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加賀紫水の編集した『国の礎』についてー愛知県一宮市立図書館の司書の方のお心遣いで発見!

 紹介するのがずいぶんと遅くなってしまった。昨秋に愛知県の一宮市立図書館に所蔵されている加賀紫水の編集していた雑誌『土の香』を閲覧しに行った時に事前に電話をして閲覧準備をお願いしておいた。当日伺った際に司書の方から「『土の香』ではありませんが、同じ著者(加賀紫水)の出版した本なので準備しておきました。」と言われ、『国の礎』という本を『土の香』とともに手渡された。

なんと私が図書館に所蔵がないと思っていた本であった!

以下の記事で加賀の発行した出版物を紹介したが、その中の1冊に『国の礎』という本がある。この本の所蔵は以前調べたことがあったが、検索しても出てこなかったので図書館や研究機関に所蔵がないと思っていた。司書の方のお心遣いに感謝!

 この本の正式な書名は『官国弊社国の礎』(以下『国の礎』と記載)であり、一宮市図書館にもこの書名で登録されている。本の厚さは寸法を測定するものを持っていなかったため概算になってしまうが、iPhone3.5個分ほどであり結構分厚い。奥付から昭和2年6月15日印刷、6月25日発行ということが分かる。発行は旭櫻趣味会であり、ここ会は加賀が主宰であったと思われる。本の1ページ目には「森徳一郎へ」というスタンプが押されている。森徳一郎は一宮市史の編纂も行った歴史研究者であるが、加賀から森に寄贈されたものが一宮市の図書館に入ったのであろう。

 この本は加賀が蒐集した全国の官国幣社(戦前国家によって管理されていた神社)のスタンプを紹介した本であるが、この本の出版動機を加賀は以下のように述べている。

私は蒐集趣味に指をそめたのは昨年六月からで丁度一周年になる。ほんの初歩なものであります。この印影を蒐集を初めましたのは大十年一月或る未知の某氏より五、六枚の印影の分譲を受けましたが、いかにも雅趣妙味に富み深く私の熱を高め早速蒐集にかかり官国幣大社を完了しましたので記念につまらぬものを印刷しました。

加賀は1921年に神社のスタンプの蒐集を開始し、その成果を公表しようとしたことが出版の動機であったことが分かる。民俗学関連雑誌とされる『土の香』を発行していた加賀は最初から民俗学関連の蒐集をしていたわけではなく、蒐集趣味から民俗学関連へ関心が変化していったことが分かる。加賀は自分の蒐集分野に関して以下のように述べているが、加賀の蒐集分野が多岐にわたっていたことが分かる。

木版に関するもの 年賀状、祝儀袋、宝船、納札、錦絵、其他一切 / 趣味に関するもの 趣味文献印刷物、趣味研究雑誌、道楽 / 旅行に関するもの 絵葉書、名物票、印影、御縁起、旅行に関する書籍及び印刷物、伝説出版物

 『国の礎』は加賀の蒐集した官国幣社のスタンプ以外にいくつの文章が他の人物によって寄稿されているので、以下に寄稿されている文章を記載しておきたい。民俗学関連の文章が掲載されているので、加賀がこの領域に関心を持っていたことが分かるだろう。

官弊社気比神宮の祭神は桃太郎ではない 教訓的童話に絡る興味ある研究 鷲見東一
『国の礎』を見て
大阪小絵馬漫談 浪速 恵摩之舎主人
天孫降臨の地 高千穂と古伝説地 鷲見東一
清田神社の舞楽 森徳一郎
ずゐき祭 美有朗都子
日本の五奇習祭 鷲見東一 

 冒頭でも述べたように『国の礎』を紹介いただいたのは予想外のうれしいことであったが、当初の目的であった『土の香』の調査を優先して『国の礎』を調べる時間が十分に取れなかったので、不十分な紹介となってしまった。今度一宮市立図書館に行く機会にこの本の詳細を調べたい。

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Theopotamos (Kamikawa)
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