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【英文法 重箱の隅】自動詞+X〈中編〉
実用から離れて、英文法そのものに対し関心を寄せている読者向けの内容となっています。一匹の猫の個人的な興味探求の記録としてお読みいただければ幸いです。
前回は、述語動詞として用いられる自動詞に続く文の要素は補語と修飾語であることを確認した上で、自動詞に名詞句が補語として後続するパターンを取り上げた。今回も、[自動詞+名詞句]のパターンを扱うが、後続の名詞句が補語ではなく副詞的修飾語として機能する場合を見ていきたい。
名詞句は基本的に、文中で「主語」「目的語」「補語」(さらに「同格語」を加えることもある)として働くが、「修飾語」として形容詞的用法または副詞的用法もある。
ここで名詞句の形容詞的用法について立ち入ることはしないが、簡単な例は ’income tax’ のような〈名詞+名詞〉という複合語において見られる。フレーズ中の 'income' という名詞は、後の 'tax' について、それがどのような種類のものなのかを説明している(=分類機能)、つまり形容詞のような働きをしていると考えることができる。
さて、今回のテーマに関わるのは名詞句の副詞的用法(学習用文法書などにおいて従来「副詞的目的格」と呼ばれてきたもの)。もう少し詳しく言えば、前置詞の付かない名詞句が副詞的に(主に動詞修飾として)用いられて、距離/時間/様態などを表すもの。そのような名詞句を、ここでは「副詞的名詞句」と呼ぶことにする。
なお、これについては、歴史的に名詞の目的格が副詞的に用いられた名残であるとか、前置詞が脱落したものであるとか、文法学者の間でも意見が分かれているという。
ただ、「副詞的目的格」という用語に馴染んだ学習者の立場からは、副詞的名詞句は前置詞の省略によるものとみるほうがわかりやすいかもしれない。つまり、〈前置詞+名詞〉という副詞句を前置詞なしで用いる⇒目的格の名詞が副詞の働きをする⇒よって「副詞的目的格」と呼ぶ、と考えることができるためだ。
自動詞+数量を表す名詞句
- 移動を表す動詞
それでは、自動詞に数量を表す名詞句が続くパターンから始めよう。このパターンをとる動詞のグループの一つが「移動」を表す動詞。後続の数量名詞句は「距離」を示すことが多い。
1-a. We had gone about fifty miles when the car broke down.
1-b. The soldiers marched 90 miles in three days.
1-c. Who was the first person to run a mile in under four minutes?
1-d. I swam two miles this morning.
1-e. They travelled 200 miles on the first day.
1-f. He walks two miles to work every morning.
1-g. Women have to walk several miles each day to get water.
https://dictionary.cambridge.org/
https://www.ldoceonline.com/
まずは、〈数字+単位〉の名詞句が後続する例(なお、(1-a) の 'about' は 'fifty' を修飾する副詞)。現在でも、〈前置詞+名詞〉で距離を表すには、次例に見るように 'for' を用いる。
It feels like we've been walking for miles.
したがって、移動を表す動詞の直後に距離を示す名詞句が続く形は、'for' が省略されたもの(その結果名詞句が副詞的に用いられている)と、便宜的にはそのように考えていいかもしれない。
ただし、イギリス系英英学習辞典では、これらの動詞が移動を表す場合について、おおよそ [intransitive](自動詞)だけでなく [transitive](他動詞)の表記もある。つまり、距離名詞句を(少なくとも形式的には)副詞的修飾語ではなく目的語として捉えている。
<注> 'run' については、'run a particular distance' を独立項目として扱い、それに [transitive] とのみ表記している辞書も複数ある。一方、'go' について 'transitive' の表記があるのは Longman のみ。
〈移動動詞+距離名詞句〉においては、この距離名詞句を文の要素としては副詞的修飾語(従来の「副詞的目的格」)と解釈しても、概ね目的語と解釈してもいいと言えるだろう。もちろん、[自動詞+副詞的修飾語]と[他動詞+目的語]との間にはニュアンスのちがいが存在するが、それには他動詞性の問題が関係してくるため、ここでは割愛する。
2-a. Dad swims fifty laps in the pool every morning.
2-b. I normally walk the six blocks to the office.
2-c. I'd only gone a few steps when I realized I'd forgotten to lock the door.
https://dictionary.cambridge.org/
次は、数字の後に ‘mile’ のような単位を示す語ではない名詞がくる例。(2-a) の 'lap' は水泳プールの一往復、「ラップ」、(2-b) の 'block' は市街地の一区画、「ブロック」(の一辺の長さ)、(2-c) の 'step' は「一歩の距離」を指す。
もちろん、これらの語も、広い意味では単位を表すと言える。
3-a. He ran the length of the corridor.
3-b. She walked the short distance to her flat.
3-c. They have travelled the length and breadth of Europe giving concerts.
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/
こんどは、数字を含まず、‘length' や 'distance’ のような「長さ/距離」そのものを意味する名詞が続く例。(3-a) の 'length' は「端から端までの部分」を指す。(3-c) の ’breadth’ は ’length’ の「縦」に対して「(横)幅」を表わし、'the length and breadth of' で「至る所/隅々まで/隈なく」といった日本語に相当する意味。これらの例では、動詞に後続する名詞句が副詞的修飾語というよりも目的語のように感じられる度合いが強いかもれしれない。
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