↓
副社長はアカウントを閉じてトンズラ

経緯の要約

もちろん副社長の対応は失格なんですが、背景を理解せず記事だけ読んだら、流通業のプロにアイドルファンが販売方法の不足を指摘するという状況自体が、想像の範疇外でした。

予想ですが、副社長側もそういう認識だったんじゃないかと思われます。日本のマスコミもよくわからなかったと思われ、ちゃんと解説されてる記事はARMY発しか見つかりませんでしたw

察するに、
「推しの曲が出るってことは音盤チャート上昇に向けての活動が始まるんだから、販売開始タイミング遅れるとか、チャートに反映される形態やルートでの販売がないとか、死んでもダメに決まってるでしょ仕事して!( ゚Д゚)」
っていう、K‐POPファンダムの営業ガチ勢に取っては「」並みの常識が、アメリカの流通会社に全く共有されてなかった、っていう問題があったんじゃないでしょうか。

私も今この話聞いたら、そりゃファンダム内でも熱量の高さに定評のあるジミンペンが本業に本腰入れようとしてる時に、流通会社がその態度じゃ怒られるよね、くらいの反応をするかもしれません。我ながら学習が進んだものです(*ノωノ)

この件、「流通会社の対応が不適切→HYBEはアーティストを軽視している→会社に活動を妨害される推しかわいそう」っていう謎の三段論法に発展したりもしていて、カオスでした。
HYBE USAあたりはファンダム異文化最前線だと思われるので、第二第三の事件を防ぐためにも、是非相互理解に向けて頑張ってもらいたいものです。

グローバルチャートにおけるK-POP戦略

ゲフィンレコードの件では、そもそもK-POP沼におけるファンとアーティスト&会社との距離の違いという部分が、炎上規模を拡大させたように感じられます。
会社に対していきなりSNSから実務指示レベルの要望することに慣れてるファンダムと、慣れてないアメリカ企業ですからね。異世界転生ですわ。

で、こういったK-POP特有のファンダムによる応援文化に衝撃を受けたのが、欧米中心のグローバルチャートシーン。

K-POP界と欧米中心の音楽シーンとのチャート攻略に対する感覚差による揉めごとや仕様変更など、話題は様々。
K-POPってものすごい競争社会だなとも思いますし、それがグローバルチャートに乗ったことでの異種格闘戦な状況も興味深いです。

「【初めての】何で投票やストリーミングをするの?【KPOP】」より

チャートというものに対する取り組み方が全く違う両者が、市場のグローバル化により同じ土俵で戦うようになったわけですから、それは荒れますわね。
チャートは人気に従って上がるもんだくらいに思っていたところへ、「推しは一位にします!」と決意しているK-POPファンダムが全力で走ってきたわけで、しかもこのファンダム規模がでかすぎるw

BTSのチャート問題に関しては、Wikipediaの「BTS」「Butter」にもまとめられています。どうも『Butter』リリース後くらいで、問題が大きく取り上げられたようですね。
以下、Wikiの話は似たような感じなので要約。

ビルボードは、BTSの「Butter」などのシングルがファンによるチャート操作を通じて成功を収めたと指摘した。ファンは、楽曲の順位を上げるために、特定の購入方法を利用し、主にダウンロード販売によって支援している。これに対抗する形で、ビルボードは2022年にダウンロード販売のルールを変更し、2023年にはアーティストの公式ウェブストアからのダウンロードをチャートにカウントしないことにした。

Wikipedia「Butter」から「論争」要約

ビルボード・チャートは、音楽業界における成功を測る基準として重要だが、近年のストリーミングの普及により、ファンによるチャート操作が容易になった。BTSのファンは、米国のストリーミングアカウントを作成し、他国のファンと情報を共有して楽曲をストリーミングするなど、大規模なキャンペーンを展開している。このような行動は、韓国でも問題視され、調査が行われる事態に発展した。ビルボードはチャート操作に対抗するため、新たなルールを導入しているが、ファンたちの活動は続いている。

Wikipedia「Butter」から「ファンによるストリーミング回数操作問題」要約

チャート操作に反対する立場の人の記事。
状況説明が少し長いので、意見のまとまっている終盤を中心に要約。

BTSは英語シングル「Dynamite」をリリースし、ビルボードHot 100で初の1位を獲得した。グローバルな人気を持つ中、ファンは大規模なキャンペーンを展開。続いて「Butter」も1位になったが、その成功はファンの戦略的な購入活動によるものとされている。
チャートの不正確さは、音楽業界全体の不条理を反映している。ファン文化はアーティストの成功を支えており、ビルボードがルール変更をしても、新たな方法でチャートを操作し続けるだろう。この現象は、音楽業界における有機的な人気の減少を示しており、ポップチャートがファンの戦場になっていることを示唆している。

STEREOGUM「BTS And Their Fan Army Are Rendering The Pop Charts Useless(BTSとそのファン・ARMYがポップチャートを無力化している)」より

この意見からは、人気あるのは一目瞭然なんだから何もチャート操作までしなくてよくない?感が漂ってきますね。気持ちはわかりますw

BTSサイドの意見。以下は記事の関連部分抜粋。

ARMYの活動がチャート操作に相当するという批判について、RMは「それは正当な疑問だと思います」と述べています。
「しかし、1位が何を表すべきかについてビルボード内で議論があるのなら、ルールを変更してストリーミングの比重を高めるのは彼らの役目です。CDの売上やダウンロード数で1位になった僕たちやファンを非難するのが正しいのかどうかは、わかりません……。ただ、僕たちがボーイズバンドでK-POPグループで、ファンの忠誠心が高いから、標的にされやすいように思います」

「【和訳】アメリカが出会ったARMY戦略【インタビュー】」より

HYBEがチャート操作のためにファンを組織しているかどうかを尋ねられたとき、BTSのレーベルであるBigHit Music(HYBEの子会社)の社長シン・ヨンジェは笑いながら答えます。
「そんなことを仕掛ける能力が本当にあればいいのですが」と彼は言います。
「BTSに関連して、一部の人々には理解しがたい市場の動きがあることは理解しています。しかし、アメリカ市場はダウンロードだけで簡単にトップに立てる市場ではないと思います。楽曲の影響力は様々な形で示されたと考えており、その成果を誇りに思っています」

「【和訳】アメリカが出会ったARMY戦略【インタビュー】」より

ただ、言えるのは、BTSのアメリカ市場での成功は、アメリカの主流の方式とは異なる方法で達成されたということです。ファンとの直接的な接触を通じて築かれた忠誠心が大きく関係していました

「【BTS/TIME】パンPD@BTSについて【インタビュー和訳】」より(パンPD発言)

とりあえず、お互い考え方や取り組み方に差があることは理解してるようですが、これは韓国音楽界と欧米音楽界との文化差でもあるため、妥協点を探すのがめちゃめちゃ難しいですね!
両者の理解を深め、新しいチャートシステムを構築するより、どっちかが吸収されて武力統一される方が早いかもしれません。普通に考えたら前者が後者に吸収、なんですけど、いやーどうかなー。

韓国ローカルな貧乏事務所をグローバル企業に育て上げたHYBEは、現在K-POP国際化の最前線にいると言ってもまあ過言ではないと思います。
そのため、感覚が時々グローバルと言うか、私が日本を通じて馴染んでいるビジネス感覚に近くなることがあるんですが、それやると大抵「ファンやアーティストを大事にしていない」って非難されてますからね。
長年培ったK-POP文化を否定している=業界への尊敬や愛国心はないのか、と取られるんじゃないかと思ってます。国際化って難しいなあ。

まとめ

解決策は今のところ思いつかないんですが、現状こんな感じで私はファンダムやチャート問題を眺めています。
同じような疑問持ってるARMYがもしいたら、何かの参考にでもしていただけると嬉しいです。一緒に「どうなるんでしょうねえ」とか言いつつお茶でも飲みましょう。

とりあえず私はARMYなので、粛々と再生回ししますw
だってバンタンが「ARMYーー!」って叫ぶの聞きたいもん( *´艸`)

あ、とはいえ、たまに勢い余って
「いやそれは HYBE/BIGHIT のお仕事じゃないかも……」
という案件まで会社メンションで飛んでることがあるので、アミヨロブン、どうか要望前には一回冷静に考えてから送信ボタンぽちってください。
抗議のダイレクトアタックはK-POP界の伝統ですが、グローバル市場では気をつけてね。でないとスルーされたり、伝言ゲームされてるうちに消えたりするからね。

要求を通したいなら「相手が受け入れられる形で提案する」、は社会人の基本です。落ち着いていこ!
ファンブログと思えない〆ですいません😇


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ちなみに韓国人は日本人よりせっかちなので、企業に直接文句言う傾向が高いっぽいです。

韓国の場合は「韓国消費者院」が中心となってオンライン受付を充実させているようですが、スピード重視の文化から、SNSなどを通じて会社と消費者が直接的なコミュニケーションを取る例も多いようです。

「【K-POP】消費者の不満:5年間で1511件は多いか少ないか」より

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音色
コーヒー一杯奢ってください( *´艸`)