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変わり続ける街の現在地にて

生まれてこの方30年以上ずっと東京で暮らしてきた。
「地元はどこ?」と聞かれたら、「東京」だと自信を持って答えるだろう。
しかし、「一番よく知っている街は?」と聞かれたら「東京」と答えることができるかどうか自信が持てない。

東京の街は再開発による変化が激しすぎるからだ。
たとえ慣れ親しんだ街であっても、再開発で大きく変貌を遂げ、知っているはずの街の姿がガラリと変わってしまうのだ。

個人的に変化の激しさを1番強く感じるのは渋谷だ。100年に1度の再開発と呼ばれるほど、渋谷の街では大きな再開発が行われている。
まるで得体の知れない生き物のように目まぐるしくその姿を変化させている。

渋谷は学生時代の思い出の街だ。学生だった2010年代、渋谷の街は今よりもずっと身近だった。
大学に通うために渋谷で銀座線から井の頭線に乗り換えていた。講義を抜け出して大学のキャンパスから渋谷の街まで何駅も歩いた。仲の良い友人ともそうでもない友人とも渋谷に集まって飲んだ。1年365日の内、8割くらいは渋谷にいたと思う。

当時の景色はもう存在しない。
例えば、銀座線のホームは東急百貨店に突っ込まれる形で存在していた。古びたビルの薄暗い空間の中に対面式のホームがあり、電車を降りて狭いホームを人をかき分けながら進んだ。改札を出て階段を降りて、マークシティ方面へ歩くのがルーティンだった。思い出のルートだ。
時は流れて銀座線のホームは移設、東急百貨店も取り壊された。今となっては思い出のルートを辿ることができなくなった。

悔やまれるのは、当時の風景を記録に残しておかなかったことだ。手元のスマホで1日1枚でもよいから撮っておけばよかった。当時はそんなことを考える余裕もなく、目の前のことに精一杯だったが。

時間を過去に巻き戻すことはできない。延々と続く日常も5年10年と経過すれば、二度と取り戻せなくなってしまう。
気に留めることもなかった日常の景色が、今となっては限りなく愛おしい。

街はこれから先も変わり続ける。
今この瞬間目の前に存在する街の風景は、未来永劫続くものではない。
2024年現在、諸行無常は変わり続ける東京の街の中にある。

ささやかな抵抗だが、変わり続ける街の現在地を写真と動画でアーカイブしていこうと思う。
未来の自分が過去の世界と再び出会えるように。

(写真は2024現在の渋谷。東急百貨店が取り壊された後のハチ公口付近を撮影。)

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