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方言研究者・橘正一による趣味人・鷲見東一批判
以前以下の記事で郷土玩具蒐集家で戦前の大物趣味人であった鷲見東一を紹介したが、鷲見は各地域の方言も蒐集していた。鷲見はその蒐集の成果を文章にして投稿しているが、加賀紫水の編集していた『土の香』第10巻第1号(土俗趣味社、1933年)に「佐渡ヶ島の言葉」という文章を投稿している。
この文章は鷲見が佐渡島の旅行中の見聞を紹介したものであるが、方言研究者・橘正一からは不評だったようである。橘の発行していた雑誌『方言と土俗』第4巻第5号(一言社、1933年)の「新刊雑誌要目」の寸評で、橘は鷲見の文章を「旅人の断片的報告を歓迎しなければならぬ程、佐渡の方言資料は不足ではない」と評している。橘の評を言い換えると、鷲見の蒐集したものは方言の資料として不十分であると言えるだろう。
この評から橘と鷲見の方言研究に対する立場の違いが分かる。橘はひとつの地域の中で万遍なく、もしくはテーマを決めて方言を蒐集しなければ、資料として活用できないと考えていたのではないだろうか。民俗学では、柳田国男が学問と蒐集趣味の線引きにかなり意識的であったことは知られているが、方言の領域でもほぼ同時期に学問と趣味の線引きが意識されていたように思われる。
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