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◉目標迷子の処方箋

「あなたは人生で何を成し遂げたいですか?」
「あなたの人生の目標は何ですか?」

そう問われて、その質問に息苦しさや抵抗感を感じることはないでしょうか。

「それらがはっきりしていない自分はだめなんじゃないか」と思うことはないでしょうか。

確かに、目標がはっきりしていることで、日々の活力になりますし、チームや組織もやることが明確になります。

ただ、気をつけたいのは、現代では「目標は大きい方が良い」と一律に考えがちではないかという点です。

本当に、「目標は大きい方が良い」のでしょうか?

大きな目標をもった人に接すると、かっこよく感じますし、応援したくもなります。

特に、リーダー的なポジションを目指す人は、「目標は大きくもちなさい」と、教えられることもあるでしょう。

しかし、誰もが目標を大きくもつ必要があるのでしょうか?

目標を大きくもつことが、幸せにつながるのでしょうか?

◆適度な目標

自分にとって大きすぎる目標を掲げることは、不安やプレッシャーを高めることにもなります。

目標の適度さは、人によって差がありそうです。

目標が大きいほど、その達成には時間がかかります。

その分、遠い未来のことまで想像しないといけません。

遠い未来を想像することは難しいことで、その分、精神的な負担や不安も増します。

震災や戦争、スマホやAIといった技術革新など、一つの出来事によって、生活環境や世の中の価値観は大きく変化します。

それら一つひとつを予想することは、難しいものです。

◆不安の原因

近代化、文明化した国や地域において、不安障がいを抱える方が増えることが、統計的に明らかになっています。

鈴木祐氏は、著書『最高の体調』で、現代人の不安の原因と特徴は、遠い未来を想像すること(しないといけない環境)によるものではないかと問いを投げかけています。

もともと人類が狩猟採集の生活を送っていた時には、その日や数日をどう過ごすかということに集中していたことでしょう。

日々の食糧をどう調達するかや、猛獣に襲われないかなど、不安も大きいように思いますが、やらなければならないことが明確な分、迷うことは少ないのかもしれません。

しかし、人類は農耕生活をするようになり、何年といった単位で未来を考えるようになりました。

その分、考えなければならないことや、やらなければならないことも増え、不安も大きくなっていったことが想像されます。

そして現代は、グローバルで技術革新の早い時代です。考えることや、やることの選択肢があまりに多岐にわたっています。

狩猟採集に近い生活を送っている方々の不安ははっきりしていて対応しやすいのに比べ、文明化、近代化した国や地域の方々の不安は漠然としていて対応しづらいことが、この本の内容から見えてきます。

つまり、現代人は遠い未来のことを考えて、漠然とした不安を抱えやすい環境にあることが言えます。

それに加えて目標を大きくもたないといけないとすれば、いよいよ自分の将来の姿は不鮮明になり、どうすれば良いのかが分からなくなるのではないでしょうか。

遠い未来を考える複雑性と、目標を大きくもつことの推奨により、私たちはいよいよ、目標迷子になっているのかもしれません。

こうした観点からすると、誰もが目標を大きく持つことが良いことなのかという疑問がわいてきます。

◆目標は身近でシンプルなところから

目標は確かに、日々の生活や人生にやる気や張りをもたらします。

ですが、自分にとってその目標が大きすぎると、不安やプレッシャーを高めることにもなります。

目標の適度さは、人によって差があります。

人からみれば、目標が大きくても、その人からすれば実現可能な範囲であることもあるでしょう。

人生の目標に迷っている人は、「目標とは、必ずしも規模が大きなことでないといけないわけではない」と思うと、気持ちが楽になるかもしれません。

例えば、日々の仕事を頑張ること。家族と過ごす時間を楽しむこと。子どもの成長を見守ること。何気ない友人との会話を楽しむこと。

こうしたことも、立派な目標ではないでしょうか。

目標は身近なことで、できるだけシンプルに。そんな気持ちで探しみても良いかもしれません。

【お寺の日々#246】

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神崎修生@福岡県 信行寺
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