若年層の期待に応えるCS戦略が必要
こんにちは。「バンドルカード」というto C サービスを展開するカンム社にて、CS/業務プロセス周りをやっている平湯(ヒラユ)です。
海外のカスタマーサポート資料で学んだことを発信しています。第四回です。前回分はこちら。
直近は、ロイヤルティに関する資料を中心に読んでいます。ロイヤルティはサービス全体で提供するものですが、特に顧客接点部門(カスタマーサポート等)に求められている役割について考えを深めたい。ロイヤルティを提供する要素、その要素を満たすためにカスタマーサポートに何が求められるのか、各資料の切り口を見ていきたいと思います。
ちなみに、普段は以下の学びを得られそうな資料を中心にピックアップしてます。アンケートや動向分析など、なるべく定量評価されているものを探しています。
①現場管理
→品質管理(教育)、コスト管理(人員体制)
②顧客接点チャネル・ツール
→展開しているチャネル、ツール機能
③VOC[Voice Of Customer]の仕組み
→検知 ~ プロダクトフィードバックの仕組み
④カスタマーサポートの役割
→顧客にとって & 会社としてどういう存在であることを目指しているか
記事紹介
タイトル:What Consumers Expect From the Customer Experience(カスタマーエクスペリエンスに期待すること)
こちらからDLできます。(Kustomer社のサイトにとびます)
Kustomer社はカスタマーサービスのCRMプラットフォームを提供している企業です。
今回の記事では、Kustomer社が米国在住の550人以上を対象に調査。ユーザーがカスタマーエクスペリエンスに何を期待しているのか、組織のどこが不足しているのか、そして世代を超えて期待がどのように変化しているのかを理解するために行われました。
Kustomer社といえば、最近Facebookに買収されて話題になりましたね。
以下、内容を読んでいきます。(一部抜粋)
イントロダクション
過去数十年の間、ユーザーは製品の品質のみに基づいて買い物をする場所を選んでいて、顧客体験が差別化要因となっていた。企業はこの考えを利用して、顧客満足と関係構築を戦略の中心に置き始めた。
しかし、ユーザーは変化し続けており、買い物をする際に考慮する属性として、カスタマーサービスを価格の次に重要なものとしてランク付けしている。
■お店を選ぶときに最も重要な属性(重要度の高い順
1. 価格
2. カスタマーサービス
3. カスタマーレビュー
4. 評判の良いブランド
5. 便利な立地
6. オンラインプラットフォーム
7. 業界をリードする製品またはサービス
顧客満足を通じた収益の促進
ユーザーの85%が、カスタマーサービスの悪さを理由に組織との取引を避けると回答し、81%がサービスの悪さを理由に購入を断念すると回答している。
小売業者や食品・飲料会社が最もこの痛みを感じており、60%が、ネガティブな経験が原因でブランドとの取引を断念したことがあると回答しているが、あらゆる業種の組織が、質の低いサポート経験の影響を受けている。
短期的には59%が、優れたカスタマーサービスを提供していることで知られるブランドやプロバイダーにプレミアムを支払う意思があり、ほとんどのユーザーが5~10%の追加料金を支払う意思があると回答していることがわかった。
また、ユーザーの58%は、良い顧客体験の後にソーシャルメディアに投稿すると報告しているが、57%は、悪い体験の後にも投稿すると報告している。カスタマーサービスは、賛同の声を広げることもできるし悪夢的なPRにもなり得る。
光速なカスタマーサービス
リアルタイムのサービスを提供することは、無限のリソースがなければ困難であるが、それはユーザーが期待する真実である。
ユーザーの71%は、カスタマーサービスに連絡したらすぐに問題を解決する必要があると考えているが、52%は、15分以上の保留時間を経験したと報告している。 期待に応えられていない大量のユーザーがいるのだ。
ユーザーの53%が企業の担当者と話すよりもセルフサービスを希望している。チャットボットは、企業とユーザーの両方で人気が高まっており、53%がチャットボットが顧客体験を向上させると答えている。ユーザーとエージェントの両方の時間を節約し、情報収集や低レベルのサポートよりも実際の問題に費やされる時間を増やす。
さらに、42%が、チャットボットから製品やサービスを購入したいと回答している。AIを搭載したチャットボットは、似たような製品を提案したり、購入前にユーザーが明確にする必要がある質問に答えたりすることで、偏向ツールから収益源へと変化している。
何よりも共感と人間性
53%のユーザーは、企業が自分のことを知っていて、彼らがどのように交流するかをパーソナライズしてくれることを期待している。このような意味のある関係を構築するために、企業はプラットフォームに関係なく、ユーザーの履歴、問題、行動をコンテキストで確認できるテクノロジーを採用する必要がある。
ユーザーは過去にどのようなやり取りがあったか、どのような問題に遭遇したかを企業が把握していることを期待し、積極的に修正してほしいと思っている。76%が、企業が積極的にフォローアップし、問題が発生した場合に連絡することを期待している。
出荷を遅らせる災害、新しい安全方針、または履行の問題のいずれであっても、積極的な通知は素晴らしいメリットであるだけでなく、今では期待されている。
マルチチャネルではなくオムニチャネル
残念なことに、すべてのチャネルが存在していることは、今日ではテーブルステークス(最低限のもの)である。ユーザーの70-90%が、好みの媒体やプラットフォームでカスタマーサービスに連絡できないと不満を感じている。
ただし、もはやすべてのチャネルで利用できるだけでは十分ではない。手間のかからないシームレスな体験を提供する必要がある。残念ながら、ほとんどのユーザーは、分断されたマルチチャネルのカスタマーエクスペリエンスの悪影響を経験している。
69%:他の部署に移動しなければならなかったことがある
64%:何度も情報を繰り返したことがある
50%:矛盾した情報を教えられたことがある
50%:誤った情報を教えられたことがある
真のオムニチャネルサポート戦略は、チケットの解決から顧客関係の構築に視点を移す。ユーザーはエンゲージメントの間、チャネル間を自由に移動することができ、一貫性が保証されているため、各会話は最後の会話が終わったところから始まる。
これを成功させるためには、エージェントは1つの会話を通じてチャネルを横断して自由に移動し、過去のインタラクションをリアルタイムで見れるようにする必要がある。
未来のCX
15年前には当たり前になっていたことが、年配のユーザーにはまだ好まれているかもしれないが、今では若いユーザーが将来の顧客体験の基準を設定している。
18~24歳は、ビジネスを行う場所を選択する際に、価格よりも優れたカスタマーサービスが第一位にランクされている。
さらに、若い世代は、良いサービスにプレミアムを支払うことを上の世代よりも喜んでおり(34歳以下61% vs 55歳以上48%)、その際にはより高いプレミアムを支払うことを望んでいる。(18~24歳の20%は、優れたサービスに最大15%の追加料金を支払うことを望んでいるのに対し、55歳以上は7%に過ぎなかった)
このことは、これらの若いユーザーがまもなく家庭の購買意思決定者となるため、企業は優れたカスタマーサービスの提供に多額の投資を開始する必要があることを示唆する。
また、18~24歳は、ビジネスを行う場所を選ぶ際に考慮する属性として、カスタマーサービスを第1位に挙げている。18~24歳は、他のすべての年齢層よりもカスタマーサービスが遅い、難しい、個人的でない、便利でないと評価しており、この世代のカスタマーサービス戦略が不足していることを意味している。
セルフサービスを好む割合
18~24歳:61%
25~34歳:55%
35~44歳:55%
45~54歳:49%
55~64歳:40%
65歳以上:23%
技術にあまり詳しくない旧世代は、まだ会社の担当者と話すことを好むかもしれないが、若い世代が年齢を重ねるにつれて、セルフサービスツールへの投資がより重要になってくるだろう。この世代は、Googleをバックポケットに入れて育ち、自分で答えを見つけることに慣れている。この「自助努力」の精神は、カスタマーサービスにもシームレスに反映される。
同様に、若年層は、チャットボットとの対話や購入をより快適にしている。35歳以下の62%がチャットボットが顧客体験を向上させると考えているが、それと比較して45歳以上は35%、55歳以上は21%のみである。
さらに、35歳以下の51%がチャットボットから商品やサービスを購入したいと考えているのに対し、45歳以上は25%、55歳以上は12%に過ぎない。
心に留めておいてほしい。ユーザーはもはや解決すべき問題ではなく、構築すべき関係である。そして、カスタマーサービス戦略はそれを反映したものでなければならない。
所感
お店を選ぶときの優先順位として「価格」の次に「カスタマーサービス」が来る点は、第一回で見たFive9社の記事と同じでした。
「レビュー」よりも上に来ていることが意外でした。初めてその企業の商品を購入する際にカスタマーサービスを認識したことがなかったので。調査では初回購入時というより継続購入を強くイメージして回答しているのでは、ということで腹落ちさせました。
悪いカスタマーサービス体験が取引に与える影響についても、第二回で見たFive9社調べは66%が企業との取引をやめるのに対し、Kustomer社調べは85%と、どちらも影響度が高いという結果でした。(余談ですが、私も実体験としてサポート対応で嫌な思いをしたことが原因でなるべく避けてる企業があります…)
ちなみに、カスタマーサービス体験の取引影響について「金融」は比較的低い結果が出ていましたね。乗り換えのコストが高いことなどが原因なのでしょうか。とはいえ、今後スムーズに扱える金融サービスが展開されていくと、他業界同様にサービス体験が重要な差別化として求められそうなので全然安心できません。(というか41%は既に高い、、)
今回の記事にあったロイヤルティのポイントは3つ。迅速な回答(セルフサービス)・ユーザー履歴の把握・一貫性のある対応、でした。ここは、第一回のFive9社の記事にあった「HX(Human Experience)」とほぼ同じ内容ですね。「ユーザー履歴の把握」を例にとってみると、Five9社調べでは74%、今回のKustomer社調べは53%で、どちらの調査結果でも要望が大きいことが伺えます。
あと、若年層への戦略不足をはっきり提起しているのは今回のKustomer社の資料が初めてでした。セルフサービス化の要望が高く、なかでもチャットボットを上手く活用して購入にもつなげているという調査結果。
バンドルカードユーザーは比較的若年層の方が多いので、セルフサービス化(エフォートレス!)を目指して日々アレヤコレヤしてます。
チャットボット、うーむ、、自分がチャットボットで問題を解消できたことがないので少々懐疑的ではあります…。とはいえ、チャット自体は便利だと思うので、シームレスな体験を阻害しないことを意識しながら前向きに検討したいなと思っています。
まだ捉えられてない観点があるかもしれないので、もう少しロイヤルティ関連の資料を読んでいきたいと思います。
おわり
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